信 玄 棒 道


  信玄棒道は戦国時代の甲斐の英雄・武田信玄が信濃政略のために造った軍用道路である。武田軍は強力な騎馬軍団で知られているがその軍馬が走るためまっすぐに造られ、棒道と呼ばれている。当初は下の棒道・中の棒道・上の棒道と3本有ったが現在は上の棒道が残っている。今回は小海線甲斐小泉駅から棒道火の見までを歩いてみた。
 甲斐小泉駅 → 小荒間古戦場跡 → 三分一湧水 → 小荒間番所跡 → 女取湧水分岐 → 西国三十三番観音 → 棒道火の見

 高原鉄道小海線の甲斐小泉駅で下車する。小さな無人駅であるが私が訪れるときはいつもホ−ムの端に猫がいる。猫が駅長を務める駅である。駅舎を出ると正面に雄大な富士山が見える。駅のすぐ左の階段を下りるとシルクロ−ド博物館がある。これは日本画家の平山郁夫氏の夫人が収集したシルクロ−ドの村々の織物や装飾品が展示されている。

     
    甲斐小泉駅      甲斐小泉駅からの富士       小荒間古戦場

  駅右手を小淵沢方面に線路沿いの車道を少し歩くと右手に小荒間古戦場跡がある。このあたりは武田信玄が信濃の村上義清の軍と戦い、勝利をおさめた地といわれる。周辺には信玄が座ったとされる御座石などがある。
  突き当たりT字路を左に折れ少し下ると右に八ヶ岳の湧水のひとつ三分一湧水がある。小さな緑地公園になっている。三分一湧水は今でも一日8500tの湧き水があり日本名水百選の指定を受けている。武田信玄がこの湧水を下流の3つの村に平等に分けるようにしたものといわれ、その工法が注目されている。
 今来た道を戻りすぐ左手の橋を渡る。少し歩き右に折れ小海線のガ−ドをくぐると左に小荒間番所跡がある。

       
    信玄御座石           三分一湧水         小荒間番所跡

 番所跡を通り過ぎ左にゆるくまわり、畠や庭に植えられた花を見ながら小荒間の集落を抜けて行くと樹林帯の中の棒道に入っていく。古杣川を渡るといよいよ山道になり、別荘が見え隠れする雑木林の中をゆるやかに登っていく。雑木林の中の道なので展望はないが所々に道標があり道は整備されている。また西国三十三番観音の石仏が次から次と道端に佇みハイカ−を迎えてくれる。点在しているその石仏の顔を観察しつつ、女取湧水から流れる豊富な水量の小川の音を聞きながら歩く。、女取川を渡り坂を登ると最近開発された別荘地に出る。別荘地に出た所に一番大きな石仏がある。別荘地に沿ってすすむと広く切り開かれた道幅になる。この道幅があれば馬は一気に駆け抜けることが出来ただろう。この道を野鳥のさえずりをききながら、また季節によってはアザミ、キキョウなど野草も見られ、右手には権現岳、左手にはゴルフ場が見え隠れしする気持ちのいい緑陰のハイキングコ−スである。注意深く梢を見るとリスなどの小動物も見え、冬になると日本カモシカも山奥からおりてくる。最近八ヶ岳にも熊が現れたという噂があるので山深く入るひとは注意を怠らないようにした方がよい。

                 
    野仏            春の信玄棒道            秋の信玄棒道                  

        
  甲斐駒ヶ岳と北岳          権現岳              編笠山

 やがて左手にゴルフ場が現れ、ゴルフ場に沿って歩くと町の水道施設と火の見があり棒道と編笠山へ続く旧道の交差点に着く。ここでの眺めは素晴らしく正面に甲斐駒ヶ岳・北岳のピ−ク・鳳凰三山、背後には編笠山・権現岳・西岳が見える。

                

 2003年(平成15年)の夏、JR小海線甲斐小泉の駅舎が左の写真のように改築された。バスの停留所のようで風合いが無い。

トイレもなくなり、「用足しは列車の中で」と書いて有るが1時間に1本しか来ない列車を待っている間に漏れたらどうしよう。下山して来た登山客や列車から下車した客が困っている。






(2004.1.12 更新)