怪しい商品カタログ@



 山本夏彦の「私の岩波物語」で、さんざ広告の話が出てきたので、広告ネタを少し。例によって画像が大きいので、心するように。


スペルマ療養器

 「実業之日本」S13.7より。本文にいわく(原文は旧かな)

 スペルマ療法器は生殖器機能に科学的栄養を与え、生の根本たるホルモン内分泌を旺盛ならしめ、先天的或いは少年時代の不自然的悪癖、過度の精力乱費その他に原因する、一般性的機能障害、陰萎、早漏、違精、夢精等に強度の神経衰弱をも併発し、脳力体力衰弱し、結婚前の青年や、冷ややかな家庭生活を悲しむ人々に、物理的にも生理的にもまた治療医学の見地からも、全く間然するところなき新発見の治療器であります。本機は、一器にして、マグネチック、ヴァイブレーション作用、酸素気化瓦斯発生作用、適度の保温作用等を極めて合理的に総合せしめたもので、使用法簡便、破損や付属品取換え等の心配なく、永久使用に耐え、真空及び水治作用を応用せず、副作用の憂いもありませんから安心して使用できます。


 価格は荷造り及び送料込みで、内地13円50銭。海外(日本領除く)は10米ドルである。ちなみに掲載紙の「実業之日本」は定価70銭。かの有名なエヂソンバンドは2円である。現在の邦貨にしていくら位になるのか分からないが、安くは無いのだろう。
 ちなみに佐貫先生の「ドイツカメラの本」(小学館文庫)中に「昭和12年初版の(略)ライカVA型(クロームライカ)エルマー3.5/5センチが660円と出ている。私の月給は120円くらい(以下略)」とある。佐貫氏が日本楽器でプロペラ技術者として活躍するころだと思うから、技術職の読者は自らの俸給を基にスペルマ療養器の価格をイメージしてみるのも一興であろう。

 この手の経済誌でもかつてはこのような広告が堂々と掲載されていたのである。経済雑誌のステータスは低かったのであろうか。

 この広告が掲載されていた号の特集は「長期戦下のオール対策」と銘打って、サラリーマンの生活対策、中小商工業者の対策、販売・宣伝の対策 等の特集記事が組まれている。いずれこのあたりのネタは取り上げる予定である。今回はその触りとでも思っていただきたい。



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