環状集落と環状列石
環状集落には、中央の広場と周辺の建物がおなじ高度にある平地式と、周囲が高
いすり鉢状と、逆に周囲が低くなる傘状の三つのタイプがあることが知られている。羽
状縄文のように、上下に螺旋を描きながら移動していくと考えるなら、北極星を中心に
する天空とおなじようにすり鉢状につくるだろう。一方で、北極星を女性原理、環状集
落の中心にある石棒あるいは木偶などを男性原理で捉えているなら、中央の広場を
盛りあげた傘状にするだろう。
ただ、環状集落は長期にわたって形成されるものであり、一度つくりはじめると、そ
れを継続することになるから、開始時期と継続期間によっては、混在してくる。別のい
い方をすれば、どのようにして平地式が生まれたのか、よくわからない。天空の現象を
平面として理解していた可能性もあるが、羽状縄文や性原理といった思想と、環状集
落の断面形状を結びつけ、断定することは早計かも知れない。
4.3 立体装飾土器文化後期
中期後半ごろから東日本では配石遺構がつくられるようになり、やがて大規模な環
状列石などが登場するようになる。

秋田県大湯万座遺跡
(日本の人類遺跡 97p
東京大学出版会)
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秋田県大湯野中堂遺跡
(日本の人類遺跡 95p
東京大学出版会)
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万座遺跡例では、標識となる石を置いた墓が50基ほど、配列される。外帯より、内
側の方が古いとする説があるが、はっきりしたことはわからない。ただ、形状からすれ
ば、環状集落の方法を踏襲していることが伺える。

前出の岩手県西田遺跡では、中央の墓群のなかに、二列にならんだ10基ほどの墓
をみることができる。また青森県の三内丸山遺跡でも、同様の墓列が存在することが
わかっている。遺跡によっては、一列だったり、単独だったりもしているが、墓域が中
央部と周辺部に分かれていることではおなじである。中央部の墓は、特別な存在であ
ることが伺える。大湯環状列石は、環状集落から墓域を抜きだしたものだといえよう。
そして、近接する万座と野中堂のふたつにわかれた。
墓についてもうひとつ。これら墓群に量的な偏りが存在することがわかっている。上
記の西田遺跡の場合、二列に平行して真ん中から左右に分けると、右側の方がやや
数が多い。北側が多いといってもいい。これは系統がわかれるふたつの集団が、代々
墓をつくって来たための誤差だと考えられている。レヴィ・ストロースが報告する事例で
は川上と川下の家族にわかれていて、このことを分節構造という。羽状縄文のように
上下にわける考え方が成立すれば、何らかの基準で上下に分割することは不思議で
はない。川や山、あるいは北極星などが候補としてあげられるが、そのまま身分制に
直結するかどうかは断言できない。北海道の環濠遺跡例では、ありそうだが。
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弥生時代の環濠集落では生きた人間が集落から分離するが、いわゆる縄文時代の
環状集落では、死者が分離する。一部の人間が集団から独立し特別な位置に立つこ
とではおなじである。死者に権威があるのか、それとも本人に権威があるのか、の違
いといっていい。もっとも死者に権威があるといっても、それを引き継ぐのは結局生き
た特定個人でもある。首長制と古代国家には、皮一枚の違いしかない。多くの人類学
者が指摘するように、首長制は部族集団から国家へ移行するときの、過渡期に登場
する。あるいは、そのように考えられている。
というのは、首長制がそのまま維持されている事例もあれば、首長制が解体したまま
の事例もあるからである。必ずしも国家が誕生するとは限らない。とはいうものの、バ
ンド社会から部族、部族から首長制を経て国家が誕生するというプロセスは、国家と
して成立していることを前提にするのなら、あり得ることだろう。
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大湯遺跡からは現在のところ竪穴住居跡はみつかっていないが、万座の環状列石
に隣接する北西部に堀立柱建物跡群あることがわかっている。環状集落において墓
地は中心点をなし、人間はそのまわりで生活し、やがて死んで、向こうの世界に生ま
れ変わる準備をする。墓地が集落と分離するのは、生の延長線上に死が存在しなくな
っていることを示す。
死んでも直接的に向こうの世界に生まれ変われるわけではない。部族制では、ある
意味、死者の意向に添えれば良かったのであり、先人が決めたことに従えばいい。そ
のことによって再生が保証される。U字型なら、裏の世界にたどり着く。ところが、J字
型では、裏の世界にたどり着けない。地下世界に留まったままになってしまう。場合に

よっては、再生できないことがある。それまで無条件で再生を確信していた人々に、深
刻な問題を引き起こしただろうことは容易に想像がつく。つまり、行為によっては裏の
世界に行けない。もはや先祖に頼ることはできない。このことによって先祖祭祀と政治
の分離が要請される。
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