あれは、確かに炎だった
冷たい胸からぬけ出して
空へ昇った炎は
太陽の真近で凍りついた
小さな氷塊になった炎は
下界へ落ちるにしたがって
ひとひらの雪になった
暖かな陽射しの中で
誰も気付くはずもなかった
しぶとく漂っていた、ひとひらの雪は
やがて、乳母車の赤ン坊の眼にとまった
仰向けの赤ン坊は
白いひとひらに無心に手を伸べた
小さな温かい掌にすくわれて
ひとひらの雪は
たあいなく消えた
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不思議そうに掌を眺めていた赤ン坊は
百人の天使を集めたような笑顔で
きゃっ、と笑った
それを見て
母親も笑った