暑くて長かった二十世紀最後の夏は、ようやく終りを迎えた。
ウォーキングの小径には虫の音が冴え渡り、風が心地よい季節となった。 「天高く馬肥ゆる秋」ならいいが、「人肥ゆる秋」にならないよう気をつけねば。
一昔前、秋の夜長は読書と相場が決まっていたが、何時の間にかテレビが取って代わり、今や
パソコンがその座を脅かしつつある。 それを物語るような出来事が、ここ一ヶ月ばかりの間に私の周りに起きている。
五人の旧友から次々と初メールが届いたのだ。
わたしが始めた六年前、友人では誰もやっていなかったので、メールを出す相手がいなくてつま
らなかった。 それで、仲間をふやそうと、ことあるごとにメールは便利だよ、それにインターネットは世界が広がるから面白いよと宣伝しまくっていた。
誤解のないように言っておくが、別に業界の回し者ではない。
その効果が今になって、ようやく現われてきたらしい。 五人とも五十の手習いである。パソコンなんてとてもと毛嫌いしていた彼らも、とうとう重い腰を
上げたようだ。 指一本でたどたどしくキーボードを叩く姿が目に浮かぶが、こんなものはどうということはない。
要は慣れである。始めようとする意欲が肝心なのである。
おかげでいまや私のアドレス帳には三十人をくだらないメル友が登録されている。
その中のひとり、同級生のK君の場合をお話しよう。
ある日の事、留守電にK君からのメッセージが入っていた。
「年賀状に印刷された君のアドレスにメールを出したんだが、あて先不明で戻ってきてしまったよ。正しいアドレスを教えて」
ああ、またやったな?
私のアドレスには小文字のl(エル)が二ヶ所入っているのだが、それを数字の1と間違えてしまうらしいのだ。どうやら彼もその口らしい。
そこでその旨を記して手紙を送った。それから3日後、メールは無事に届いた。
私が返事を打とうとしているその時「メール届いたかな?」と、K君から確認の電話が入った。 思わず二人で笑ってしまった。メールのために、電話を使い手紙を書き、いったい何をやっているんだって感じ。
実は笑っている場合ではないのだ。メールが届いたかどうか電話で確認してくる人は結構多いのである。
同じプロバイダー同士なら、受信確認が自動的に送られてくるので、相手が読んだかがすぐわかる。
しかし、プロバイダーが違うと、それが出来ない。何かいい方法を考えて欲しい。
ともあれ「ようこそメル友」である。 インターネットやメールは、これからの老人には必需品になると私は思っている。
足腰が弱って外出が出来なくなったとき、その力が発揮されるのだ。
それに指先や頭を使うのでボケ防止にもなる。一挙両得ではないか。
というわけで、私の居間はいつのまにかOAルームと化してしまった。 今はデジカメに嵌って、せっせとアルバムを作っている。次の目標は、ホームページを立ち上げ ること。首尾よく立ちあがったら皆さん遊びにきて下さいね。
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