学校教育費の対GDP比を公的負担と私的負担の内訳を含めグラフにした。塾、家庭教師などの学校教育以外の費用は含まれていないので、教育費の総てではない点は注意しておく必要がある。

 対象国は、合計の値の高い順に、アイスランド、韓国、デンマーク、ニュージーランド、米国、イスラエル、チリ、スウェーデン、ベルギー、フィンランド、アイルランド、フランス、エストニア、メキシコ、オランダ、カナダ、英国、オーストラリア、スロベニア、ポルトガル、オーストリア、ポーランド、スペイン、ロシア、ドイツ、日本、イタリア、チェコ、スロバキア、インドネシアの30カ国である。この他、公的支出のみのデータ計上国は、ノルウェー、ブラジル、スイス、ハンガリー、南アフリカ、インドの6か国である。

 韓国は私的負担の高さが3.1%と目立っており、これが合計の学校教育費での第2位に結びついている。韓国の場合、学校教育費の他に、塾や家庭教師の私的負担もこれに加えて大きいといわれる。米国、チリ、そして日本も、韓国ほどではないが、私的負担の割合が高い。

 米国、韓国と並んで、アイスランド、デンマーク、スウェーデンといった北欧諸国の学校教育費比率の高さが目立っている。これらの諸国の場合は公的負担がほとんどである。

 日本は第26位と学校教育費の対GDP比の水準は低い。ただし、私的負担の比率は対GDP比で1.7%となっており、低くはない。逆に公的負担の比率は3.6%と低く、対象国の中でインド、インドネシアを除くと最下位となっている。最近では格差社会論などとの関連で、教育費の社会保障的な側面、すなわち貧乏人でも良い学校へ行けるという機会の平等が日本では失われてしまっている証左として、こうした学校教育費の公的負担割合の小ささがあげられることが多い(広井良典「持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想」ちくま新書、2006年、p.25、橘木俊詔「格差社会―何が問題なのか」岩波新書、2006年、p.180)。

 なお、教育は、こうした社会保障的な側面というより、従来からは、社会あるいは個人の投資としての側面が重視されてきたが、教育費の高さが、各国の教育に対する熱心さ(重視度)、あるいは教育投資の程度をあらわしているといえるとしても、教育投資の効率が分からないので、実質的な教育投資の程度を必ずしも反映しているとは限らない。

 社会保障費は高齢化比率と比例しており、ただでさえ社会保障費が少ない日本は高齢化比率を考えに入れると一層社会保障費の少なさが目立っている(図録2798)。それでは、学校教育費は年少人口比率と比例しているはずであり、その点を考慮すると日本の教育費は多いのか、少ないのか。これを見るため、下に、年少人口比率との相関図を描いた。OECD諸国の中でもメキシコやトルコといった低所得国、あるいは高所得国の中でも特段の出生率促進政策をとっているイスラエル(図録1025)を除いた。



 これを見ると、学校教育費の主な対象となる年少人口(0〜14歳人口)の比率との相関では、日本の学校教育費はそれほど少なくないといえる。むしろ、チリやアイルランド、スロバキアといった国の方が年少人口との相関では教育費支出が少ないといえよう。逆に韓国はただでさえ多くを教育費に支出しているが、年少人口比率との相関ではデンマークと並んで世界の中でも最も熱心に教育費にお金を注ぎ込んでいるということがわかる。米国の教育費比率が案外高いのも年少人口比率が比較的高いからだということもわかる。

 文部科学省は学校教育費が冒頭の図のように先進国の中でかなり低い水準である点をあげて、教育費予算の増額を要求しているが、財務省から、学齢人口1人当たりではそれほど低いわけではないという資料を突きつけられて、なかなか先進国並みの少人数学級を実現するのに十分な予算獲得に至らない状況にある。日本のような「小さな政府」で(図録5194)、高齢化が進んで社会保障費が増大し、それでも社会保障費は高齢化比率との見合いでは先進国並みには確保できていない現状(図録2798)を理解した上で、ここで掲げた散布図を見ると財務省の言い分にも一理があるといえよう。

(関連図録)

 教育費の私的負担の比率は家計消費支出の中の教育費負担の状況に影響している(図表2270参照)。

 また、韓国の私的教育費負担の高さは、韓国の非常に低い合計特殊出生率の1要因であるといわれる(図録1550参照)。

 さらに、少子化対策と合わせて教育費の公的負担が、年金、福祉など高齢者対策に比して高い国ほど出生率が高く、逆に高齢者対策のみが大きくなると子育てを逃れる者(フリーライダー)が増えて出生率が低くなるという点(日本が典型)は図録1587参照。

(2004年8月18日収録、2005年7月20日更新、2006年10月13日更新、2007年9月20日更新、2009年5月8日更新、2011年10月10日更新、2012年1月3日更新、2013年7月27日更新、2014年8月23日年少人口比率との相関図追加)

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関連図録
1025 避妊実施率と出生率との相関
1550 合計特殊出生率の推移(日本と諸外国)
1570 教育費の高さと合計特殊出生率の相関(都道府県データ)
1587 高齢化対策に対する教育費公的負担を含む少子化対策の相対ウェイトと出生率(先進国間比較)
2270 家計消費の国際比較
2798 社会保障給付費の国際比較(OECD諸国)
5123 保育・幼児教育への公的支出の国際比較
5194 大きな政府・小さな政府(OECD諸国の財政規模と公務員数規模)
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