英国紳士の正体見たり!

表題に誇張アリ


 昔の事は知らないが、と云って今の事に通暁しているわけでもない。古紙の山から奇天烈なモノを掘り起こし、読者諸氏と一緒に笑ってしまおうと云う、例によって芸の無い内容である。

 昨今は一般向け軍事雑誌の入手が困難になっている事もあり、一般的な資料ネタに走りがちなのであるが、今回は「アサヒグラフ」昭和18年10月13日号の裏表紙の広告である。


 謀略と脅迫、これが英紳士道の正体だ! 欧化心酔の鹿鳴館時代、若き熱血は如何に闘ったか? 日本の夜明けを彩る逞しき青春!

 <英紳士道の正体>と云う文言が今では笑いを誘う。当然この映画を観た事は無いのだが、<悪の英国紳士>が愛国心のかたまりのような日本青年に痛い目にあわされる話なんだろう、と云う程度の想像はつく。
 「戦中映画史 私記」(飯島 正)をひもとくと、

 「仮面の舞踏」は明治中葉の欧化時代の風潮と、ノルマントン号事件における英国人の暴虐とを、批判的にえがこうとした点が取柄であるが、作品としては不得要領におわっている。 

 それで上の写真の背景が裁判風景になっているわけだ。
 <ノルマントン号事件>とは、明治19年(1886)10月24日に発生した、英国貨物船ノルマントン号の沈没事故の事。英国人乗員が生還したのに対し、日本人乗客25名、インド人火夫12名は救助ボートに乗せられる事なく、水死したため<事件>となった。
 日本人乗客が全員見殺しにされた、と云う事でさえ非難囂々なのだが、不平等条約下の裁判で、船長以下乗務員が無罪となったため、治外法権問題を論じる上で、今に残る格好のネタを提供した。

 この年に公開された映画としては、「無法松の一生」が燦然と輝いているので、「仮面の舞踏」が、今後注目される事は、まずあるまい。
 とタカを括っていたら、松竹ホームビデオから「仮面の舞踏」が販売されている事を知って、正直驚いている。


 ビデオの紹介文を読む限りでは、どうも<悪の英国紳士>が日本青年に痛い目にあわされるような、痛快な内容ではなさそうだ。残念。


 *ノルマントン号事件部分に関しては、創価大学(日文)金子 弘 氏のページを参考とした。
  (http://www.succ.soka.ac.jp/~hkaneko/etxt/sokki.htm)