家計において通信費の負担が大きくなっている状況を示すため、家計における通信費の対GDPの推移を日本及び主要国で比較したデータは図録6366で掲げた。ここでは、主要国にとどまらず、世界各国の家計における通信費支出額をOECDや国連がデータベース化しているSNA統計(GDP統計)から取り出し、対GDPを算出し、棒グラフにした。分野別の家計支出については、家計調査ベースとSNAベースの2種類があるが国際基準の統一分類で作成されているのは後者なので、これで比較しているのである。

 データを掲げた44か国中、最も通信費対GDPが高いのはマレーシアの4.29%で、ギリシャ、コロンビアがこれに続いている。

 通信費が世界一であるマレーシアにおける携帯中毒は日本以上に深刻であるようだ。食事の際の家族との対話が阻害されるのを防止するため、政府機関の人口・家族開発局が首都圏の飲食店と連携して「ノー携帯運動」を始めたという。これは、食事の間、携帯に触れずにいられたら、客に特別サービスをするというものであり、ある日本の新聞社の特派員は、クアラルンプールで、これに乗ってバニラアイスを褒美でもらったが、食事中、メールの着信音が気になってアイスの後味が悪かったと報告している(朝日新聞2016.6.2)。マレーシアでは携帯電話の普及率が1人1.5台程度と非常に高いので(図録6360)、これと関係がありそうである。個人用と仕事用と2台使用していて両方個人の家計負担になっているのではなかろうかとも想像されるが、詳細は不明である。

 どちらかと言うと途上国的な性格の強い国で通信費割合が大きくなっていることが分かる。

 日本は1.99%であり44か国中10位とやや高い水準であるが、極端に高いわけでもない。それでも、主要国の中では米国が1.65%、ドイツ、フランスが1.40%、英国が1.20%などとなっており、また、日本はG7諸国の中では通信費割合が最も高くなっているので、やはり高いと言わざるを得ないであろう。

 もちろん、これは、携帯電話・スマホの普及率、使用頻度(時間)、通信料金、及び母数となる消費支出額の水準(生活程度)がすべて関係してくるので、単純に通信料金が高いとしているわけではない。おそらく、途上国では家計支出金額がそう多くないのに、通信代には先進国に近い金額を支出しているので通信費対GDPが高くなっているのだと考えられる。

 通信料金が高いか安いかを判断するためには、同じ通信量(使用時間や情報バイト数)当たりの通信料で比較するのが常道であるし、実際、総務省の情報通信白書などでは、そうした比較が行われている。そして日本の通信料はガラ携は安く、スマートフォンはやや高いという結論になっている(平成27年版p.386)。これは公平なようで公平でない評価方法である。というのも通信量当たりの通信料が「公平な」評価方法では安くても、利用度の低い高齢者から高い基本料金を得ていたり、あるいは不必要な通信を使用者に誘発させて多くの通信費を支出させたりして通信会社が利益を得ているとしたら、やはり、通信費は高いと言わざるを得ないからである。家計の通信費対GDP比では、そんなところまで含めたトータルなデータとして、やはり重要なのだと思われる。

 参考までに国連が収集整理しているSNA統計で同じデータを途上国を含む63カ国について所得水準との相関を掲げると下図の通りである。所得水準の高い国では通信費対GDPが小さくなる傾向が認められるが、低所得国の中には非常に通信費が高い国もあれば低い国もあるという特徴もある。日本は63か国中25位とやや高めである。


 最初の図に掲げた44カ国を通信費対GDPの大きい順に列挙すると次の通りである。マレーシア、ギリシャ、コロンビア、コスタリカ、チリ、メキシコ、フィリピン、トルコ、ラトビア、日本、ハンガリー、スロバキア、ロシア、スロベニア、ポルトガル、米国、エストニア、リトアニア、韓国、ニュージーランド、イスラエル、カナダ、スペイン、イタリア、オランダ、ドイツ、フランス、ポーランド、チェコ、スウェーデン、オーストラリア、インド、アイスランド、フィンランド、タイ、英国、ベルギー、デンマーク、オーストリア、アイルランド、シンガポール、ノルウェー、スリランカ、ルクセンブルク。

(2015年10月6日収録、2016年5月4日その2更新、通信費割合の推移追加、5月8日その2チェコ、アゼルバイジャン追加、5月10日その2モンゴル、ギリシャ、イスラエル、カメルーン、ブータン追加、6月2日マレーシアの携帯事情、2017年2月22日更新、ただし家計に占める割合から対GDPに指標を変更、OECDと国連のデータを統合、相関図追加、冒頭部分を図録6366へ移動)


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