自分の死に際して、大事だと思うことについての国際意識調査の結果を掲げた。この調査を実施したのは、英国のエコノミスト誌と医療のついての米国のNPOであるカイザー家族財団である。同じ調査から最期を迎えたい場所についての回答は図録1514参照。

 7つの事項のうち、最も大事だする考える者が多かった事項は、日本と米国では、「家族に経済的な負担をかけないこと」であった。米国は医療費そのものが高額な点がこれが一位となっている理由であり、日本の場合は、お墓の費用の高さなどが理由となっているものと考えられる。

 これに対して、イタリアでは「愛する人びとに囲まれた最期」が、ブラジルでは「精神的に平穏でいること」が一位となっている。

 概して、いずれの国でも、自分の安寧(A、B、D、E、F)だけでなく周囲の人びとにも苦しみや負担を掛けないようにしたいという事項(@、C)への回答率が高くなっているのが印象的である。

 一方、一番、回答率が小さかったのは、各国とも、「なるべく長く生きること」だった。もっとも、ブラジルは、この点についての回答率はそう低くなく、「家族に経済的な負担をかけないこと」も同率でやはり最下位だった。

 このように、自分の延命よりも周囲を含めて苦しみがないことの方を優先する考えが強いことがうかがわれる。

 日本人の回答は「なるべく長く生きること」を大事にする回答が17%とブラジルの70%だけでなく、米国、イタリアのそれぞれ47%、41%と比較しても、極端に低い点が目立っている。

 宗教的な環境の違いが影響している点がエコノミスト誌(2017年4月29日号)によって指摘されている。

「ブラジルはその他の国と比べてカトリックが多い。生命は、多少大胆な手段を講じてでも、なるべく長く延ばすべきだという教会の従来からの主張に影響されている人が多いと考えられるのである。米国などでの法廷闘争で、家族が半永久的な植物状態にある患者から栄養チューブを取り除こうとして時に教会はしばしばこれに反対してきた(もっとも今では、処置を拒絶する患者の意思や苦痛からの解放を早める死ではなく、死を早めるだけの処置のみを避難するようになっているが)。米国やイタリアのそれぞれ50%、46%に対して、ブラジル人の83%が終末期医療について考えるに当たって宗教が主要な役割を果たしているといっている」(下図参照-引用者)。


 この他、エコノミスト誌は、医療環境の充実度が低い点もブラジルの「なるべく長く生きること」に対する回答率の高さに影響している点も指摘するのを忘れていない。なかなか適切な医療を受けられない社会では、克服できる病気でもそれを克服すること自体が大変なのである。

 日本人はキリスト教的な延命の思想がなく、むしろ、仏教的な諦観の影響がある上に、医療環境的に恵まれているため、みすみす延命できない状況に置かれたくないという気持ちは少ないため、「なるべく長く生きること」を大事にする回答が2割以下と少ないのであろう。

 なお、「なるべく長く生きること」ほどではないが、「愛する人びとに囲まれた最期」や「望みどおりの医療が確実に受けられること」についても、日本人の回答が他国と比べて低い点も興味深い結果である。生への執着の薄さなのか、死を前にした諦観(あきらめ)なのか、議論が分かれるところであろう。

(2017年6月19日収録) 


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