2008年の自殺者数については、人口動態統計(概数)でも3万人を越えたことが明らかになっていたが、新聞等で注目されたのは、警察発表の数字であった。2008年については、警察発表の数字で11年連続3万人台が報じられたのである。

 理由としては、(1)後に発表される数字の方が最新のイメージがある、(2)警察庁発表の方が数字が大きい(2008年であると11年連続3万人台と分かりやすい)、(3)警察庁発表は、年齢別の他、職業別や原因・動機別といっった人口動態統計では得られない情報が存在しており、記事や話題として取り上げやすい、などが考えられる。

 統計結果を分析用の情報源として多用する者は、人口動態統計が調査統計であり、しかも指定統計であり、統計基準・定義、調査方法、公表義務に関して明確になっているのに対して、警察庁資料は業務統計であり、定義、方法等が余り明確でなく、当局の恣意が入る可能性があることから、前者を重んじる傾向がある(人口動態統計と警察庁業務統計との相異についてはこのページ末尾参照)。この図録でも人口動態統計を基本としているのは同じ理由である。しかし、一般によく引用されるデータについては検証しておきたい。また、人口動態統計では得られない職業別の結果は見てみたい。そこで、ここでは警察庁の発表データを取り上げた。

 まず、総数ベースの両統計の結果数字の比較であるが、1980年代後半から警察庁データの方が人口動態統計を上回る傾向が見られる。

 もっとも両者の推移はほぼパラレルに推移しており、信頼性は高いと判断できる。

 職業別の自殺者数を見ると、もっとも多いのは、失業者と高齢退職者を含む「無職者」であり、「被雇用者」、「自営者」がこれに続いている。

 1998年の自殺者急増については、いずれの職業も急増しており、失業者数の急増とパラレルな動きだったとはいえ、必ずしも失業者だけの問題ではなかったことが分かる(図録2740参照)。下表の通り、この時期の経済変動の自営者への影響は非常に大きかったと見られる。

1997年から98年にかけての
自殺者数増加率
34.7%
無職者 31.7%
被雇用者 39.7%
自営者 43.8%
主婦・主夫 22.5%

 職業別には、かなり細かい分類で自殺者数が発表されているので2つ目の図に示した。無職者の中では、失業者は1,890人と主婦の2,3493人より少なくなっており、印象より少ない。むしろ高齢者を中心とするその他の無職者が多くを占めている。被雇用者の中では「事務員」が902人と多い。警察がデータを収集するときの職業区分の仕方が気になる。なおこの職業分類は2007年から改訂となっており前年までと厳密には接続しない。

 自営者の中では、その他自営業を除くと農林漁業が717人で最も多いが、農家の場合は高齢者でも職業を継続している者が多いためであり、高齢者一般の理由から自殺が多くなっていると見なすべきであって、農林漁業が自殺の多い職業とは簡単にはいえない。

 学生・生徒では小学生が9人いるのはやや驚きである。

(自殺数に関する人口動態統計と警察庁業務統計との相異)

 厚生労働省の自殺死亡統計資料に自殺数に関する人口動態統計と警察庁業務統計との相異に関する記載があったので以下に転載する。

 警察庁のまとめた「自殺の概要」の自殺者数と厚生労働省のまとめた「人口動態統計」の自殺死亡数の差異は下記によるものである。

 1  調査対象の差異
 警察庁では、総人口(日本における外国人も含む。)を対象としているのに対し、厚生労働省は、日本における日本人を対象としている。

 2  調査時点の差異
 警察庁では、発見地を基に自殺死体発見時点(正確には認知)で計上しているのに対し、厚生労働省は、住所地を基に死亡時点で計上している。

 3  事務手続き上(訂正報告)の差異
 警察庁では、死体発見時に自殺、他殺あるいは事故死のいずれか不明のときには、検視調書または死体検分調書が作成されるのみであるが、その後の調査等により自殺と判明したときは、その時点で計上する。これに対し、厚生労働省は、自殺、他殺あるいは事故死のいずれか不明のときは自殺以外で処理しており、死亡診断書等について作成者から自殺の旨訂正報告がない場合は、自殺に計上していない。

(2004年9月8日収録、05年1月29日人口動態統計と警察庁業務統計との相異について追加、2006年6月23日更新、2008年7月7日更新、2009年9月28日更新)

関連図録
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