266単発単座戦闘機

(266) 単発単座戦闘機
      6日の菖蒲  案

 ○本機はアメリカ800粁/時戦闘機に対抗之を凌駕すべく設計されしものにして、極力翼面積縮小を計れり
 ○双発機と同等の視界を得、及び操縦席広潤ならしむる為発動機を中部、プロペラを後端に設けたり
 ○推進式による横振れを主翼先端の起倒式、垂直安定舵、又は主翼に約26°の後退角を附して之を防止す(且同時に約0.54平米翼面積が減少する)
 ○ギヤにより駆動するサヤマ式フラップにより、その翼面積を約2.34平米増加する(翼上面に沿い滑動す)
 ○図解は単に図示に止まり、実際構造を示すものではない

 発動機  液V12 1400馬力(又は液X24 2500馬力)
 全長    7.15米
 全幅    7.54〜7.00米
 翼面積   11.16平方米〜8.18平方米
 全備    2000瓩
 最速    700(または800)粁/時
 武装    砲1、銃4、または砲3

 「空」S15.10

石田一郎の批評(S15.11)

 アメリカの新試作戦が800粁/時出したからと云ってもそれは条件の良い相当の高空で而も多少の舵加減によって得られた速度である訳で決してメッサー機の記録等とは比較すべきものではない事を銘記すべきである。
 本図は少なからず熱心に書かれて居るが、残念乍らその新工夫とする所は荒唐に属する。
 先ず三車輪の場合は双輪を主翼に位置せしめねばならぬ。それから尾翼背後のプロペラも操舵の度毎に振動や効率低下をなす事と思われる。

総督コメント

 こう云うのを「埋もれた天才」とでも云うのだろう。ついに「可変翼」の登場である!ついでに翼端を折り畳んで垂直安定を得ようとまでしている。昭和15年時点では確かに「荒唐無稽」以外の何物でも無いだろう。市井の一青年? がどうやってこの発想にたどり着いたのか、タイムマシンがあれば一本下げて遊びに行きたいくらいである。

 機体の形状はもはやジェット機のそれである。機首周りはスーパーマリンスイフトあたりを連想させるくらいである。

 「時速800粁/時戦闘機」が何をさしているのか、手元の史料が取り出せ無いので確認は出来ないのだが、多分P−38かP−39あたりを指しているものと思われる。「時速800粁/時」がフカシであったことは歴史が証明しているわけだが、欧州で戦争が行われている時期での情報は、深刻なものだったのだろう。「ソ連がマッハ3級の戦闘機を配備した」というようなものである。


 石田氏には悪いが、こういうネタが出てくると、紹介している甲斐があると云うものである。

 「6日の菖蒲」と云うペンネームが時代を感じさせる(笑)。


戻る