私一人に男友達が二人。同性からは女王様とか逆ハーレムとか二股かけてるとか言わ れるけど、三人それぞれ仲のいい友達って関係。なんかする時はいつもこの三人で始め てる。旅行も、キャンプも、遊びも。 別に恋仲とか三角関係ってワケじゃない。なんていうか親友がたまたま男性であった というトコロかな。ドリームカムトゥルーってグループが女性一人に男性二人の構成だ ったから「ドリカムな関係」なんて言われていた時期もあったけど、そんな感じ。 そんな三人のある夏……。 「よぉ！」 「あ、テツヤぁ。遅いじゃんかよぉ！」 「悪い、悪い」 ちょっと髪の毛が茶色っぽい単髪の彼がテツヤ。テツヤは髪の毛に手をあて苦笑いし てるみたい。 「ところで、タカシは？」 「まだよ。」 私は憮然として言う。 「まだ寝てるのかなァ？ あいつのコトだから」 「さっき家に電話したけど、もうかなり前に家を出たって言ってた……」 「ははぁ〜ん。どっかに寄り道かな？」 テツヤは顎に手を当て考える素振りを見せたかと思うと、にやりと笑った。 「なんか心当たりあんのぉ？」 私は即座に聞いてみる。 「いや……、それよりさ……」 ポケットの中にテツヤは手を入れる。そして、きれいな包装紙に包まれた薄い長方形 の箱のようなものを取り出した。 「ほれっ」 その箱のようなものをテツヤは無造作に私に投げた。 「な・なによ・・」 私はその箱をキャッチすると、箱を裏表にして見た。意外と軽い。なんだろうと思いつ つ、テツヤに聞いた。 「なんのつもり？」 「さぁ？」 テツヤは明らかにとぼけた素振りを見せる。私はその姿を見て、つい笑ってしまった。 そんな私にテツヤはため息をつくと、こう言った。 「笑うなら、自分を笑えよ。今日が誕生日だろ！」 「あっ！」 私は自分でも忘れていた誕生日を覚えていてくれたのがうれしかった。そして、 「包み開けてもいい？」 と言うと、包を開いた。 「安物だから期待するなよ」 テツヤは空笑いしながら、いった。 包を開けると、白い細長い箱が露になり、それを開けると、中には金のネックレスが。 「これ、ホントにもらっていいのぉ？」 「今更、そんな気ぃ使う仲か？ それに安物と言ったろ」 テツヤは苦笑しながら、いった。 私は感激して、箱からそのネックレスを取り出し、首に巻こうとすると、ネックレス に紙のようなのが付いているのに気づいた。商札だった……。 「テツヤぁ〜」 「だから安物って言ったじゃん」 テツヤは商札を見た私の顔を見て、笑っていた。私もつい一緒になって笑った。そこに タカシがやってきた。 「はろ〜ん。ナニやってんだ、おめェら？」 眼鏡をかけたツンツン頭の彼。彼がタカシ。タカシは呆れたような顔で苦笑しながら、 いってきた。 「あー、タカシぃ！ 遅刻の上に手ぶらなのかなぁ？」 私はタカシにつっかかるように、いった。 「ん？ なんか用意しなきゃいけないんだっけ？」 「まぢでわかんないのぉ？」 私は上を向いて考え込むタカシを見上げるように側に寄り、いった。 「わからない」 タカシはきっぱりと胸を張って、いった。 「おいおい、今日は瑠華の誕生日だろ」 テツヤはタカシを肘で突き、いった。瑠華とはもちろん私のことである。 「あ、忘れてた」 タカシはあっさりといった。 「テツヤはなんかプレゼントしたのか？」 「ああ」 「マメだね〜」 眉間にシワをよせた顔をするタカシ。そんなタカシに私は怒った顔をし、そっぽを向い た。すると、肩になにかがわさっとのり、そこからいい香りが流れてきた。バラの花束 がそこにあった。 私が振り返るとタカシは、 「Happy Birthday !」 と言って、そのバラの花束を私の腕の中に置いた。 私はうれしくなって涙腺が思わずゆるんでたみたい。テツヤがポーカーフェイスでこ っちを見てるのがわかったけど。 「なーに、感動してるんだ？ 今更感動する歳でもあるまい」 タカシは笑いながら、いった。 「なんだ、おまえのほうがマメじゃないか」 呆れたようにテツヤがいった。すると、タカシは人差し指を立てて左右に振り、いった。 「ちっちっ、感動するにはまだ早い」 私の抱えてるバラの花束に胸から取り出した大きなハンカチをタカシはかけた。 「えっ？」 「あっ！」 「さっと！」 タカシがハンカチを再び胸にしまおうとした瞬間には、花束は鳩に変わり空へと消え てしまった。 「タカシぃ〜」 私はタカシを睨んだ。すると、タカシはそっけなく応えた。 「ん？ プレゼントとは言ってないぞ」 「はいはい」 私は肩をおとして笑った。タカシもそれを見て、笑った。 テツヤは笑いながらタカシの肩によりかかり、いった。 「おまえらしいよ」 「悪趣味なトコがねっ」 私は笑いながら、それに追句した。 夕日が傾いてきた頃、三人は海が見えるレストランにいた。テーブルの上にはもう食 された後の皿が並んでいて、食後の珈琲をすすっていた。 「んじゃ、オレはこれで・・」 テーブルに割り勘分のお金を置いてタカシは立ち上がった。 「あれ、まだいいじゃん」 「そ、そうだよ。どうしたんだ？」 タカシはその声に止められ、テーブルに身を乗り上げた。 「これからデートなの」 にひひっとタカシは笑いながら、いった。私は一瞬、顔がこわばるのが自分ではわかっ た。なんでそうなったのかはわからないけど……。 「んじゃ、こっそり後でもつけよっかな」 私は頭の後ろで手を組んで笑いながら、いった。 「ねェ、テツヤぁ、そうしない？」 私が横に視線を移して聞いてみたが、なんだかテツヤはボーとしていた。 「テツヤぁ」 「あ、ああ。でも、オレもこれから用事があるんだ」 「そーなんだ。なーんだ」 しょげてみせる私。 「はははっ。瑠華、残念だったな」 「よかったじゃんかよ！ タカシっ」 「ああ、安心したよ。じゃあな」 タカシは笑いながら応えると、右手を上げ、店を出ていった。 「じゃっ、そろそろオレ達も出るか？」 「うん、そだね」 そして二人は店を出た。入るトキは三人で、出るトキは二人。なーんかヘンな感じ。 テツヤもなんだかよそよそしい感じがする。 ちらっとテツヤを見てみる。すると、こっちの視線に気づいたらしく、こっちを向く。 「ん？」 「なんでもないよ」 私はあわてて視線をそらした。 「じゃっ、このへんで」 テツヤが軽く手を挙げて、別れの挨拶をする仕草。 「あ、うん。またねっ」 手を振る私。テツヤはその私を見ると、そのまま真っ直ぐ歩いていった。 テツヤが角を曲がり、視界から消えると、なんともいえない気分が残った。でも、そ んなに深くは考えるのは止めようと、テツヤの歩いていった方向の反対に歩き始めよう とした。そのトキ、手を入れたポケットにネックレスが入っていたのに気づいた。 着けてなかったし、ちゃんとお礼を言ってなかったな、と、テツヤの曲がった角を目 指し、私は急いで走ってた。 テツヤの曲がった角にたどりつき、視線をその方向に向ける。そこには、可愛らしい 女の子と腕を組んでいるテツヤがいた。 私はその角を曲がらずまっすぐ歩いてた。 Ｆｉｎ．