(C)TOSSインターネットランド/中学校/3年生/国語/古典を味わう/漢文/訓読
長谷川博之(トークライン中学秩父JEサークル)
中学3年生、入試ひと月前。1時間で漢文訓読の基礎を習得させる。リズムとテンポを意識した授業に、生徒たちは集中して取り組んだ。後に実施した理解度テストの出来も平均が8割を超えた。
【ステップ1 記憶を呼び起こす】
指示1 「花が開く」を漢文にしなさい。
中2の学習内容の復習である。
板書1 花開
「余裕余裕!」などという声があがる。
説明1 漢文(白文)とは中国の文章だから、漢字だけの文です。
漢詩(「絶句」の白文)を黒板に貼って見せた。
指示2 次に「花が開く」を訓読文にしなさい。
「訓読文」という言葉を忘れている生徒が半数いる。ここはさっと説明する。
説明2 訓読文とは漢文を日本語の文章のように読むために漢文に記号をつけて読む順序を示したものです。その記号を返り点と言いました。送り仮名は片仮名で書くのでしたね。
板書しながら説明した。
ガ ク
板書2 花 開
レ
「次は少しレベルアップだ」とあおる。
指示3 「私は走る」を漢文にしなさい。書けたら持ってきなさい。
板書3 私走
全員正解。「かしこい!」と大いに褒める。
「次はどうだ!」
指示4 「私は走る」を訓読文にしなさい。
「正解はこちら!」
ハ ル
板書4 私 走
これまた全員正解。全体を褒める。
【ステップ2 かりがね点を理解させる】
説明3 漢文では「私」は「我」というのでしたね。
指示5 「我、書を読む」を漢文にしなさい。
ノートを見てまわり、出来を確かめる。
案の定「我書読」と書いている生徒が32名中なんと18名もいる。
説明4 「我書読」(板書しながら)はバツです。
自信を持っていた生徒から「エーッ」という声が上がった。
説明5 漢文の語順は英語と似ているのです。
授業ではALTが参観していたので(よく私の授業を見に来る)、彼にも確認した。
板書5 日本語 主語 目的語 述語
漢文 主語 述語 目的
「 もう一度チャレンジです」と励ます。進度を見計らって解答を板書する。
板書6 我 読 書
「やったあ」「よっしゃ!」 生徒たちは徐々に乗ってきた。
指示6 では、これを訓読文にしてごらんなさい。書いたら持っていらっしゃい。
最初は悩むものが多かったが、次第に「レ点はアッパー(下から上に返る)だ」と1年前の指導を思い出す。
「正解!」「賢い!」と声掛けしながらすばやく丸をつけていく。
ここでは友人に答えを聞いたり見せてもらったりして書いてきてもよいとする。次で正解すればよい。
ム ヲ
板書7 我 読 書
レ
指示7 「我米を食す」を漢文にしなさい。
即答。全員正解。「やっぱり賢い!!」
板書8 我 食 米
指示8 これを訓読文にしなさい。
これも即答。
ス ヲ
板書9 我 食 米
レ
【ステップ3 一二点を理解させる】
「次はとっても難しいぞ」と挑発する。
指示9 「我故郷を思ふ」を漢文にしなさい。
板書10 我 思 故郷
漢文にはできる。
しかし、ここで行き詰まる。むりやり「レ点」をつける者もいる。
レ点をつけたものに板書させ、なぜ間違いかを検討させる。
「一二点」を覚えており解ける生徒も数人いるのだが、全体を注目させ説明する。
説明6 目的語が二字ですから、「一二点」が必要なのです。
フ ヲ
板書11 我 思 故郷
二 一
「あ、そうか!」「思い出した!」 この板書でほとんどの生徒が思い出す。
説明7 一がついた漢字を先に読んでから二に返るのです。だから一二点。
「それじゃあ次の難問。」
指示8 「彼学校に通ふ」を訓読文にしなさい。 書けたら見せに来なさい。
持って来る生徒すべてが正解。「天才!!」褒めまくった。
フ 二
板書12 彼 通 学校
二 一
【ステップ4 訓読のまとめ】
最後に力試しである。
指示10 「百聞は一見に如かず」を訓読文にしなさい。
超難問である。
説明8 「如かず」は「不如」と書きます。(板書) 「不」を「ず」と読むのです。
半数が書けた時点で持って来させ、解の異なる3名に板書させた。
一人はレ点が抜けている。もう一人は送り仮名の「カ」が抜けた。そして最後の一人が正解。
全体では19名が正解した。誤答した生徒も板書を見て納得した様子。
ハ カ 二
板書13 百 聞 不 如 一 見
レ 二 一
「これで漢文訓読の基礎はバッチリです。」 ここで授業を終えた。
(以上50分)