グローバリゼーションの進展は、図録4900に示したような貿易額の対GDP比の上昇とともに、グローバル・バリュー・チェーンの深化、すなわち最終製品に占める海外の中間財のウエイトの拡大としてもあらわれる。ここでは、こうした動きをあらわすグラフとしてOECD各国におけるグローバル・バリュー・チェーン拡大の図を掲げた。

 グローバル・バリュー・チェーンを示す指標として。複数国間産業連関表を基礎に海外付加価値が算出されている。これによると、輸出額に占める海外付加価値シェアは、1995年から2011年にかけて、ほとんどの国で大きく上昇していることが明瞭である(なお、原報告書では、2011年以後欧州債務危機でいったんこのトレンドが後退し、そののち再び同じ方向に進んでいるとされている)。

 国家形態の広域拠点都市ともいうべきルクセンブルクでは周辺諸国との経済関係の緊密化で最高レベルにグローバル化が進んでいるのは当然であろうが、この他、ハンガリー、チェコ、スロバキアといった中欧諸国でも値の上昇が目立っている。ドイツなど技術先進国から高付加価値製品を中間財として輸入し、安い労働力で組み立てて輸出するというグローバル化対応が拡大していると思われる。

 韓国の海外付加価値シェアの上昇もOECD諸国の中で特に目立っている。これは日本から高付加価値の中間財を仕入れて、世界的に人気の高い最終製品にすばやく仕立てあげ、日本より早く世界市場に投入するという発展戦略を取っているためだと思われる。

 グローバル・バリュー・チェーンの発達の中で、日本製品が特に中間財において不可欠の環となっている様子については図録5380参照。

 一方、海外付加価値シェアが低いことで目立っているのは、日本、米国、ドイツといった従来型のモノづくり大国である。少なくとも1995年の段階では、この3カ国だけがOECD平均よりこの値が低かったのである。国内で大抵のものは製造する力があるのであえて輸入に頼る必要がなかったという側面が強いともいえる。日本は歴史的にアジアで最初に工業が発展したので、長い間貿易で相互依存する相手国が近隣になかった。そのため、いわゆるフルセット型産業構造を有するに至り、得意分野への集中にかえって遅れを取っているとされるが、そんな状況をあらわしているともいえる。

 もっとも、1995年から2011年にかけては、日本、ドイツは海外付加価値シェアをかなり上昇させており、グローバリゼーションに対応してきている。米国だけはその動きがにぶい。米国の場合は、輸出入ともに増えるのではなく、輸出が増えず輸入ばかりが膨らむ貿易赤字拡大傾向が進んでいる影響、すなわち製造業の空洞化の影響によるものとも考えられる(主要国の貿易収支の動きについては図録5040参照)。

 日本は2011年段階でもOECDの中で海外付加価値シェアが最低レベルである点が目立っている。

 これについては、日本の産業が全体としてガラパゴス化していて、世界に通用する魅力ある製品づくりが遅れ、さらに、ドメスティック志向から世界最適調達も進まず、つまりグローバリゼーションに乗り遅れていると解する見方と、日本以外では製造できない高付加価値の中間財を国内で製造することができている状況、つまりモノづくり大国としての実力を維持できているからだとする見方とがありうるだろう。

 私は、後者の側面、すなわち最近流行の「他人(ひと)の褌(ふんどし)で相撲を取る」方式を取らずに済んでいる側面が強いと考えている。図録5700でも見られるように欧米との間で技術貿易の黒字率が上昇している点がその裏づけとなっていると思う。もちろん少しは他人の褌も借りなければやっていけない時代なので指標値は上がっているのであるが...

 図に掲げた29か国を、図の順に掲げると、日本、米国、ドイツ、ギリシャ、ニュージーランド、イタリア、フランス、スイス、英国、アイスランド、スペイン、ノルウェー、オーストリア、韓国、ラトビア、デンマーク、オランダ、フィンランド、カナダ、スウェーデン、ポルトガル、ハンガリー、チェコ、ベルギー、スロバキア、スロベニア、エストニア、アイルランド、ルクセンブルクである。

(2017年12月12日収録)


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