(はじめに)

 世界各国の生活の状況は家計消費支出として何に多く費やしているかの状況からある程度うかがうことができる。

(原データについて)

 各国の家計調査は、原資料の収集の困難を別にしても、対象、定義、区分がまちまちなので結果を相互に比較することは難しい。このため、SNA(国民経済計算体系)は、国連の推奨する方式で比較的統一が図られている。ここでは、SNA上の家計消費支出で国際比較を行った。

 対象国は、日本、米国、カナダ、オーストラリア、英国、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、メキシコ、インド、スリランカの19カ国である。OECD、及び国連(UN)のSNA統計書に掲載されていて、図の支出項目が調べられる国をなるべく多く取り上げた。

 SNA上の家計消費支出の住宅費(住宅・光熱)には、財産取得経費である住宅購入費は含まれない点では家計調査と同じであるが、家計調査と異なって帰属家賃が含まれている。帰属家賃とは持ち家に対して自ら家賃相当分を支払っているとする考え方であり、いわばすべての人が住宅ローン返済を抱え、それが支出に含まれているようなものである。各国の住宅費のおおむね4〜7割が帰属家賃である。

(食費)

 従って、消費支出全体が家計調査より大きくなっており、他の支出項目の構成比は相対的に小さくなる。例えば、日本の飲食費(アルコール、たばこを含むが、外食は「外食・宿泊」に含まれる)の比率は、17.5%であり、家計調査における飲食費の割合(エンゲル係数)の23%(図録2350参照)より小さい。(なお、日本の家計調査と同じ定義でOECD諸国のエンゲル係数を図録0212で比較したので参照のこと。)

 こうした点を前提に、他国と飲食費比率を比較すると欧米先進国では10〜17%程度となっており、それほど大きな差はない。一方、途上国では、インドが37.1%、スリランカが41.5と4割前後となっているほか、タイが31.5%、メキシコが26.9%とやはり経済が発展すると食費の比率が下がるというエンゲルの法則どおり高くなっている。

(被覆・履物費)

 先進国の中では、イタリアが8.0%と最も高い割合を示し、日本が3.6%と最も低い。イタリアの高さはイタリア人がおしゃれであるためであろう。日本の低さは服に余りお金をかけないという面もあろうが、むしろユニクロのような一定の品質の低価格商品が普及しているためであろう。途上国ではマレーシア、メキシコのように3%前後の低い国もあれば、タイやスリランカのように8〜9%と高い国もある。

(住宅費)

 次ぎに住宅費であるが、日本の住宅費は24.6%と、北欧のスウェーデンの26.9%、デンマークの26.5%、フランスの24.9に次いで高くなっている。欧米先進国では2割を超える国が多く、途上国のタイが7.6%、スリランカが8.8%、インドが11.8%と1割前後と小さい値であるのと対照的となっている。

 なお、米国は次に述べる医療費の高さに圧迫されていることもあって食費、住宅費の比率自体はそれぞれ9.0%、17.4%と低い。

(保健・医療費)

 家計消費支出の中で特徴的な違いが目立っているのは保健・医療に関する支出である。ここで保健・医療費には、医療費の他、健康グッズや市販薬、紙おむつ、メガネなどが含まれている。(私的公的負担を含めた医療費の対GDP比は図録1900参照)

 米国の医療・健康費が19.0%と際立って高くなっているのは、社会保険としての医療保険が発達しておらず、もっぱら私的医療保険に依存しているからであり、しかも医療費の対GDPが16%程度(2007年)と10%を大きく上回っている唯一の国であるため、家計に占める負担もことさらに大きいのである。住宅費を上回る支出規模となっていることからその負担感がしのばれよう。

 93SNA(93年のSNA算出方式)で計算している他の国では、税負担や社会保険負担による医療費支出は含まれていないので、家計の医療・健康支出は医療費の対GDP比率の半分以下の比率となっている。

 ゆりかごから墓場までで他国に先駆けた英国では、その後、財政改革を迫られたが、なお医療サービス供給が基本的に政府によっているので家計負担は1.6%と極端に小さい。英国の医療問題は財政問題と財政緊縮からもたらされた受診待ち時間の長さであった。

(交通・通信費)

 交通・通信費は、自動車の購入・維持管理費用が大きな部分を占めている。クルマの価格、ガソリン・駐車場料金などの総合コストが問題であるが、日本は14.1%と米国の次ぎに低い値となっている。自動車普及率の低いタイ、インド、メキシコ、スリランカといったといった途上国では自動車費用は低いが公共交通機関の料金支出が高いため合計ではそう低い値となっていない。

(娯楽・文化)

 先進国ではおおむね10%前後と他の支出項目と比べて差が小さい。一方、途上国では娯楽・文化への支出金額は概して小さい。インドが最も低く1.8%である。先進国の中ではイタリアと韓国が何故か娯楽・文化費が小さい。お金をかけずに楽しんだり情操を育んだりする気風なのであろうか。

(教育費)

 教育費の構成費が群を抜いて高いのは、韓国の6.3%である。この他では、メキシコ、米国、オーストラリア、日本などが2〜3%で続いているが、これらの国では学校教育費の家計負担(対GDP比)が高い国が多く(図録3950参照)、その影響であろうと考えられる。北欧諸国などヨーロッパでは教育費の公的負担割合が高く、家計支出における教育費の構成比は非常に低い国が多い(1%未満の国も多い)。

(外食・宿泊費)

 英国が最も高く10%を越えており、イタリアが9.9%でこれに次いでいる。

(2004年8月17日収録、8月20日改訂、2009年11月21日更新)

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