サザンロックの悲劇と甘い香り

 

サザンロックのピークは72年ごろからキャプリコーンレーベルが倒産する80年くらいまでといっていいだろう。

サザンロックといっても音楽のスタイルは結構いろいろだ。オールマンブラザーズは長尺でジャズ風味あり変拍子もありという洗練されたインストものが魅力のひとつであり、その後のジャムバンドの源泉ともなっている。

もう一方のサザンロックの代表的バンド、マーシャルタッカーバンドは雄大で懐の深いカントリー風味が魅力だ。

そしてレイナードスキナードといえば印象的で覚えやすいギターリフの曲が多い。しかもそれだけでなくメロディアスな名曲も多い。豪快なトリプルリードのイメージがあるが曲のよさは他のいかなるサザンロックのバンドより際立っているように思う。

ロニーヴァンザント、アレンコリンズ、ゲイリーロッシントン、エドキング、各メンバーが曲を書けてバランスもとれている。特にアルクーパーがプロデュースした初期のアルバムには名曲が多い。ファーストではTuesday's Gone、Freebird、セカンドではSweet Home Alabama、I Need You、Workin' For MCA、そしてサードのSaturday Night Specialなどが私は好きだ。

特にI Need Youには思い出がある。高校生のころラジオ番組でギターのインスト曲(そのころはインストだと思っていた)が流れ、それがすごく美しく印象的だったのだが終わった後曲名が紹介されず何年間もぼんやりと曲のイメージだけを覚えていた。それが30年以上たってレンタルCD屋でいろいろ借りることができるようになり、レイナードスキナードを全曲聴きなおした時に高校時代に聴いたあの曲を発見できた。それがI Need Youだったわけだ。

Freebirdはいうまでもなく事故死したデュアンオールマンにささげられた曲だが、その作者のロニーヴァンザントもまた、ツアー用自家用飛行機の燃料切れという信じられないような事故で亡くなった。私はこのような悲劇を美化するつもりはないのだがデュアンの演奏についてはMountain Jamの27分50秒あたりから始まる部分の演奏に、まるで死を予感したような平和な安らぎを感じる。実際にはこの演奏の7ヵ月後に天に召される。

そしてレイナードスキナードについてはこれらの名曲を聴くたびになんともいえない甘さを感じる。この甘い香りは南部特有のゆったり流れる時間とリリカルさからくるものだ。私の勝手な思いなのだが、分厚いハードな演奏と対比されることもありメロディアスなリリカルさが甘い香りの元になっているように思う。

ぜひ一度かの地を訪れたいと願っている。そして深南部の音楽をたっぷり含んだ熱い空気を吸い込んでみたいものだ。

もし長身、長髪のレイナードスキナードのメンバーがアルカディアに来てこのカウンターに座り大声で話し、豪快に笑い、そしてバーボンが2本、3本と次々に空いていく姿を想像するだけで楽しい。ちょっと切ない気もするが。

アルカディア通信 2007年12月版に掲載されました

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