「ホ」?「ボ」?

「ソ」軍戦車ニ対スル独軍対戦車火器ノ弾丸効力


 今回<藤田兵器研究所>所長殿より、副題の表題の付いた(まぎらわしい文章だ。読者諸賢は真似をしないように)表の写しをいただいたので、戦時中の列国戦車情報をネタ化した勢いで翻刻する次第である。
 表が書かれた時期は昭和18年との事であるが、詳細は不明である。まあ、こう云うモノもあったんだ、くらいの認識でいればよろしいと思う。

 原本は縦書きであるが、諸般の事情により、ヨコ書きに変更してある。したがって、表の組み方自体も原本と異なっている事をお断りしておく。また、文字の判別が付かないものについては<■>と表記した。

「ソ」軍戦車ニ対スル独軍対戦車火器ノ弾丸効力
対戦車火器/戦車・種類■箇所 41型20粍対戦車銃
(重量140瓩
 鋼心弾秒速1325米)
37粍対戦車砲
(重量450瓩
鋼心弾1325米)
38型5糎対戦車砲
(重量1000瓩
鋼心弾1200米
弾量925瓦)
97型改造38型75粍対戦車砲
(重量1000瓩
「ポーラードング」弾 450米)
40型75粍対戦車砲
(重量1500瓩
徹甲弾770米
鋼心弾990米)
同上(原本表記ママ)
(「ポーラードンク」弾
秒速450米)
「T34」型戦車 砲塔前面砲眼接際部 100米 100米 100米 300米   300米
砲塔側面 300米 200米 700米 800米 1100米 800米
側面転輪 300米 200米        
砲塔前面全部       800米 1000米  
車体上部     700米 800米 1000米 800米
車体下部            
「KB1」型戦車 砲塔前面砲眼接際部 (無効) (無効) (無効) (無効)   (無効)
砲塔側面 1000米
側面転輪 1000米
砲塔前面全部 300米
車体上部  
車体下部 300米
備考
 1.鋼心弾ハ詳細未ダ明カナラザルモ弾尾内ニ「タングステン」ヲ比較的多量ニ含有スル特殊鋼心ハ外表面ハ「アルミニューム」又ハ錻力板ニシテ中ニ軟カキ物質ヲ又弾頭尖端ニハ「ベークライト」ヲ填実セル激炸薬ノ特殊徹甲弾ナリ

 1.本表ニ記載シアル米ハ対戦車火器ヲ以テ貫徹シ得ル距離ヲ示ス

 原本に註釈などと云う奇特なものが付いていないので、内容を解説しようにも、正しく書けているのかは保証い。総督府及び主筆の情報収集と読解能力の一端を知る、良い機会とでも思って下さい。(参考:WW2ドイツ軍歩兵火器大百科 グリーンアロー出版社及びANTI−TANK WEAPONS CROWOOD)


 「T34」型戦車は、説明するまでも無い、ソ連戦車の傑作。幅広キャタピラ・大型転輪と云う足廻りと、傾斜した装甲版で構成された車体を持つ。独ソ戦当初のドイツ軍対戦車砲、戦車砲では討ち取る事が困難であった。大戦後まで東欧・中東・亜細亜で使用されつづけた。アメリカのDC−3輸送機のようなものである。

 「KB1」、現在では「KV1」と云う表記が一般的である。当時としてはケタはずれな重装甲により、ドイツ軍対戦車砲、戦車砲を無力化させた。上の表の「無効」と云う表記がその証拠である。
 戦時中に帝国陸軍当局が、どの程度の情報を持っていたかについては、別項を参照されたい。


 「車体上部/下部」が具体的に何処を指すのかは、この表からは読みとれない。前面か側面か、上面か下面かはドイツ人の作成したであろう、この表の元ネタに当たるしか判断の方法は無い。


 「41型20粍対戦車銃」は、有名なゲルリヒ砲<41型2.8cm重対戦車銃>の事。
 薬室では直径28ミリのタングステン入り弾丸を、砲口を飛び出す時に20ミリまで絞り込むことで、初速を増大させると云うカラクリを持つ(マヨネーズを絞り出すようなものか?)。マヨネーズ容器であれば、中身を詰め替えて再使用できないこともないが、この大砲の場合、砲身の寿命が短いと云う欠点がある。
 高初速ではあるが、元々弾丸が大きくないため、KV戦車には効果が期待出来ないのが、表から読みとれる。


 「37粍対戦車砲」は、これも有名な<35/36型3.7cm対戦車砲>(Pak35/36)を示している。
 「鋼心弾1325米」が何を意味しているかは不明である。初速と云う話であれば、745m/秒前後となるはずなのだが…。恐らくはタングステン入り40型徹甲弾(AP40)でのデータと思われる(ただしANTI−TANKでは初速1030米)。しかし40型徹甲弾であれば、距離200米で72粍(ANTI−TANKより、ただし角度不明)の貫通力があるので、この表での表記は、一般的な徹甲弾(39型)使用時のものと思われる。
 元々の表がいいかげんなのか、翻訳が出鱈目なのか、この資料だけでは判断のしようが無い。


 「38型5糎対戦車砲」は、天下のタミヤも出さなかった5cmPak38の事である。実戦投入された時期が悪く、帝国陸軍の47粍対戦車砲以上のマイナーな扱いを受けている。それでも敗戦まで使用され続けたとの事である。
 これの初速も40型徹甲弾でのデータらしい。資料では、40型徹甲弾を使用すると、距離500米で120粍を打ち抜く事になっている。この表も通常の徹甲弾使用時のデータなのか…。
 「弾量925瓩」と云うのは明らかに記入ミス。大砲本体に匹敵する弾丸をどうやって人力で装填すると云うのだ。初速を意味していると思われるが、これも参考資料と数値が微妙に異なっているのである。
(このあたりで、やばいなあ…と思う)


 「97型改造38型75粍対戦車砲」はフランス製野砲を改造したものである(通常PAK97/38と表記される)。どう贔屓目に見てもマイナー火砲にしか思えないのだが、ドラゴン社から、1/35のプラモデルがちゃっかりと発売されている。
 徹甲弾使用時で、距離500米で100粍装甲(歩兵兵器大百科より)を、900米で60粍(ANTI−TANKより)を打ち抜く。出版物のデータであれば、T−34はおろか、KV−1も撃破できそうなものである。表のデータが低すぎる。この「ポーラードング」弾と云うやつが曲者のようだ。初速も低いように感じられる。
(ここで墓穴を掘った、と思う)


 「40型75粍対戦車砲」は、有名な<7.5cmPak40>の事。ソ連製戦車に対抗出来る対戦車砲として期待の星である(当時)。ドイツ戦車のプラモを作り始めたモデラーが<なんとなく>買ってしまうキットとしても名高い(ホントか?)。
 距離500米、39型徹甲弾で、傾斜30度の89ミリ装甲板を打ち抜く(歩兵兵器大百科)。40型徹甲弾であれば、1000米で154ミリを貫徹する(ANTI−TANK、恐らくは垂直)。
 これだけの高性能火砲であるが、「ポーラードング弾」を使用すると、とたんに駄目大砲となり果てる。単純に火砲の性能だけでは対戦車火器の善し悪しを判断出来ないと云うオハナシである。
(書き始めたネタだ、どうにでもなれ、と思い直し、以下に続く)


 「備考」で鋼心弾の仕組みが解説されている。ゲルリヒ砲の原理そのものまでは解説されていないところに注意されたい(「激炸薬」と表現されている部分が、ゲルリヒ砲的ではあるが)。

 20ミリ重対戦車銃。通常は「2.8cm重対戦車銃(sPZb41)」と表記される。砲口での口径を重視したのか、帝国日本式に口径を小さく表記したものか、今となってしまっては歴史の闇である。(写真はANTI−TANKより)

 ドイツ対戦車砲三役揃い踏みの図(ANTI−TANKより)。左より、7.5cmPAK41、5cmPAK38、3.7cmPAK35/36。当然口径が大きいほど、大砲自体も大きくなっているのが理解できよう。すなわち、それだけ取り回しが面倒になると云う事でもある。
 37ミリ砲が、中国軍でも使用され、帝国陸軍戦車にとっては脅威となっていた事は覚えていて損はない。

 米軍に鹵獲された7.5cmPAK97/38。5cmPAK砲架に載せたものと7cmPAKの砲架に載せたものの2種類が存在する。「/38、/40」と云う記述がそれである。これは5cm砲架に載せたもの。(写真はANTI−TANKより)

 T−34。76ミリ砲搭載型と85ミリ砲搭載型があるが、これは76ミリ砲搭載型。頭が痛くなるほど実際にはバリエーションが存在する。モデラー向けの専門サイトもあるので、詳細について知りたい諸氏は、そちらをあたられたい。(「機甲」 昭和17年11月号より <テー・ウェーオー>と読み方まで書いてあった)

 本来であればKV−1の写真が入るべきところなのだが、手元に無いのと、今更KV−1でもなかろうと云うわけで、これを載せてみた。本文とまったく関係ない事は云うまでもないだろう。KV−1のカタチを知りたい、と云う方は、学研「ソヴィエト赤軍興亡史2」や、その他本屋で入手可能な戦車の本を読んで下さい。なんでもかんでもウェブで知識を得ようと云うのもどうかと私は思います(いいのか、そこまで書いてしまって)。「兵器商会」と云う名称が「兵器生活」で取り上げるのにピッタリだったので、ここに紹介する次第。

 この記述に一抹の怪しさが残る資料が云わんとする事項はただ一つ、「ソ連戦車は手強い」と云うことだけである。

 しかし、それで終わってしまったらわざわざ「兵器生活」のネタにする意味はまったく無い。いや、当初は日本軍も、そう云う情報を持っており、それにしては対戦車火器の充実が遅れてしまって、だから帝国日本は(以下略)…と云う内容にしよう、と思っていたのだ。
 しかし考えてみれば、そう云う解釈は列国の戦車情報ネタですでに書いてしまっていたのである。同じ結論を二度書くのは読者諸賢の望む事でもあるまい。

 だいいちそれだけならば、わざわざ高い金を払って「ANTI−TANK WEAPONS」などと云う洋書を買う必然性なぞありはしない。何故、一言で説明出来てしまう史料をネタにするのにここまで苦労しているかと云えば、表に出てくる「ポーラードンク弾」とは何か?と云う疑問を解消したいがためなのである。


 対戦車火器に詳しい読者諸氏は、「なんでアレが出ていないんだ」と思ったことであろう。そう、「成型炸薬弾」の事である。「ホローチャージ弾」とも云われるものだ。

 対戦車砲弾は、単純に云って2種類しか無い。「運動エネルギー弾頭」と「化学エネルギー弾」である。例えば、あなたが玉子を誰かにぶつけようとしているとする。ゆで玉子を投げつければ、「運動エネルギー弾」そのものである。相手は、「痛い!」と云うだろう。生玉子であれば、「冷てえ!」「気持ち悪りい」と云うに違いない。あなたが投げつけた物体の重さと、投げた時のエネルギー(初速)で相手に損害をあたえれば「運動」、生玉子の中身によって、相手に損害を与えるのが「化学」と覚えておけば印度総督府的に云えば70点である。

 鋼心弾とは何か、玉子の中に石を入れたものである。アタリマエの話だが、テニスの軟球をぶつけられて血を見るケースは少ない(たとえ痛くても)。しかし硬式野球のボールをぶつけられたら、ただでは済まない。投げた人が同一人物であってもである。タングステンが石の代わりをしているわけである。最近良く聞く「劣化ウラン弾」もその一味である。
(何故タングステンなの?と聞かれて答えられるほど主筆はかしこく無い。金属加工用機材に使用されるくらい、鉄より固く、重たいのがよかったのだろう、くらいの怪しい回答しか出来ない。もう少し詳細を知りたい人は、他をあたられたい)

 同じ重さの物体であっても、それが当たるまでの距離によって、当てられた方の被害が全然違う、と云う事も日常生活の中で、読者諸氏はご存じのはずである。
 夜中、あるいは白昼堂々と異性(あるいは同性)とけしからぬ所行に及んでおられる経験をお持ちの方々であれば明白であるが、人が人の上に乗っかっているだけであれば、暑苦しかったり、楽しかったり、(口には決して出してはいけないが)重たかったりするだけである。しかし、相方がプロレスリングのトップロープから落ちてくれば、相当のダメージを受けるはずである。ましてや東京都庁のてっぺんから落っこちてきた日には、あなたの命は無い。
 伝統的火砲が初速にこだわる理由がここにある。

 一方、うんちが付着した時はどうか?わざわざ東京都庁の上からぶつけなくても、握手をする際にいっしょに握りしめてしまえば、効果は充分ではないだろうか(云うまでもないが、うんちが付着するのはいやなものだ、と云う前提での文章は書かれている。スカトロ趣味の人は、そのへんわきまえてお読みいただきたい)。イヤガラセの効果を増やすには、うんちの量を増やす、これが「化学」の考え方である。

 「成型炸薬弾」とは、あるカタチに成型した炸薬がもたらす化学的効果を利用して、装甲版に損害を与えるものである。人間対うんちであれば、ブツをそのままくっつければ良いのであるが、厚い装甲版相手では、かような工夫をしないと少ない炸薬では効果が出ない、と云うだけの話である。
 一般的に、「マリリンでは無いモンローさん、あるいはノイマンさんが発見した効果」として知られている原理を応用したものである。これも参考資料がいろいろ出回っているので、詳細はそちらにゆずる。

 余談が過ぎた。私個人の知識では、この「ポーラードング弾」が、成型炸薬弾である可能性が高い、と云う事を感じてはいただけの話なのである。
 しかし確証が無い。元の表を見る限りでは、「ポ」か「ボ」なのだが、ドイツ語の辞書を見ても、それらしい言葉が出てこないのであった。

 現物を拡大したものがこれである。「ポ」か「ボ」かまで確認出来ないが、「ホ」ではなさそうに見える(でしょ?)。
 しかし、思いこみだけでページを仕上げてしまうのは折角の史料に対して申し訳が立たない。そこで同時期の文献を探して見たところ、以下の記述が発見されたのである。


 独軍の特殊爆薬に就て

 1.独軍は戦車「トーチカ」に対する肉薄攻撃特に装甲版及厚さ大ならざる「ペトン」壁の破壊に Hohlladung と称する特殊形状の集団爆薬を使用する。重量約50瓩にして外観は盃の如く半弓状の直径約50糎なり、其の内部は半弓状(直径約20糎)に爆薬を割り取り、信管は盃の台に相当する突出部に装着せられ。爆発威力は反射台の原理に基き空洞部中央に集中せられ厚さ5糎の鋼板に対し完全に穿孔し得。但し厚さ1米以上の「ペトン」壁には効果なし。

 1.英軍も此の種爆薬を使用す。

 「機甲」昭和17年11月号の記事である。
 ドイツの中空炸薬の紹介記事である。「重量約50瓩」と云う記述はかなり怪しい(50キロの爆薬をどうやってトーチカまで運ぼうと云うのだ?ドイツの15型中空炸薬の重量は13.4キロ、これなら話はわかる)。

 この記事を見つけた瞬間にピンと来たのも、「ボーラードング」問題を抱えていた賜である。普段であれば、見落としていたはずだ。辞書も引いてみた。「hohl うつろの、空洞の、くぼんだ…」(読みはホール) 「ladung 積み込み、積み荷、装填…」(読みはラードゥング)三修社「表音独和」の記述である。「ホール」「ラードゥング」を合わせると「ほーるらーどぅんぐ」、発音が変化すれば「ホーラードゥング」、日本的発音に直せば「ホーラードング」である。しかも、hohlは英語のhollowである、とまで書かれているではないか!つまり「ホローチャージ」と同一のものであったわけである。ちゃんと「ホ」と書けよ、陸軍…。
 余談であるが「反射台の原理」と云っているのが、「ノイマン効果」「モンロー効果」などと云われている原理の事である。

 こうして「ボーラードング弾」は「ホーラードング弾」の誤りである事が証明されたのである。「ANTI−TANK…」にも「Haft−Hohlladung」と云う記述がある事を無事発見したのである。ああよかった。

 「成型炸薬弾」と云えば、兵器ファン諸氏の間では、パンツァーファーストやバズーカ砲の砲弾として、「重戦車もやっつける無敵の砲弾」と云うすり込みがされているのであるが、表と「機甲」の記事では必ずしも「無敵」では無い印象を受ける。「成型炸薬使えばKV戦車だってイチコロなんじゃあないのか?」と云う疑問の声が日本全国読者諸賢から聞こえてくるようだ。

 ここで「うんち」の出番である(好きだねえ…)。先程、「効果を増やすには、うんちの量を増やす」と私は書いた。つまりこの時点での成型炸薬弾は、発展途上であったのである。米軍のバズーカ砲が2.63インチから3.5インチに拡大された事例をあげておけば、私の説にも少しは説得力が出るだろう。


 帝国陸軍が「タ弾」と云う成型炸薬弾を使用した事は有名な話である。が、本当に「無敵の対戦車砲弾」と云う受け取られ方をしたのだろうか…。今回のネタ表を見る限りでは、KV戦車には効果が無いとしか読みとれないのである。
 ドイツ軍が使用した成型炸薬弾の大きさは、パンツァーファーストの写真や37ミリ対戦車砲に装着されたものを見ればわかる通り、かなり太くて大きいものである(もちろん、小銃発射用の大きくないものもあるが、そう書かないと後に続かない)。一方帝国日本の方は、実用化されたものは、山砲用、野砲用は、元の砲弾と同じ口径にこだわっていたり、重戦車に対抗するのがしんどそうな小銃擲弾に走ったりと、この砲弾の価値を間違えてしまっているように思えてならないのである(もちろん外装式砲弾も存在している事は云うまでもない、しかし「大砲入門」光人社NFを読む限りだと、実戦投入されたようには読みとれないのである)。


 成型炸薬弾に関する雑誌記事が見つかったので、これも紹介しておこう。「軍事と技術」昭和19年2月号より

 1.新型対戦車兵器に就て

 (略)昭和17年夏独軍の使用し始めた対戦車用特殊弾は我が国も伝えられたが、世界を驚倒せしむるに足るものであった。当時独軍の主力装備たる対戦車砲がソ軍の重装甲戦車に対して効果なく、然も大口径対戦車砲の整備間に合わずして、これが攻撃には専ら高射砲の水平射撃に依らねばならぬときであったから特殊弾の出現は正に干天の慈雨にも譬えられるものであった。
 その構造の詳細に関しては発表すべき自由を持たないが、その原理は火薬瓦斯の圧力を弾丸の進行方向に集中する事によって鋼板を穿孔するものである。普通徹甲弾の如き大初速を要せず、低初速の火砲に簡単に使用し得る所が大きな特徴である。

 成型炸薬弾が、「夢の対戦車砲弾」になったのは、来日した昭和17年ではなく、ドイツで活躍しはじめた(と思われる)昭和18年を過ぎてからなのではないだろうか?

37ミリ砲に装着された41型成型炸薬弾。いちいち砲口に差し込むと云う手間が必要になったり、射程は短くなると云う運用上の欠点はあるが、本来の口径より大きな弾を使うメリットを優先している。(「軍事と技術」昭和19年2月号)

 パンツァーファーストを持つ兵士。ほら、太いでしょ?(「陸軍画報」昭和19年頃?)「至近距離から発射され、十糎以上の装甲版をも見事に射ち抜く」とある。

 帝国日本が世界に誇る「試製五式四十五ミリ簡易無反動砲。砲弾は試製5式穿甲榴弾。「試製」であるから実戦投入には至らなかったようである。(「日本の大砲」光人社NF文庫より。良い本です。読者諸賢は必ずこの本を新本で買うように)ごらんのように「和製パンツァーファースト」であるが、細い。

 そして再び表に戻る。「ソ連戦車は手強い」これは盟邦ドイツも認める事実である。しかし「手強いが、やっつける事は可能である」と云う事も忘れてはいない。
 一つは75ミリクラスの大型対戦車砲を使用する。そして鋼心弾や成型炸薬弾と云う特殊砲弾を使用するウラ技である。問題なのは、我が帝国にそれがあるのか、そして戦場に投入出来るのか、と云う事だけであった…。

 帝国日本のゲルリヒ砲は試験中で時間切れ。「タ」弾は間に合ったものの、当然戦局の挽回には至らず。通常兵器で勝てないと、どんなに特殊兵器を繰り出してみても、勝ち目が無い、と云う当然の結末であった。
 ゲルリヒ砲は、今でも珍兵器の関脇クラスの地位に安泰し、成型炸薬弾は見事通常兵器の仲間入りを果たしたのであった…。


 最期に。ちゃんと「ホ」と書いておいてくれれば、ここまで大事にはならなかったのに…。読者諸賢も資料の写し間違いには充分ご注意されたい。もちろん自分自身に対してもだ。

予想もしない内容になってしまった