(261) 涼風13型 成層圏爆撃機
湯川 利男 案
乗員 3名
発動機 星風5M型重油 1700馬力 2基
最大速度 740粁/時 (9000米)
巡航速度 650粁/時 (9000米)
上昇限度 18500米
常用高度 9000米
航続時間 12時間
武装 20粍可動機関砲 4門
爆弾搭載量 1200瓩
特徴 1.エンテ型を採用して高速化を計った。
2.遠隔射撃装置の装備により多数の射手を要せず、
その余剰搭載量
を航続距離の増大に向けた。
3.遠隔射撃装置はモーターを切換える事により前後
共一人で操作出来る。
但し同時に両方は操作出来ない。
内部構造図
1.20粍可動機関砲 2.機種球形砲架 3.自動操縦装置
4.高空用酸素管 5.無電機械
6.遠隔射撃照準塔(上下滑動)
7.落下傘ケース
8.後部砲架 9.爆撃照準席 10.発電室
11.モーター 12.爆弾搭載室 13.照明弾
「空」 S15.9
石田一郎の批評 (S15.10)
遠隔射撃装置の様式には少なからず教えられる。射界の自由な処に火器を置き、見透しの利く処に射手が居て照準通りに操作が行われる。厥(註:「それ」と読ませたいらしい)が連桿によって巧みにからえられて居る具合がよく判る。恐らく作者の創案によるものであろう。
然し不備な点も多い。まず後下方の照準が出来ない。又前後交互の襲来が絶えずあるとすれば一人の射手では荷重であろう。そして入神的機微を必要とする射撃がこの様な装置に隔てられて的中率を非常に失われる事になるであろうと云う事である。
従来無尾翼機が多く見られたが、最近はエンテ型の研究に変わって来たかの観がある。エンテ型も一種の無尾翼機なのであり、飛行原理を同じうする。只前小翼の独立附加によって飛行性が良致確実になるものと考えてよい。
爆弾を主翼下に装備するのはよいとしても座席を全部前方に位置せしめたのは機を前重ならしめ不安定を逃ない。エンテ型の場合は重心点を主翼前縁に置く様に考えるべきだ。
成層圏飛行機の問題は長距離機の事でサロン(註:読者投稿欄のこと)でも屡々論ぜられたが、難しい故か夢には却々出て来ない。若し之ありとせば渡洋爆撃の際も長時間洋上を台風に翻弄せられずとも済む訳である。又東京を立って新京或いは南京と一気に直達しようとする将来の第一線機は当然この式になるべきものであろう。
成層圏機は長距離が利き高速に有利な事だ。経済的巡速600粁/時は可能であろう。普通機は安全な着陸速度を得んが為に実際飛行の場合は4とか5の値少ない揚抗比で飛ばねばならぬ不利がある。それが非常な無駄損失である訳だ。而るに成層圏は空気密度が減ずる為に最大揚抗比で飛び続ける様設計が出来る。
此処に成層圏機の魅力があり醍醐味がある。どうかこの辺の空気力学に了解がゆく様になって頂きたいものだ。
成層圏機は先ず過大な馬力を必要とする。燃料を満載した離陸時にあっては翼面荷重も大になる故、スロット翼やフラップ翼装置も欠く事は出来ない。そうした場合にエンテ型機も華々しく登場して来る事になろう。又愚生の主唱する普通機に前小翼を附加した折衷機の類等種々と工夫の分野は開けて居る。
総督のお詫び
本来この案は、別ページに全体図があったようで、コピーの際に見落としてしまっていた。追って増補したい。
B−29でおなじみの遠隔射撃装置である。日本の飛行機ファンもやるものである。重油発動機と云うのも時局を反映して面白い。乗員を削減し、その分航続距離を稼ごうと云うあたりも日本的発想と云える。この情報だけでは与圧室を備えているのか判断出来ないが、何も記述が無いところでは、やはりそこまで考えが到らなかったのであろう。まさに日本的である。爆弾搭載量が1.2トンと云うのが悲しい。
それにつけても石田一郎(笑)。遠隔射撃装置を否定したら軍艦の対空機銃の立場はどうなってしまうのだ!これもまた日本的と云えるのだろう…。