日本人の体格の変化を男女年齢別に追った図録2200では女性がスリム化、男性が肥満の方向に真逆の変化をしていることが確かめられた。これが、日本人だけの傾向なのか、世界共通の傾向なのかを探るため、WHOのデータベースにより、男女別のBMI(体格指数、体重(kg)÷身長(m)の2乗)を1975年からたどったグラフを世界15カ国について描いた。日本の肥満と痩せのBMI基準値を参照のためにグラフに示した。なお、国際基準の肥満の基準値はBMI=30と日本の基準値よりも5も高い。最新年のデータだけからの分析は図録2201参照。

 この図からは、世界各国で痩せ(スリム)の状態から体格がだんだんと良くなり、それが行き過ぎて肥満化に至っている場合もあるという大きなトレンドが見て取れる。

 と同時に、BMIの水準や上昇の時期、男女パターンの違いから各国が様々な推移をたどっていることも分かる。各国の推移を思い切って分類すると以下の4つに区分できる。

@アングロサクソン型(米国、英国、オーストラリア)

 男が女をやや上回り、しかも男女ほぼ平行してかなりの肥満化の方向をたどっている点が共通である。この3国ではかなり以前から男女ともに平均値が日本基準の肥満となっている。英米の肥満者割合の推移については図録8800参照。

 体格の推移でも男女平等を具現している点が欧米文化圏の中でも特異である。これと関連して、自殺の男性超過率が低くなってきているのもアングロサクソン系の特徴である(図録2759参照)。

A日本・欧州型(日本、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、シンガポール)

 当初の男女同レベルから、だんだん、男肥満化、女スリム維持の傾向をたどっている点が共通である。

 1970年代からこうした傾向が深まっている点で日本とフランス、イタリアは似たパターンだが、日本は、BMIの水準が格段に低い点や女性のBMIが低下にまで至っている点で異なる。日本は日本・欧州型を極端にまで推し進めたかたちともいえる。

 ドイツは女性も日本基準の肥満以上にBMIが上昇している点ではアングルサクソン型との中間型ともいえる。

 BMIのレベルの全体的な低さと女性のBMIの低下にまで至った点は日本とシンガポールとで似ているが、シンガポールが日本・欧州型になったのは1990年代からに過ぎない点が異なる。

B中国・韓国・インド型

 男女が同じように非常に痩せている状況から、経済発展とともに、男女が平行して体格改善(BMI上昇)。ただし、その後、韓国、そして少し遅れて中国は、男ばかりが目立って肥満に近づいているという点で、日本・欧州型に移行している。

Cその他

 共通パターンとは言い難いが、ロシア、ナイジェリア、メキシコでは、女より男の方がスリムなまま推移している点が共通である。ロシア、メキシコでは女性が目立って肥満傾向である。ロシアは1990年代に、一時期、BMI推移が横ばいとなったが、これはソ連崩壊後の社会混乱による影響とみられる。

 以上が上の図の15カ国のデータから見て取れる世界の状況であるが、もう少し、サンプルの数を増やしたいところである。そこで、以下には、さらに別の15カ国のデータを同じようにグラフにしたものを掲げた。

 次のセットの世界15カ国を見渡すと、女性が男性よりも太めで男女ともに肥満化の方向をたどっている国が多数を占め、男と女がだんだんと肥満と痩せとに両極化して来る日本・欧州型のパターンがあてはまるのは、スイス、スペインぐらいである。日本・欧州型は、決して、世界一般のパターンではないことが分かる。

 原資料である世界189カ国のデータベースを調べると、女性BMIの低下傾向が認められる国として、BMI25以上水準では、バーレーン、チェコ、パラオなどがあるが、これは太りすぎの是正が実現したケースである。スリム化の徹底というパターンがあてはまるBMI25未満水準では、最初の図の日本、シンガポールとここで掲げたスイスの3カ国のみである。

 ギリシャは、ヨーロッパ文明発祥の地として、ヨーロッパの一部と見なされる場合が多いが、体格の動きとしては、最近、日本・欧州型に近づいてきたに過ぎないような感じである。やはり、民族的にトルコの影響が大きかったのではあるまいか。EU圏、ユーロ圏の一国として経済的な不適合を起こした背後にある文化的な風土の違いもうかがわれる。

 イスラム諸国であるトルコ、バングラデシュ、インドネシア、エジプトでは、ほぼ、共通して、女性の方が太めである。特にトルコ、エジプトでは、肥満化の傾向が著しい。また、貧困が深刻だったバングラデシュでは、かつて、女性の痩せが目立っていた時期が長く続いていたので、女が男より太めになったのは最近になってからである。

 ウクライナについては、女が男より太めで、1990年代のソ連崩壊後の混乱期に体格も停滞的だった点でロシアに似ているが、男女にそれほどの違いがなく、最近は男女が逆転しているという点でスペインやギリシャに似た動きも見せている。体格の動きにおいても、ウクライナは、旧ソ連圏とヨーロッパの中間的な性格が感じられる。

 インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンといった東南アジア諸国は、もともとスリムな身体(特に男性)が特徴であり、男女ともにBMIは上昇しているが、肥満化にはまだ間がある状況にある。ベトナム人がとくにスリムである点が目立っている。中国、韓国といった東アジア諸国と異なり、日本・欧州型の動きは見られない。

 アフリカのエジプト、南アフリカ、エチオピアは、BMIの水準が肥満から痩せへと非常に異なているが、女性の方が太めな点は共通である。南米のペルー、ブラジルも女性が太めのまま男女平行してBMIが肥満へと向かっている。

(2017年3月29日収録、3月30日コメント補訂、3月31日別の15カ国のグラフ追加、4月1日スウェーデンを第一の図のデンマークに代え、第二の図にはスイスを新規採用)


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