比較文化史の試み 293


  羽状縄文と土偶

  大木式の装飾でつかわれている人型のものは、羽状縄文に起源をもっているのだと
 思われる。以下に、成立するまでのプロセスを追ってみよう。

  まず羽状縄文からく≠フ字型あるいはV字型が抽出される。図@は、これを2:1
 で組み合わせたものであり、全体で3個となる。三角形とも相通じるものであり、奇数と
 偶数のはじまりでもある。 

  図Aは、V字型を縦に三つ並べ、中段はそのままに、上段と下段のV字型を90度内
 側に折り曲げる。このことによって直線で描かれた双極文様となる。さらに、この双極
 文様の反転させたものを向かい合わせにすると、X字型ができる。人型の右半分は、

 この十字型のバリエーションのひとつと考えられる。縦に三つ並べられたV字型と、縦
 に三つ並べられた四角形のうち中段を反転させる。このふたつを曲線で結ぶことによ
 って人型が成立する。

  初期の土偶でもそうだが、要するに人間はなぜこのような体形をしているのかという
 問いに対するひとつの回答でもある。巻き貝は世界構造を体現したものであり、フクロ
 ウもまた世界を知るものであるならば、人間もまたそうである、という考え方である。

  しかし、完全な人間なのかといえば、そうともいえない。抽象化された理念を具象化
 させたものでもあり、顔や手足のない、人間とは似ても似つかない奇妙な側面ももって
 いるからである。いわば世界を体現しつつ、人間に似て非なるもの。上におわすものと
 しての神の姿だからである。神の姿として、人間の人体がつかわれた、といってもいい
 神の人格化のはじまりといってもいいのだろう。

  下の写真は岩手県塩ヶ森遺跡から出土したものだが、東北南部や関東とは少し形
 態が異なる。この例では、鼻と眉が表現されていることに注意してもらいたい。

(日本の美術2 土偶 原田昌幸著 3p 至文堂)

  中期にはいると、明確に顔を意識した表現がなされるようになる。下の写真は青森
 県三内丸山遺跡から出土したもので、顔に眼と口の三点が穴(凹)として表現され、顔
 全体が三角形になっている。また、乳首のふたつと、へその三点が棒(凸)として、組
 み合わされている。

(同上)

  東北の板状土偶が十字型なのは、宇宙樹(ユッグドラシル)類似の思想を継承してい

 るためで、この土偶は木の神格をもっている神の姿をあらわしたものと判断できる。 

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考古学からみた古代 (縄文時代編) その67


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最終更新日2007年8月13日