主筆読書録

2000年4月〜6月


4月1日

 「プロペラ飛行機の興亡」を読了。「飛行機工学」やっぱり身体が受け付けない(笑)。内容よりも、元の持ち主の痕跡の方に興味が移ってしまう。「昭和16年2月分手当ニテ求ム於神田」だの「”学校ノ課程”一番目標。実習ヲモ含ム」と記された栞替わりの紙片を見てしまっては、数式ばかりの飛行機工学本なんぞどうでも良くなってしまう。

〜4月4日

 佐貫 亦男「ドイツの街 道具と心」(光人社文庫)読了。

 文華堂で「大図解 第二次世界大戦の秘密特殊兵器」(坂本 明 グリーンアロー出版社)、「宮本三郎 南方従軍画集」(陸軍美術協会出版部)を購入。

 宮本三郎画伯と云えば、例の山下・パーシバル会見の図で有名な画家である(本人及び弟子筋にとっては触れられたくない過去ではあるが)。日本の戦争絵画と云うのは、未だにダイオキシン並の危険物となっており、まともに公開されたためしが無い。当代一流の画家が、実際の装備品、兵士等をモデルに描いているだけあって、陸戦モノは特に資料価値が高いと私は思う。とかく太平洋戦争を題材にしたものばかりがクローズアップされがちであるが、日中戦争時の絵画を一度じっくり眺めてみたい、と思っている。

〜4月6日

 「宇宙ロケットの世紀」(野田 昌宏 NTT出版)読了。現代宇宙開発は、軍事と切り離せない性格を持っているのだが、何故か出てくる技術者、宇宙飛行士にはお茶目な連中が多い。米国と云う土地がらがそうさせるのか、なんだかんだと云っても宇宙開発には夢があるのかは解らない。糞真面目に開発、運用された兵器そのものがギャグにされてしまうのとは(とネタにしている張本人が云うのも妙な話ではある)、対照的である。

4月7日

 依然善良なる一市民の一日。古書店にて「誰にも書けなかった戦争の真実」(ポール・ファッセル 草思社)、「日ソ戦争への道」(ボリス・スラヴィンスキー 共同通信社)、「アクセス中日辞典」(三修社)を購入。


 久方ぶりに「スターリン・ジョーク」(河出文庫)を読んでゲラゲラ笑う。ソ連の指導者がブレジネフまでと云うあたりが時代で、多少社会主義史をかじっておかないと笑えないのだが、とりあえず高校の世界史の教科書を最後まで読んでおけば1/3はなんとかなるレベルである。思えばこの本を初めて読んだのが高校3年生の末期だったから、すでに18年も昔の話になる。まだチャウシェスクもホーネッカーも健在だった(笑)。このころブレジネフ、アンドロポフ、チェルネンコ(順番に多少前後アリ?)が立て続けに倒れて、NHKの「ニュースセンター九時」で葬式の中継をやっていたっけ(遠い目)。ソ連崩壊後、ああいう大かがりな葬式も少なくなったもんだ(笑)。

4月9日

  「回収」(岡田 斗司夫、田中 公平、山本 弘、音楽専科社)を読む。ひたすら特撮ネタ対談で一冊作ってしまったと云うスゴい本。その筋が好きな人は一読をお勧めする。「宇宙船」や末期の「アニメック」を知らない不幸な人は読むだけ無駄。リタイアした特撮ファン(私のことだあ!)あたりが読むと一番面白いのかもしれない。


 「礼儀作法入門」(山口 瞳 新潮文庫)読了。かつて(嗚呼!)のサントリー新聞広告で有名な人。新社会人はあの広告シリーズを収録した本を一度読んでおくことを是非にお勧めする。この本の文章が初期の「GORO」に掲載されていたとはまったく知らなかった。もっともそのころはまだ「GORO」どころか毛も生えて無いころだから仕方が無いと云えば仕方がない。この本よりは先にふれたサントリーの広告を集めた本(「諸君、この人生大変なんだ」等)の方が面白い。「礼儀作法入門」の文章も一部収められているからね。

4月16日

 大日本絵画「世界の戦車1915〜1945」を購入。図面は無い(泣)が、戦車図鑑としては非常に良く出来ていると思う。また、原著の誤り等に関しても訂正註が入り、好感が持てる。

 「精密模型で検証する 日本陸海軍基幹兵器大全」(徳間書店、凄いタイトルだね)を購入。やけに陸軍の肩を持ちすぎるきらいはあるが、以外と読みでがある。坂井三郎氏所有の零戦の断片の総天然色写真だけでも見る価値はある。これで「飴色」論争も決着か?しかし本来こう云う企画は別な出版社がやるべきものではないか?とも思う。

4月25日

 「日ソ戦争への道」ようやく読了。日ソ中立条約違反問題についてのソ連側の事情が良くわかる。とかく日本の降伏後も千島等で戦闘を継続したと批判の多いソ連であるが、「毒喰らわば皿まで」と云うところか。やっぱりトルーマンが良くない、と云うあたりまえの結論に達する。あるいは日本の降伏が遅すぎた、とか。


 橋本 治「恋の花詞集」読了。戦前〜高度経済成長手前までの歌謡曲について興味のある方は読んでおいて損は無い。あるいは当時の日本人が持っていた恋愛観が気になる人も。ちなみにこの本には「軍歌」「戦時歌謡」系は出てきません(笑)。

4月26日

 小岸 昭「世俗宗教としてのナチズム」(ちくま新書)を読み始める。一種の新興宗教としてナチスを捉えようと云う、なかなか面白そうな本。文章が露骨に反ナチ姿勢となっているのがひっかかる。

 「ラピタ増刊 S型ニコン伝説」を購入。今までS2やSPの陰で腹が立つ程脚光を浴びなかったニコンS3型が大々的に取り上げられた。ふっふっふ。

 合わせ技でWAVE出版「戦時広告図鑑」(町田 忍)を購入。「空爆にキャラメル持って」と云う森永ミルクキャラメルの広告が笑える。町田氏の仕事にはまったく頭が下がる思いがする。

4月29日

 近所の本屋で「ドイツ装甲部隊全史T、U」(学研「歴史群像シリーズ)を購入。第一次大戦からのビジュアル通史は珍しい。ドイツ軍に関する知識は、一般モデラー程度しか持ち合わせていない(だからと云ってその他の知識が人並み以上にあるわけではないです)が、読み応えがある。もともとこのシリーズは横目で見ていただけだったのだが、一通り揃えても良いかもしれない。


 新宿へ出て、給与受給の余勢を駆って、雑誌類を調達する。

 「グランドパワー6月号」メインのドイツ8輪重装甲車特集ではなく、ヴィッカースMkT、U戦車特集を期待して購入。12ページのために2350円を投資したわけだが、採算がとれたとはとても思えない(笑)。雑誌形態で日銭を稼ぐのも良いが、一冊物でロングセラーを狙う方向もあって良いと切実に思う。

 「航空ファンイラストレイテッド110 太平洋戦争日本陸軍機」を購入。表紙が良かったので、てっきり戦時中に撮影された写真集なのだろうと勝手に思いこんで購入したら、日本陸軍機写真図鑑だった。マイナー航空機も取り上げられているので、面白い本ではあるが、編集に難がある。巻末の滑空機、計画案部分の半数に図面も想像図も無いのは不親切である。ちなみにこの本、同シリーズ69の改訂版なので、69を持っている人は内容を確認しないまま購入すると大変である(笑)。

5月1日

 橋本 治「天使のウィンク」読了。

5月2日

 恵比寿駅前の古本屋で「値段の風俗史1〜4」(朝日新聞社)と「踊る地平線」(谷 譲次、岩波文庫)を購入。

〜5月5日

 夜は総督府に戻って「NHKにんげんドキュメント」で宮崎 駿が若手アニメータをしごく所(笑)を見て過ごす。「となりの山田くん」が惨敗?したらしく、スタジオジブリの次回作は、再び宮崎監督を担ぎ出さざるを得ないらしい。どう云う作品になるのかは見当も付かないが、楽しみではある。映画公開前にあちこちで見られる、宮崎氏の発言は、もっと楽しみである。特に昨今10〜20代の若者の荒廃ぶりが喧伝されているので、「当然」それもふまえた発言があるものと推測されるのだ。


 野毛の古本屋で買い物。「食人宴席」(鄭 義 光文社)、「ガンと西部劇」(宍戸 錠、佐藤 まさあき 小出書房)、「中国的天空」(中山 雅洋 サンケイ出版)。「ガンと…」著者名に「エースのジョウ(!)とあったので発作的に購入(笑)。中身は昭和30年代少年雑誌の特集記事風の読み物。「中国的天空」は以前から読みたかった本。多量の書き込みと折り曲げのため、たったの300円である。元の持ち主の勉強ぶりが伺えるのだが、中国人の名前をちゃんと覚えられたのかどうかは怪しい(笑)。

5月6日

 神保町に出る。文華堂で例によって買い物。最近気になっているヴィッカース6トン戦車の資料が無いかと、洋書のコーナーを見ていたら「ザ ヴィッカース タンクス」と云う本を発見。内容はイマイチであるが、こう云う時に、こう云う本が見つかるのは何かの縁と云うことで購入。ついでに「並べりゃ分かる 第二次大戦の航空戦力」(銀河出版)も。「並べりゃ」とあるが、並べ方が良くないせいか(笑)、あまり良く分からない本である。典型的な「雑談本」。そこそこ楽しめるが感動はしない。

 レジで金を払った後で「決断」と云う週刊誌風の本を発見。ざっと中を見ると「アニメンタリー決断」放映時に日本TVが出版した雑誌(!)であることが判明、速攻回収である。内容は「決断」第一〜三話の誌上ダイジェストと、それに関する読み物。ヨコジュンこと、横田 順彌が「太平洋戦争は かく予想されていた!!」と云う日米未来戦争紹介記事を書いている。
 この「決断」雑誌の存在は友人から聞かされていたのだが、まさか実物を自分が手にする事が出来るとは思ってもいなかったシロモノである…。

 書泉で上田 信「大図解 世界の兵器(ウェポン)」1、2を購入。「兵器生活」上で軍装ネタに走る予定は今のところ無いのだが、資料としてやはり手に入れておかないといかんだろうと云う事で。

5月7日

 「戦記が語る日本陸軍」(宗像 和広 銀河出版)読了。現在読む事の出来る、旧軍ガイドブックだったとはまったく気が付かなかった。かつてどう云う良い入門書があったのかを知る、良い手かがりとなるべき本。これで古本屋通いにも熱が入ると云うもの(…あ、云ってみただけですから…)。

5月21日

 最近読んだ本について、
 「田宮模型の仕事」(文春文庫)、以前ハードカバーで出ていたもの。文庫化の際に解説、増補があったので結局購入してしまった。

 「ジェット機時代」(奥宮 正武 朝日ソノラマ航空戦史シリーズ)、原著は昭和28年刊行。当時の航空機界の動きを知りたくて購入。あまり面白くない(笑)。やはり写真や図版が無いと、この手の本は物足りないものである。←なんか墓穴を掘っている気もしないでは無い(笑)。

 「自分の中の毒を持て」(岡本 太郎 青春文庫)、爆発だ(笑)!人生に歓喜を求めたい人は読んでおいても良いかも。

 「神道とは何か」(鎌田 東二 PHP新書)、某総理の「神の国」発言とは関係無い。神道の起源を縄文時代以前の自然崇拝にもとめ、神道の背景に自然=生命に対する「センス・オプ・ワンダー」があるとする、非常に読みやすく、かつ良い本。神道=天皇制、と考えている人は一読すべし。

 「踊る地平線」(谷 譲次 岩波文庫)、林 不忘、牧 逸馬と合計3つのペンネームを使い分けた、昭和初期に活躍した作家の海外旅行記。外国語をひらがな表記したり、唐突に外国語を文中に挿入すると云う昭和初期に流行った文章スタイルを堪能できる作品。実は上下のうち、上しか読んでいない(笑)。「お固い」岩波文庫もこう云う本を出すようになったとは、感無量である。

〜6月10日

 「恋と女の日本文学」(丸谷 才一 講談社文庫)読了。非常に面白い本なので、一読をお勧めします。

〜6月17日

 半藤 一利「永井荷風の昭和」(文春文庫)読了。おすすめ。「鷹が征く」(光人社 碇 義朗)読了。「戦闘機無用論」のくだりだけか(笑)。

 文華堂にひさしぶりに足を運ぶ。出物ナシ。手ぶらで帰るのも腹立たしいので「サンデー日本」を数冊購入。じっくり内容を見ないで購入したため、同じ号が2冊もあった(笑)。典型的衝動買いと云うやつか。しかも「サンデー毎日」だと信じ込んで購入しているのだからお間抜けである。昭和30年代初期の戦記雑誌。当時の広告が面白い。スタンドバー「宇宙船」のハイボールが60円の時に、グランドキャバレー「大興」のビールが180円で、割烹旅館「大国」の一泊二食が800円よりとある。ちなみに「サンデー日本」自体は30円(当時)である。

〜6月18日

 古本屋で買い物。皇太后ご逝去にかこつけて「国際写真情報 東宮殿下御慶典記念号」なんてものを買ってしまう。云うまでもないが、「東宮殿下」とは昭和天皇のことである。本の内容はイマイチであった。併せ技で「アサヒグラフ臨時増刊 先帝陛下御一代画報」と云うものも購入。云うまでもないが、「先帝陛下」とは大正天皇のことである。皇太后(昭和天皇の)の若かりし頃の写真は、「先帝…」の方が面白かったので、何か損をしているような気分である。

 再び古書店にて資料の買い出し。「文芸春秋臨時増刊 太平洋戦争 日本陸軍戦記」編集人は半藤利一氏であった。「写真集 ある戦友の記録」(喜多原 星朗 白金書房)、「写真集 零戦」(雑誌丸編集部 光人社)、「断腸亭日乗」(永井 荷風 岩波文庫)等を購入する。