比較文化史の試み 303


  世界構造の変化

  この土器も三段を意識したひじょうに珍しい形状をしている。

(土器の造形 192p 東京国立博物館)

長野県藤内遺跡出土

  空間を上下にわける考え方は、尖底土器文化期の終わりごろに成立する。これを表
 現したものが羽状縄文であり、空間を移動する、あるいはつなげるという意味で十字
 型ないしV字型の装飾を施す。ところが、よくよく考えてみると、これはおかしい。

  西に沈んだ太陽は、地下トンネルを通って、反対側の東から出てくる。太陽神を祀る

 ようになると、このことが問題になってくる。古代日本人は、地下空間が抜け落ちてい
 たことを発見する。太陽はすっかり忘れられていた、ということでもある。だから、上下
 と地下の三段になる。

  このことは空間のあいだを移動する主体としての霊的存在が、自然界のあらゆるも
 のに波及してアニミズムが成立することを示している。空間が分裂するがゆえに、霊的
 存在が要請される。なぜなら人間は、天や裏の世界へと物理的に移動ができないから
 である。

(同上 197p)
長野県棚畑遺跡出土

(同上 198p)
伝長野県宮ノ前

  地下空間が発見されれば、当然、移動をあらわす十字型も変形せざるを得ない。十

 型を上下に組み合わせたキ字型に移行する。

  前述のように、東北では十字に木の葉をつけたものを世界構造をあらわすものと考
 えていた。一方、北欧神話にある宇宙樹(ユッグドラシル)枝は天空をささえ、根は冥
 界へとつづく。

  東北の十字に地下世界が加われば、宇宙樹(ユッグドラシル)とおなじになることが
 わかるだろう。

  それとともに前述の山梨県中原遺跡出土の土器では、口縁部にU字型を組み合わ
 せた装飾がつけられている。

  長野県棚畑遺跡例では胴部にJ字型、伝長野県宮ノ前例では、中原遺跡とおなじく
 口縁部にU字型の装飾がつけられている。

  死ぬと直接的に裏の国に行くのではなく、一度、墓のある地下世界へ行き、地下世
 界の裏側を通って、裏の国に生まれ変わる。このプロセスが、U字型あるいはJ字型
 になることは、説明する必要もないだろう。

  図では、わかりやすいように左側を裏にしてある。立体空間としての裏の世界を、平
 面図で表現しようとすることに無理があるともいえるが、土器の装飾にも、J字型と左
 右反転した反J字型の両方があり、左右のどちらを裏にするという決まりはなかったよ
 うだ。

  また、答えを求めるには遠くに迂回しなければならないということであり、ものごとの
 核心は背後に隠れている。古事記を解読するには反古事記≠知る必要があるだ
 ろう。

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考古学からみた古代 (縄文時代編) その77


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最終更新日2007年8月24日