STORY〜物語〜

2ND WORLD
戦いの中へ‥‥編・解説
該当話数 第4話/抜き撃ち@
第5話/抜き撃ちA
第6話/生と死


第1話から3話までが「プロローグ第1部」とするなら、第4話から
6話は「プロローグ第2部」に位置づけすることができる。

追っ手の凶弾に右太ももを撃たれ、倒れるアリサだったが、初老の男
に助けられる。アリサから事情を知った男は銃のウデを仕込むことに
する‥‥、というのが大まかな筋である。

第4話と5話はモーゼルを特性を生かす形でストーリーが進められて
いる。

まず、モーゼルの撃鉄の形が丸くなっているため、指が滑りやすいと
いう欠点を持っている点。これが原因でアリサは追っ手に撃たれ、結
果的には初老の男と出会い、銃のウデを仕込むきっかけをつくること
になった。そして、男も若い頃にモーゼルの撃鉄が原因で恋人を死な
せている、という過去を持っていた。その恋人はアリサと瓜二つで、
供養を込めてアリサに銃のウデを仕込む気になった。起こしにくい撃
鉄を発端にアリサと初老の男が出会い、アリサが銃を自在に使うこと
ができるようになる、という流れは実に巧みなストーリー展開である
といえる。なお、ファンの間では有名な話ではあるが、この欠点への
対処が雑誌掲載時と単行本とでは違う展開になっている。これについ
ては別の機会に触れることにする。

次にモーゼルが大型の銃であるが故に重量があるという点。これを克
服するためにアリサは腕の筋力をつけるトレーニングを施されること
になる。トレーニングは棒の先に吊るされた重りを巻き上げてはおろ
すという厳しいもので、アリサも一度は弱音を吐いたほどだ。初老の
男の激励によって、アリサは訓練を続けることにしたが、このくだり
はアリサがモーゼルを自在にこなすために織り込まなければならない
要素であるとともに、アリサが“生きるため”に戦うことを決意する
重要なシーンなのではないか。初老の男に出会うまでのアリサは、ど
ちらかといえば追っ手に追われる恐怖から逃れるために戦うが、その
恐怖心から時には怯えてしまうこともあった。しかし、初老の男に助
けられ、銃で人を撃つことの厳しさを教えられたことで、アリサの心
に“死にたくない”という気持ちが芽生え、厳しい訓練にも耐え、つ
いにはモーゼルを軽々と持つことができるようになった。現にこれ以
降、アリサが恐怖で怯えるところは一切見られなくなる。

この後、抜き撃ちの訓練へと移るわけだが、ここでも分解したモーゼ
ルを組み立てるところやアリサが標的の真ん中を射抜く過程を丁寧に
描いている。銃器に精通している作者の面目躍如といっていい。また、
こういうくだりは他のSFものやアクションものでは省略されがちだ
が、そこをしっかりと描くことで作品にリアル感を与えていることも
確かだ。

続く6話で、初老の男の素性が明らかになる。この話数で本作の重要
な要素である「裏社会の恐ろしさ」が初めて描かれることになる。掲
載誌が少年誌であることを考えれば、かなりハードな展開であるが、
SF的要素を入れながらも荒唐無稽な部分を極力抑えようとする作者
の意図を垣間見ることができる。

生きることの厳しさを知ったアリサは、「育ての両親が存在しない仲
町」を離れ、新たなる異世界へと移動する。


第4話からのストーリーを見る

「アリサが出会った人たち」を見る

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