アメリカンロックの残照

 

ウッドストック後かつて70年代に隆盛を誇ったアメリカンロック。

そのなかでもザ・バンド、グレイトフルデッド、オールマンブラザーズバンド、この3つはワトキンスグレン(July 28,1973)の野外コンサートで60万人という人々を集めアメリカンロックのピークの象徴といえるのではないか。

その後、ザ・バンドはラストワルツとともに解散し、グレイトフルデッドはカリスマ、ジェリーガルシアの死とともにバンドとしては終焉した。

それに比べオールマンズのほうは早い時期に中心人物を事故で失いながらもバンドのピークを作り上げたこともあってか、内紛や活動停止を繰り返しながらも存続し今に至っている。

それどころかウォーレンヘインズとデレクトラックスという強力なメンバーを得、いま再びピークを迎えているように思える。それ程までに歌も演奏も素晴らしい。

ライブではデレク&ザドミノスの"いとしのレイラ"や"恋は悲しきもの"を取り上げているがこれらは若きスライドマスター、求道者ともいうべきデレクトラックスなしには考えられない演奏だ。

サザンソウルの伝統に根ざしながらもジャズや民族音楽やラテンにも造詣が深くそれでありながら謙虚で常に向上心を失わぬ姿勢からは単にデュアンの後継者にとどまらず、その表現力と影響力を自身のバンドでも実現している。デレクトラックスバンドの演奏を是非聞いてもらいたい。

オールマンズの話しに戻るが最近のライブではザ・バンド、グレイトフルデットの曲も取り上げている。オールドデキシーダウンやフランクリンズタワーのような名曲をオールマンズのオリジナルメンバーである強力なリズム隊とグレグの絞り出すような説得力のある歌で再現するのだ。

さすがにこれには泣けてしまう。コンサート会場でもこれらの曲が始まると驚きと喜びで騒然となり客も一体となって大合唱となる。いかにみんながこれらのバンドと時間を共有し青春を過ごしてきたかがわかる。今でもこれらの音楽を聴き続け、浸り続けている人も沢山いるのだろう。

たしかにアメリカンロックの残照ともいえるだろうが前述のように若い血も育ち、よい意味でのアメリカらしさが根付いてくれるとよいと願っている。

自分達の文化をグローバリズムとして他者に押しつけるのではなく、他者のよいところは尊重し、敬意を持って接した上で、自分達の文化に取り入れポジティブな姿勢を持って表現する、そんなアメリカらしさである。

アルカディア通信 2006年6月版に掲載されました

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