|

| 世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査」が1981年から、また1990年からは5年ごとに行われている。各国毎に全国の18歳以上の男女1,000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査である。 ここでは、「もし戦争が起こったら国のために戦うか」という問に対する各国の回答結果をグラフ表示した。 「はい」の比率が日本の場合、15.6%と、世界36カ国中、最低である。「いいえ」の比率は46.7%とスペインに次ぐ第2位の高い値である。 「はい」より「いいえ」が上回っているのは、日本、ドイツ、スペインの3カ国だけであり、いずれも第2次世界大戦の敗戦国側であったという共通点をもつ。もし戦争が起こったら国のために戦うかどうかという国民意識には、先の大戦が如何に大きな影響を与えているかがうかがわれる。戦争はもうこりごりだという感情が強いためと単純にとらえるのがよかろう。(スペインを敗戦国側としてよいかについて末尾に(注)) これに加えて、日本国憲法は、他国の憲法にない戦争放棄条項を有しており、憲法に対する遵法精神の上からは、この問は答えにくい内容をもっているといえる。日本は、「はい」が一番少ないだけでなく、「わからない」が37.7%と世界で最も多い値を示していることからもそれがうかがわれよう。 第2次世界大戦の敗戦国、及び戦争放棄条項をもつ憲法を有する国ということから、こうした回答結果となっているのであって、日本の若者が軟弱になっているからといった素朴な見方はあてはまらないことが、こうした国際比較から分かるのである。日本だけの調査結果であったら、「はい」と答えた者の少なさの理由として、日教組の影響、若者の軟弱さ、愛国心の欠如などがあげられた場合、そうかもしれないと誰だって思ったであろう。 逆に、「はい」の比率の高い国は、第1位がベトナム、第2位以下、中国、モロッコ、タンザニア、バングラデシュ、フィリピンとアジア、アフリカの発展途上国が来ている。欧米先進国は、フィンランドのみがかなりの上位なのを除くと、米国、カナダが中位であり、フランス、イタリアなどはさらに低くなっているなど、概して、高くはない。日本の「はい」の低さの原因の一つとして、経済先進国だからという点もあげられよう(解釈次第では、その結果、敢闘精神が欠如している、あるいは命の値段が高くなっているからとも言えよう)。 なお、この図録の対象国は、36カ国、内訳は、「はい」の比率の低い順に、日本、ドイツ、スペイン、ルクセンブルク、オーストリア、ジンバブエ、リトアニア、フランス、ウガンダ、イタリア、ウクライナ、アルゼンチン、チリ、セルビア・モンテネグロ、南アフリカ、カナダ、米国、ロシア、プエルトリコ、メキシコ、クロアチア、ルーマニア、ベラルーシ、インド、韓国、イスラエル、スロベニア、ベネズエラ、ペルー、フィンランド、フィリピン、バングラデシュ、タンザニア、モロッコ、中国、ベトナムである。 さらに、2000年には調査対象外の国で、1995年の調査結果が得られる国が23カ国(チェコ、ウルグアイ、スロバキア、ラトビア、ブルガリア、ナイジェリア、スイス、エストニア、ハンガリー、グルジア、オーストラリア、アルメニア、マケドニア、ブラジル、ドミニカ共和国、モルドバ、ポーランド、台湾、ボスニア・ヘルツェゴビナ、スウェーデン、ノルウェー、アゼルバイジャン、トルコ)あるので、これらについても以下にグラフを掲げた。 ![]() 最後に、2005年度調査の結果が主要国について公表されているので、これについても以下に掲げる。 ![]() 2000年と同様の結果となっている。 新たに、イラク、オランダ、アンドラ公国、ニュージーランド、香港、英国、グアテマラ、キプロスの8カ国のデータが得られている。日本、ドイツの値が低いのは2000年調査と共通であるが、さらに、イラク、オランダの「はい」の比率が40%未満と低い点が目立っている。 (注)スペインは、厳密に言うと、敗戦国ではない。第2次世界大戦に際して、フランコ政権下のスペインは、スペイン内戦後の国内の混乱から、中立国の立場をとった。しかし、ドイツなど枢軸国との友好関係を保ち、ロシア戦線に「青い旅団」を派遣したため、ソ連の反対で、戦後、国連の原加盟国にはなれなかった。従って、敗戦国ではないが、敗戦国「側」ではあった。もっとも本格的に参戦していたわけでないので、このアンケートに「はい」と答える回答率が低い理由にはならないという反論がありうる。むしろ国への帰属意識ではなく地方への帰属意識が強いため、こうした結果になっているのではないか、との考えもありうる。後者については、図録9470(国かそれ以外か所属地域の意識(世界価値観調査))で見るようにスペインが特に地方意識が強いわけではない。ヨーロッパ諸国において第2次世界大戦に至る過程はスペイン内戦と共通する面があり、スペイン内戦を繰り返したくないという感情がアンケート結果に反映しているのではないかと思い上述の記述となった。この点は私も分からないところがある。今後の追究によっては、叙述を改める可能性が残っている。なお、ドイツ、スペインに続いて、ルクセンブルク、オーストリア、あるいは1995年のチェコが「はい」の少ない国として掲げられているが、ルクセンブルクは国家というよりEUへの所属意識が高いためだと思われ、オーストリアやチェコは第2次世界大戦の際ドイツに併合され、強引に敗戦国側になったという事情が影響していると思われる。 (2006年7月12日収録、7月16日(注)追加、8月11日1995年データ追加、2009年1月2日2005年データ追加) |
|
||||||||||||||||||||||||||