日本の現金依存度は世界一だということが日銀のレポートに基づいて報道された(日経2017年2月21日、毎日2017年3月5日)。ここでは日銀レポートの原資料となった国際決済銀行(BIS)のCPMIメンバー国に関する統計表から日本の現金依存度とカード決済の普及度をグラフにした。

 日本国内で流通する現金(銀行券と硬貨)の対GDP比率は2015年に19.4%であり、米国に比べ約2.5倍、最低のスウェーデンの約11倍となっている。

 日本人の現金依存度が高いのは以下の理由によると考えられている。

カード支払いより現金支払いを好む(カードによる使い過ぎの心配など:下図参照)
超低金利の中、自宅に現金をたくわえる「たんす預金」が増えている
偽造や盗難などのリスクが低い日本では「現金に対する国民の信頼度が高い」(日銀)(毎日新聞同上)

 インドでは、個人の指紋と識別番号をデータベース化する政策に加えて、昨年、高額紙幣を廃止して、これと連動した電子決済を国民に促した。IT時代に対応したキャッシュレス社会の実現で公共サービスを効率化し、同時に、脱税を防止するためである(毎日新聞2017.5.5)。日本では、こうした国家による個人管理に対する国民の抵抗が強い、あるいは納税意識が高いので途上国などと異なりそこまでする必要がない。そのためキャッシュレス化が進まないという側面もあるだろう。

 現金依存の高さとクレジットカード等による決済が多いか少ないかは相関していることが、2つめの図で明らかである。日本の現金依存度は世界で最も高いので、これと対応するようにカード決済金額も世界最低レベルである。

 日本のカード支払いが少ないのは新しい方式が発達していないというよりは現金支払という旧方式が他国と比べて便利だからなのである。これは、IT機器や携帯電話などの発達についてもいえる。国際成人スキル・テストで日本人が読解力や数的思考力で世界一なのにIT活用力だけ10位だったのは日本でIT学習機会が貧弱なためではなく、ITを使わなくとも電話を使ったり部下に頼んだりして十分に用を足せるからなのである(図録3936参照)。

 日本と対照的なのが中国である。

 フリージャーナリスト中島恵氏の報告によると、「日本であれば、社会インフラが整っているだけでなく、どの小売店に行ってもきちんと現金のお釣り(小銭)が用意されていて、店員の質はほぼ一定、ニセ札を掴まされる心配もまずない。だが、中国はそれらが不便な環境だったからこそ、逆に飛躍的にスマホが発達し、ある面では日本を飛び越えてしまった」という(ダイヤモンド・オンライン2017年5月12日)。

 この結果、大都市ではスマホによる決済が当たり前になり、スマホが急速に普及するとともに、スマホがなければ、日常生活にも支障をきたすほどであり、買い物だけでなく、タクシーを捕まえることにも苦労を強いられる状況になっているという。

 日本人はカード支払額が少ない一方で、クレジットカードをたくさんもっていることでも目立っている。

「各種カードの一人当たり合計保有枚数を各国・地域別にみると、日本では、一人当たり平均で7.7枚が保有されており、CPMI(注)メンバー国の中では、シンガポールに次ぎ二番目に多い。(中略)日本のリテール決済の特色からは、人々の財布が、―あまり頻繁には使わないカードも含め― 多くのカードでも膨らみがち、といった姿が見てとれる」(日銀「BIS決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴」2016年2月)。

(注)CPMI:決済・市場インフラ委員会(Committee on Payments and Market Infrastructures)


 データの対象となっているCPMIメンバー国は、日本、香港、インド、スイス、ユーロ圏、ロシア、シンガポール、サウジアラビア、米国、メキシコ、韓国、トルコ、オーストラリア、カナダ、ブラジル、英国、南アフリカ、スウェーデンである。

(2017年5月1日収録、5月7日インド事例追加、5月22日中国事例追加)


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