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追悼コンサートを終えて                      
田川律                       

 10人に上る実行委員会が2カ月以上かかって準備したコンサートは、奇跡的ともいえる梅雨の晴れ間の7月18日、日比谷野外音楽堂で、午後3時ジャストにスタートした。シンプルな白いシャツを着た大塚まさじの「サーカスにはピエロが」始まると、千何百人を越す観客からどよめきのような声があがった。普通なら西岡恭蔵とデュエットで歌われるはずの歌が、大塚ひとりで歌われている。聞く者の誰にも改めて喪失感が襲った。続くかれの歌「月の祭り」「街唄」も、ふたりでの演奏に馴染みの深いものだけに、歌は雲間から漏れる光の彼方で聞いているかもしれないふたりへと飛び交っていった。そして最近蔵さんと縁が深かったリングリンクスは、透き通った宮武希の歌声で続く。今回のコンサートではThe Herzと並んで、若手の出演者でもある。

 1年前の「KUROちゃんを歌う」は、蔵さんが音楽監督をつとめステージのすべてをまとめあげた。舞台監督であるぼくも風太も、それをステージで進行すればよかった。しかし今回はその蔵さんの追悼なのだ。出演者をきめるだけでなく、どんな曲をどの順序で演奏して貰うかまで、実行委員会、あえていえば、舞台進行の担当である風太とぼくできめていかなくてはならなかった。そのためのポリシーはただひとつ、「お葬式には終わらせない。いかに面白いコンサートにするか」だった。観客は大枚4千円も払ってきてくれている。そのひとたちが納得できるものにしよう。

 そこでコンサートを4つのブロックにわけた。リングリンクスを含め、きわめてアコースティックな色彩が濃い第1ブロック。ここでは高田渡、中川五郎、律&イサト、いとうたかおらが歌った。渡は息子の漣のラップスチールと共演した。漣もまた蔵さんとは親しかった。五郎はひょこぼう、と呼ばれるギタリスト永井充男を中心に、ホントに久しぶりに妻であるあーさん、こと青木ともこと共演し「我が心のヤスガーズファーム」を演奏した。この歌は蔵さんの音楽の原点ともいえるあの「ウッドストック」がテーマだ。

 第2ブロックは今回の一番の若手で、珍しくロックのバンドの演奏で始まる。シンガーソングライター、リクオが所属するThe Herzは風太がリクオだけでなくバンドとして参加して欲しい、と要請した。単調に流れてしまわないように、聴きごたえがあるように、という配慮でもあった。その通りに彼らの力強い演奏は、場内に活気を漲らせた。小室等はふだんそれほど親密には蔵さんと交流があったわけではないが、コンサートの話を聞いて喜んで参加を申し込んだひとりだ。ばかりか自身の通信にチラシを入れ、積極的に協力してくれた。歌はこれも最近なくなった現代音楽の巨匠武満徹の作品を、淡々と披露した。おそらく小室も、長く生きることは大勢の友人たちの死をみとること、と実感しているのではないか。そして、最近自分のコンサートでアカペラでこの歌をうたっている、というカルメン・マキが客席から登場して「アフリカの月」を歌った。このKUROちゃんにとって初めての作詞になったこの曲が、意外なシンガーでしんみりとうたわれ、会場は一瞬静寂に包まれ、それから大きな拍手の嵐となった。

 直前の交通事故のため、木村充揮が参加できなくなった「木村くんと有山くん」だが、そこは長い親友でもあり、即位妙等が得意な有山のこと、ギター、石田長生、ベース、藤井裕、そしてドラムスに正木五郎を加え、のりのりのロックでディランの名曲「天国の扉」と、なんと「プカプカ」の替え歌「プカプカプカ」を披露してくれた。おぬし、役者やのう。

 第3のブロックはブルース一筋、これしかない、というシバの「バイバイ・ブルース」で始まる。これほどシンプルに、これほど見事にブルースをアコースティックで歌う男はいない。そして一転して同じアコースティックでも、リリカルといえるデュオ、ゴンチチの登場。おりしも場内を一陣の風が吹き渡り、爽やかな音楽をくれなずむ大空へと運んだ。そしてチラシには間に合わず、突然ゲストとなった親友たち。あがた森魚、桑名晴子、朴保、そして金子マリ。それから役者でありながら、蔵さんのごく近くにいた東京乾電池の面々。綾田俊樹、ベンガル、柄本明の3人による「コーヒー・ルンバ」。この蔵さんの名唱を、ベースの大庭珍太、ギターのケニー井上、そしてパーカッションには沢田としきや砂川正和らの面々を引き連れ、楽しく聴かせてくれた。最後は白い衣装で揃えたアカペラ・グループ、VOJA19人とそれを率いるクイーン、亀淵友香による鎮魂の熱唱「ホワッツ・ア・ワンダフル・ワールド」と「グロリー・ハレルヤ」。とりわけ後者は蔵さんがKUROちゃんがなくなってから、彼女に捧げるように歌っていたのを、観客の中の多くの人が知っているだけに、つい目頭を押さえたり、涙をこらえる風景もあった。

 そして蔵さんたちの遺児、直太が父から貰ったという長田弘の詩集から朗読し、ずっとふたりの近所で、ふたりを文字通り見守り、みとってきた飯野一家の長女まやこが組む女性ロックバンドが、これも蔵さんの作品「君の窓から」を演奏するとき、夜はあたりに漂い、蝉もその声をおさめていた。

 フィナーレは、もちろん長い親交のあるギタリスト、石田長生を中心に、ドラムス、ジョニー吉長、ベース、大庭珍太、キーボード、国府輝幸、チャールズ清水、にケニー井上、洪栄龍、永井充男らが加わるといった豪華メンバーに、ここまでの参加者らがたがいにソリストとして加わって「アイ・シャール・ビー・リリースト」と「プカプカ」を演奏。とりわけ「プカプカ」での高田渡のソロは観客の意表をつく組み合わせだけに大喝采だった。じつはこれは今年2月、蔵さんのプロデュースで三重県伊勢でコンサートがあった折りに、蔵さんが参加した渡に歌わせた、といういきさつがあった。いつまでもなりやまぬ拍手のもと、ちょうど午後8時、予定時刻15分押し、でコンサートは終了した。

上の文を著者の許可なく無断転載することはお断りします。

恭蔵&KURO追悼コンサートプロ

大塚まさじ
 「サーカスにはピエロが」「月の祭り」「街唄」

リングリンクス
 「スタート」「春のように」

高田渡
 「トンネルの唄」「ひまわり」「ブラザー軒」

中川五郎
 「我が心のヤスガーズファーム」「眠りの国まで」

律とイサト
 「ハッピースゥインギンブルース」「ミシシッピー・ジョン」「団欒」

いとうたかお
 「夏の楽園」「フレンド」

室矢憲治
 朗読

The Herz
 「マウンテン・バイク」「ムーンライト・サンバ」「ヘルツのテーマ」

友部正人
 「小さな街で」「月の光」「夕日はのぼる」

小室等
 「つばさ」「みよた」

カルメン・マキ
 「アフリカの月」

有山じゅんじ
 「天国の扉」「プカプカプカ」

シバ
 「バイバイ・ブルース」「死刑囚の記」

ゴンチチ
 「フロウ」「ライト・サイド・オブ・ソロー」「○○○」

あがた森魚
 「港のロキシー」

桑名晴子
 「シャララ・アイ・ラブ・ユー」

朴保(ぱくぽう)
 「それでも太陽が」

金子マリ
 「アフリカの月」

綾田俊樹・ベンガル・柄本明
 「コーヒー・ルンバ」

亀淵友香&VOJA
 「ホワッツ・ア・ワンダフル・ワールド」「グロリー・ハレルヤ」

西岡直太
 朗読「本を読め」

ジャンピングバンビ
 「君の窓から」

全員
 「アイ・シャール・ビー・リリースト」「プカプカ」