退職金の額(退職年金の現在価値換算額を含む)の推移を図示した。資料は厚生労働省の就業条件総合調査(以前の名称は賃金労働時間制度等総合調査)であり、退職制度や退職給付額についてはほぼ5年ごとに調査している。

 2007年の実績を調査した2008年調査結果によると、大卒ホワイトカラーの退職給付額は、2,026万円と10年前の2,868万円から800万円ほど減少した。この大きな減少幅が注目され、老後の生活不安を増すものとして新聞各紙も取り上げた。例えば毎日新聞2008.10.8では「サラリーマンの老後を支える退職金が目減りしている実態が明らかになった。」と論評している。

 1993年以降の学歴・職種別の推移をグラフにしてがこれを見ると単なる目減りとは異なる側面も見えてくる。大卒ホワイトからの退職金はピーク時から約3割減であるが若年勤労者や高卒ブルーカラーなどとの所得格差は縮小している。

 高校卒と比較しながら1993年からの推移を追ってみると、1997年の大卒ホワイトカラーの退職給付額は高すぎたのではないかという印象が否めない。

 1990年代後半は終身雇用慣行の見直しが進んでいた時期である(図録3800参照)。しかし、賃金制度、退職金制度の見直しはなかなか進まず、企業を勤め上げた大卒勤労者への退職金は高額にのぼっていた。就業者の高年齢化も踏まえ、年功賃金をフラット化し、退職給付を毎年の給与そのものに振り替えることが課題となっていたのである。

 そこへ、97年秋の三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券と立て続けの大型金融破綻事件がおこり、経営に対する危機感の中で一気に制度の見直しや中高年賃金・退職金水準の引き下げが国全体で進んだのではないかと思われる。そしてそれが高卒ホワイトカラーへ遅れて波及したと考えられる。リストラの進展は単に雇用調整だけでなく、こうした面での給与見直しが大きかったのである。

 所得格差の推移が1990年代後半以降、むしろ、格差縮小の方向に向かったことを図録4663でふれ、これが年齢格差の縮小によるものではないかという分析を行った。この図からは高額退職金を手にできる人間とそうでない人間との所得格差が1997年頃を境に小さくなったことがうかがえる。

 実際のところ、もともと水準が相対的に低かった高卒ブルーカラーの退職金レベルは、漸減傾向ではあるもののそれほどの変化ではないのである。ピーク時からの減少率は、大卒ホワイトカラーが29.4%、高卒ホワイトカラーが25.7%であるのに対して高卒ブルーカラーは13.0%である。

(2008年10月9日収録)

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