SD! ルーズベルト

ゼンマイ走行はしませんが37万おまけ


 古道具屋で、こんなモノを見つけた。

 ルーズベルト大統領の人形である。
 何故「大東亜戦争」当時の敵側領袖が人形になっている? 射的か、トンカチで叩いて「鉄槌を下す」ためなのだろうか…。

 古道具屋のオヤシさんが「これはマッチ入れなんです」と、助け船を出してくれる。本体は空洞になっており、横にマッチを入れる穴が開いていて、髪の毛は「マッチ箱の横」のザラザラ塗料が塗られている。要するに

 ルーズベルトのドタマで火ぃ付けたれ!
 一億一心火の玉じゃい!

 と云う、敵愾心昂揚と実用を兼ねた家庭用品なのだ。
 ただのルーズベルト人形であるなら、「見なかったこと」にしておくが、そんな「面白い」商品であれば、買っていかないわけにはいかない(笑)。

 と云うわけで、ル大統領閣下は、印度総督府の客人としてお持ち帰りとあいなった次第。
 材質は焼き物のようだが削ってみるわけにもいかぬので「不詳」。
 肌は黄色が強く塗られ、シャツとメガネは白、「白目」は灰色で、背広は紫がかった茶色で、眉毛と同じに見える。ネクタイはコバルトブルー。髪の毛が「マッチ箱の横」の色で、目玉は黒。七色も使った思いの外、手のかかった商品である。高さは約75ミリだ。


正面


側面1


側面2(マッチを入れる穴がある)


背面

 等閑視されがちな工芸技術を、見事時局に追従させた逸品である! とはさすがに云えない。何故か?


「登録出願中」(右から読んで下さい)とある

 『敵愾心』をも商売のネタにする、この商魂! 国家当局からの教育・宣伝とは違う位相に、我等臣民の生活は屹立しているのだ。
 しかし、こんなモン誰が買うんでしょうね…。

 コンロ・竈・タバコと火を付けるところにマッチは必ずあり−戦時中は配給にまでなった−当然マッチ箱は、台所やポケットにあるわけなのだが、マッチを別容器に入れて使う発想が自分自身に無い(『マッチ入れ』と云うモノがあることすら知らなかった)ので、「マッチ入れ」がどれくらい家庭に普及していたのか、見当もつかない。
 家庭の必需品と云うよりは、こじゃれたデザイン用品と云う位置づけになるのだろうとは推測しているものの、この「ルーズベルト」じゃあないが、アタマを抱えている所である。
(おまけのおまけ)
 古道具屋のオヤジさんとの会話は続く。
 「『ルーズベルト』を意匠登録するくらいの業者と云うことは…」
 「当然『チャーチル』もあるんじゃあないでしょうかねえ」
 「しかしさすがに『蒋介石』は無いと思いますよ」
 「そのココロは?」
 「ハゲ頭じゃあ擦るところが無い」