比較文化史の試み 286


  大木式系土器群の装飾

  東北南部に分布する前期から中期にかけての土器群を、大木(だいぎ)式系土器群
 という。大木7a式以降が中期に該当するが、その形態は多様でもある。大木7b・8a
 8b・9・10式に分類される。

  

(縄文時代研究事典 317p 戸沢充則編 東京堂出版)

  大木7b式の装飾については、かなり複合的であり、詰め込むだけつめこんだという
 感じがしないでもない。

(同上 317p 一部改変)

  ここでの注目点は、Aの土器では循環思想の装飾が横方向と縦方向の両方でつか
 われていることと、なかの区切り線が波に変更されていることだろう。循環思想と波の合

 成だともいえる。それから@では、四角形を渦巻きで区切り、三角形ふたつにする。D
 の木の葉のようなものは、端が丸まっており、どうも双極文様を単純化させた図案らし
 い。あるいは合成しているのかも知れない。

  大木8a式では、単純化した循環思想あるいは双極文様で口縁部を飾るようになる。

(同上 317p 一部改変)

(同上 317p 一部改変)

  @は波で上下に区切る。はっきりわからないが、全体として波入りの循環思想を表
 現しているのかも知れない。Aではわかりにくいかも知れないが、双極文様で区切っ
 てある。Bでは双極文様を直線化してある。Cは循環思想を渦巻きがふたつに分割
 する。このうちAからBが成立するプロセスは以下の通りである。

  大木8b式と9式では、渦巻きと双極文様が器面を埋め、そのあいだを循環思想で補
 充するという様式が登場する。

(同上 317p 一部改変)

(同上 317p 一部改変)

  おなじ9式では、循環思想を縦長にしたものも存在する。

(同上 317p 一部改変)

  Bでは渦巻きが循環思想を包み込み、Cでは双極文様と組み合わせで表現される。

(同上 317p 一部改変)

  10式では双極文様だけになるが、循環思想との合体によって別々に表現しなくとも
 わかる、ということらしい。大まかな流れをみれば、要素要素を組み合わせて単純化さ
 せる指向があることがわかる。いずれにしろ大木式だけでも、これだけの変遷を経て
 おり、器形も装飾も多様なものを含む。ひとつの土器形式として捉えるのではなく、文
 化圏として理解し、地域研究までブレークダウンさせた、より精密な研究が必要だと思
 う。少なくとも円筒上層式にあるような宇宙樹(ユッグドラシル)の装飾はないが、別の
 思想が背後にあり、それを読み解くことがむずかしいからである。

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考古学からみた古代 (縄文時代編) その60


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最終更新日2007年8月4日