墨絵の町

私は青春の果てにいた
曰くあり気に雨は降り
仄かに白い陽も射していた

古の城下町は
馴染みの雨に濡れ並び
私はただの旅人だった

心は乾く雨の中
優しく濡れた路面には
市電が物憂げ走ってた

でしゃばりもののビルディング
ものぐさそうな瓦屋根
あの人の里は 大人びて色褪せ
町並みは淡い水墨画のようだった

後園を ひとり歩けば
親し気にさざめく茸の群れ
私はただの旅人だった

吊り橋は旭川を越え
遠くたゆたう水面には おも影も浮かばず
髪つたう雫さえも届きはしなかった

ふり仰げば、灰色に滲む天守閣
仄白い陽は怪しく澱み
それは今にもーーーーーー
あれは、今にも剥がれ落ちそうだった

私は青春の果てにいた
曰くあり気に雨は降り
仄かに白い陽も射していた