総合的な学習を意識した学級活動

「思い出づくり実行委員会」

2000.4.23

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INDEX

  1. はじめに
  2. 発端
  3. 出発
  4. 活動
  5. まとめ

0.はじめに

 平成14年から本格的にスタートする総合的な学習の時間は、各教科の有機的、横断的な取り扱いを行う中で、各教科での学習内容やその課程で培われ た力、必要な表現力、情報活用能力を総合的に用い、主体的な学びを実現することを目的とするものである。その目的は「生きる力」にも直結するものである が、ややもすると、教科の枠にとらわれすぎたり、目的を大きく逸脱することがある。また、課題の設定や子どもたちの取り組みが、どうしても教師主導になっ てしまい、本当の意味での「総合力の育成」にはならない場合がある。こうした現状を鑑み、もっと柔軟で、現実味のある実践はできないものかと考え、取り組 んだのが、今回の「思い出づくり実行委員会」である。

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1.発端

 6年生の3学期は、行事も多く様々な実行委員会の活動があって「思い出づくり」などというノスタルジックな感傷に浸っていられないのが現実であ る。しかし、私は担任として、この子どもたちに最高の思い出をつくってもらいたい、そのためには、人と同じことをしていたのでは、最高の思い出は作れない と子どもたちに話した。そして、子どもたちと「思い出づくり」のためにはどんなことをしていったらよいか話し合った。3学期のクラス目標が「最高の思い出 をつくろう」だったので、子どもたちの気持ちの中に「思い出づくり」が位置づけられていたことも、この計画の土台になっている。そして実際に「最高の思い 出」をつくるためには具体的になにをすればよいか考えていく中で、ワークショップを取り入れた取り組みを提案した。

 そして、3学期の当初、新しいスタイルの実行委員会「思い出づくり実行委員会」を発足させた。

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2.出発

 「思い出づくり実行委員会」は、全員参加の実行委員会である。つまり、全員が思い出づくりの実行委員なのである。誰がリーダーでもない。人に責任 を押しつけたりしない。思い出づくりのために、自分ができることを提案し、仲間と共に実現していく。これが、思い出づくり実行委員会の活動である。その調 整役として、「コア」というグループを作った。このメンバーは、今までクラスを陰で支えてきたメンバーである。このコアの調整の元、思い出づくりのために 具体的に活動するグループを作っていく形にした。もちろん、子どもたちがアイデアを出して、メンバーを募って、計画をして作り上げていくのである。このグ ループを「ワークショップ」と呼んだ。

 まずは「最高の思い出をつくるために、なにをしたいのか」じっくり考えさせた。はじめは、子どもたちにとっては初めての取り組みであり、なにをし てよいかとまどいがあって、なかなか意見が出てこなかったのだが、たびたび会議を重ねていく中で子どもたちの意識が高まり、いろいろな意見が出てくるよう になった。そしてできたのが、以下のワークショップである。

【組織図】

実行委員会組織図

 「歌の録音」は、すでに1学期からやりたいと言っていたもので、レク集会係が担当することになっていた。これを、ワークショップに取り込んで、思 い出づくり実行委員会に含めた。毎日の目標を具体的に押し進めていく「班長会」もワークショップに取り込んだ。そして新たに、「会食会」「4年生への感謝 状」「1年生用学校紹介」「お別れ会」「歌の伴奏」「大なわとび」などのワークショップが立ち上がり、活動を始めた。

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3.活動

 もとより、全員が思い出づくり実行委員なわけだから、どのワークショップに所属していようと、一緒に作業を進めていくことには間違いないのだが、 ワークショップを形成することで、そこに所属する子どもたちが中心となって、それぞれの仕事を進め、手が足りないときは全体に呼びかけたり、コアに報告し たりして調整をはかっていった。子どもたちは、短い期間の中で作業時間を調整し、確保し、嬉々として作業に取り組んでいた。

 「大なわとび」は、児童会行事である、大なわとび大会のために全体に呼びかけて練習をさせるワークショップであった。チームワークは良かったのだが、練習の成果は出せなかった。

 「歌の録音」ワークショップは「歌の伴奏」ワークショップと共に、録音までの練習と、当日の進行を担当した。時間はかかったものの、録音自体はとてもスムーズに進んだ。伴奏者のワークショップは、録音をする上で必要を感じた子どもたちが、追加結成したものである。

 「会食会」は、毎年6年生が最後に先生方をお招きしてお茶会を開くものである。飾り付けの準備や当日の進行など、このワークショップのメンバーを中心として行った。

 「4年生への感謝状」は、1年間、5年生のかわりにがんばってくれた4年生に対して、子どもたちの感謝の気持ちを込めて、一人一人に感謝状を贈るものである。

 「1年生用学校紹介」は、もともとは、パンフレットにしようと思っていたものを、WebPageの形でまとめた。デジカメで撮った写真に自分たち で説明文を考えて、WebPageをつくった。また、「4年生…」とこの「1年生…」のワークショップは、ワークショップについて、話し合っている中で、 後から出てきたものである。

 「班長会」は、「みんなでやる木」を担当し、目標の中でできたものや、みんなでがんばったことなどを貼り出した。

 「お別れ会」は、最後のお楽しみ会の企画、準備、運営にあたってくれた。ついでに、担任への手作りの色紙もつくってくれた。

 ざっと見ただけでもかなりの量のことを、3学期の忙しい時期によくやったものだと感心させられる。ついでに言うと、これらのワークショップは、人 数無制限であるから、一人がいくつも掛け持ちしていることもある。最低2つは掛け持ちしている。多い子は、4つも掛け持ちをしていた。それでも、嬉々とし てやっていたのは、自分たちがやりたいことができるという「喜び」があったからではないかと感じる。

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4.まとめ

 さて、これらの活動がなぜ「総合的な学習の時間」と絡んでくるのか、疑問に思われているかのしれない。私とて、この活動そのものを総合的な学習だと言うつもりは毛頭ない。しかし、そのスタイルや発想は総合的な学習の時間の考え方と密接な関係にあると思う。

 たとえば、課題の与え方である。今回は、「思い出づくり」というかなり曖昧な表現を使った。これは、子どもたちの中に、すでに「思い出づくり」を求める精神的土壌があって、これを、再認識させたにすぎない。つまり、私が子どもたちの思いを具体的な形で示したのである。

 また、実行委員会の進め方も、全員を委員として、その中で、自分たちでやりたいことを見つけ、計画立案して提案し、共感者を募って実行していくと いうのは、総合的な学習の過程と似ていないか。さらには、その実践の中から、新たなワークショップを生み出し、次々と活動が広がっていく様も、総合的な学 習のスタイルと似ているのではないかと感じるのである。

 これを学びの場に応用するとき、「ワークショップ(ワーキンググループ)」というのが一つのキーワードになるであろうと考える。子どもたちに作業 の空間と時間を保証し、自らの思いを実現するために、活動をさせるのである。そのときに、大切なのが「仲間づくり」である。自分の興味のあることをみんな に知らせ、共同研究者・制作者を募るのである。この段階で、似たような意見を集約する「集団形成・調整」の能力が必要になる。あるいは、自分の意見をPR する力「自己表現力」も必要であろう。そして、仲間ができたら、いよいよコラボレートしていくのである。自分たちが研究したことや考えたこと調べたこと、 聴いたことなどは、各自がまとめていき、自己評価・相互評価も含めてまとめていく(ポートフォーリオ)ことで、自分の学習成果がわかり、次の課題が見えて くる。また、研究した中から、人に見せるものをつくってさらに研究を深めたり、それをもとに、また、共同研究者を募ったりすることができる。中には、新し い課題を見つけ、たもとを分かつ場合もあるだろうし、いくつものコラボレーションに参加する場合もあるだろう。さらには、研究の対象や資料・情報を校外に 求め、広く地域の教育資源や教材を使うこともあるだろうし、インターネットの普及に伴って、ネットワークを利用した学習活動が展開されることもあるだろ う。ここで、「情報収集・活用」の能力が必要になる。より広く人々の反応・考え方を学びに取り入れ、適切に取捨選択をして自分のものとする。

 そして再び、学習が始まるのである。

 これが、私の「総合的な学習」のイメージである。ここでの教師の役割は、「学びのコーディネート」である。子どもたちの発想や疑問を整理したり、 必要な助言を加えたり、方法を示唆したりといった、支援をするのが教師の役割である。つまり、以前の教授者「ティーチャー」の役割から、助言・調整者 「コーディネーター」の役割にかわるのである。その責務を全うするためには、教員自体が「総合力」を身につけていなければならないと考える。また、集団形 成や自己表現、情報活用などの基本的な能力を高め、日々活用していなくてはならないのだと感じる。その意味では、教師こそ最大の教科書であるというのは、 今の時代も変わらないのだと思う。

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