デュアン・オールマンの夢

 

前回はベタな夢落ちストーリーで失礼しました。

ミュージシャンものの夢を見ることは意外に少ないのですが、今までの極めつけといえばデュアン・オールマンの夢です。

野外ステージで小学生用の小さい木の椅子に座って、たったひとりでワインレッドのSGを斜めに構えてボトルネックスライドでソロを弾いているという奇妙なものでした。

そしてそのスライドで弾いている音楽というのがあのブルースっぽいフレーズではなく今まで聞いたことのないような美しい、天上の音楽ともいうようなものでした。むろんどのようなメロディだったのかは目が醒めた時点では再現のしようもなく、きっと頭の中で脳内麻薬が飛び交っていたのだろうとでも思うしかないのです。

デュアン・オールマンといえば命日は10月29日で毎年この日にはいろいろなライブハウスでトリビュートライブが行なわれているようです。今年は横浜の「サムズ・アップ」に行ってきました。どのバンドもデュアンが好きでたまらないという人達ばかりで、いまさらながら彼の影響の大きさを感じずにはいられません。

デュアンがオールマンブラザーズバンドで演奏していたのはほんの二年足らず、歌も歌えず、作曲もほとんどせず、存命中はこれといったヒットもなく、当然来日経験もなし。

きっと彼は日本なんてどこにあるのかも知らなかったのではないでしょうか。

そんな一介のギター弾きに過ぎないこの男に対し、死んで34年も経ち、しかもアメリカ深南部から遠く離れたこの極東の地でこれほどまでに熱狂させ続けているのは、一人一人が彼のギターにそれぞれの天上の音楽を聞いているからだと思わずにはいられません。

SKY DOG(空を翔る犬)とあだ名されたのは正しかったというべきでしょう。

アルカディア通信 2005年12月版に掲載されました

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