小田急電鉄複々線化事業
新宿と箱根・江ノ島・多摩ニュータウンを結ぶ通勤路線・観光路線としての役割をもつ小田急電鉄では、現在連続立体化事業・複々線化事業が行われている。
JRの湘南新宿ラインに対抗して生まれた湘南急行などの輸送力増強、サービス増強に対応するために、今現在最も変化の激しい会社である。
<小田急線って、こんな路線です>
まずは小田急電鉄の歴史について、簡単に以下の表に記す。
日付 事項 1923年 小田原急行鉄道設立 1940年5月1日 帝都電鉄(現京王井の頭線)合併吸収 1941年3月1日 社名を小田急電鉄に改称 1942年5月1日 東京急行電鉄(通称大東急)に合併改称 1948年6月1日 小田急電鉄分離発足 1955年10月1日 国鉄(現JR)御殿場線と直通運転開始 1964年 2600形通勤型車両導入 1968年7月1日 急行あさぎり用3000形車両導入 1969年 5000形通勤型車両導入 1972年 9000形通勤型車両導入 1978年3月31日 営団地下鉄(現東京メトロ)千代田線と相互直通運転開始 1980年 7000形LSEロマンスカー導入 1987年 10000形HiSEロマンスカー導入
1000形通勤型車両導入1991年3月16日 特急あさぎり用20000形車両導入 2000年11月 相模大野工場:ISO14001の認証を取得 2002年2月 3000形通勤型車両導入 2002年3月23日 湘南急行・多磨急行新設
現在は、本社を東京都新宿区に構え、鉄業事業だけでなく流通、観光、ホテル、不動産にも力を入れている。
現在の営業キロは120.5km、小田原線、江ノ島線、多摩線の3路線を所有し、通勤・通学・観光路線として1日平均180万人以上が利用する大手私鉄である。
今回は立体交差化・複々線化についてまとめてみた。
ちなみに、連続立体交差化事業は東京都が推進しているもので、小田急電鉄が100%出資しているものは複々線化事業である。
すなわち、一度の工事で同時に行ってしまおうというものである。
連続立体交差化事業は世田谷代田〜登戸間で行われ、成城学園前駅のみ地下化される。
<複々線化区間を分けて見てみよう>
小田急電鉄が関わっている事業には以下のものがある。
・複々線化工事
・多摩川橋梁架け替え工事
この工事によって小田急電鉄の路線改良区間は、複々線化事業区間は東北沢〜和泉多摩川の10.4km、多摩川橋梁架け替えを含めた改良工事区間は和泉多摩川〜向ヶ丘遊園間1.4km、そして複々線化完成区間の代々木上原〜東北沢間0.7kmを合計した12.5kmとなる。
それでは、各区間別で見てみよう。
<代々木上原〜東北沢間>
・昭和53年3月31日完成、地下鉄千代田線との直通運転開始
・方向別運転、東北沢は外側の緩行線のみホームあり
<東北沢〜世田谷代田間>
・平成16年度中に着工予定
・現在東京都等の関連機関と手続き中
<世田谷代田〜喜多見間>
・平成16年12月完成予定
・途中駅は梅ヶ丘、豪徳寺、経堂、千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵、成城学園前
・方向別運転、経堂・成城学園前以外は外側の緩行線にのみホームあり
・成城学園前駅上り本設ホーム使用開始(5月23日)、一部区間ダイヤ変更
<喜多見〜和泉多摩川間>
・平成9年6月23日完成
・途中駅は狛江
・方向別運転、外側の緩行線のみホームあり
<和泉多摩川〜向ヶ丘遊園間>
・平成20年度完成予定
・途中駅は登戸
・登戸〜向ヶ丘遊園間は上り2線、下り1線
<複々線化したら、どんな感じに変わるの?>
線路が増えれば、列車の運転頻度が増えることになる。緩急分離もなされるために、運転本数の増加だけでなく、所要時間の短縮にもつながるわけである。
朝のラッシュ時間における上り列車(向ヶ丘遊園〜新宿間)の所要時間について見てみよう。
急行・準急 各停 着工前 33分 40分 現 在 29分(−4) 40分 世田谷代田〜喜多見間完成時 25分(−8) 36分(−4) 東北沢〜世田谷代田間完成時 21分(−12) 34分(−6)
計画区間が全線複々線化されると、朝のラッシュ時だけでも最大12分短縮される。
データイムの列車ではさらに時間短縮が見込まれ、湘南新宿ラインに対抗するには十分な武器となるのは一目瞭然である。
<関係ないけど、小田急のその他の話>
小田急電鉄では、連続立体化・複々線化事業以外にも様々な計画をしている。
先日発表になった2004年度鉄道事業整備投資計画についてみてみよう。
設備投資金額:521億円
投資目的:輸送サービスの工場
・登戸駅改良工事
・多摩線黒川〜小田急永山間にはるひ野駅新設
・3000形通勤型電車10編成(68両)、50000形ロマンスカー2編成(20両)新造
・8000形通勤型電車3編成(18両)リニューアル工事
・バリアフリー化の推進
・ホーム待合室の設置
・列車非常停止ボタンの設置
・環境対策の推進
【参考資料】
・小田急電鉄会社案内、小田急電鉄、2002.9
・冊子「おだきゅう」、小田急電鉄広報部、2004.5.1
・鉄道ファン、交友社、2001・2・1
・鉄道ピクトリアル、鉄道図書刊行会、2002.10.1
【改訂履歴】
04/05/08 ページ作成