2016年6月の国民投票で多数とはいえ51.9%という僅差で英国がEU離脱を選択した。背景として挙げられるのは英国における移民問題の深刻さであった。意識調査では英国民が移民に仕事を奪われていると感じている割合は51.3%とフランスの27.8%などと比べて高いことを図録1174aで見た。ここでは、実際に移民が多いかどうかを見てみよう。OECDの報告書におけるデータはすでに図録1171などで示しているが、年次がやや古い。ここではEUの統計機関(EUROSTAT)が公表しているヨーロッパ諸国の新しい年次の移民人口データを整理した。

 国の並びは移民人口(外国生まれの人口)の規模の大きさによっている。移民人口規模による移民大国はヨーロッパではドイツ、英国、フランスの順であり、それぞれ、1千万人、840万人、790万人となっている。これにスペイン、イタリアの500万人台が続いている。

 移民人口の総人口比では、これら移民大国はイタリアが9.5%と10%を切っているのを例外として、いずれも12〜13%といった同レベルの水準となっている。

 移民人口のうち東欧などEU域内からの移民人口の比率を見るとこれら5カ国のうちフランスとイタリアでは3%台前半であるのに対してドイツ、英国は5%弱とやや多い。スペインは両者の中間レベルである。

 移民人口の規模が30万人以上でこれらの国より小さい国では、移民人口比率がもっと高い国が多い。スイスの27.4%は例外的に高いが、オーストリア、ベルギー、スウェーデン、アイルランド、ノルウェーでは14〜17%と高い水準となっている。

 ヨーロッパの小国ではルクセンブルクの移民人口比率が44.2%と非常に高いのが目立っているが、このうちEU域内からも33.0%と多くを占めている。しかしこれは東欧からの移民というより高度都市機能を担う人材の周辺の高所得国からの移住が多いと考えられる。スイスへの移民はEU域内からを中心に人口の4分の1以上を占めて多くなっているが、これも、ドイツ、フランス、イタリアといった周辺の先進国からの移民が多く(2013年に3割以上)、ドイツや英国、フランスとは内容が異なっている。税率を低くしているため本社機能が集まるアイルランドも似たことがいえよう。

 2014年を通じた英国の移民人口の増加については、総数はドイツの40万人を下回る38万人であるが、ポーランドなど東欧からが中心のEU域内からの移民人口の増加は28万人とEU諸国の中でも特段に多くなっている。ここらへんが、英国民にとって、EUに所属しているゆえのデメリットと感じられる大きな原因になっていることがうかがわれる。なお、緊縮財政が強いられ景気が落ち込み、失業率も高止まりしているスペインやギリシャでは移民人口はむしろ減少しており、英国が、代わりに移民の受け皿になっている側面もあろう。フランスはEU域内と言うより、アフリカ・中東などEU域外からの移民の増加が多くなっている点が異なっている。

 このように見てくると英国の移民人口が特段多いということではなく、ただ、最近の東欧からの増勢が目立つ程度である。それでも移民への反発は大きいので今回のEU離脱に結びついてしまったといえよう。

 主要国の移民人口の出身地別割合、また近年いずれの国からの移民が増加したかについては、図録1171a参照。

 この図録でふれたデータについては、ダイヤモンド・オンラインのコラム記事「英国以外にEU離脱しそうな国をデータであぶり出す」でも言及したので参照されたい。

 図で取り上げた国は、移民人口の多い順に、ドイツ、英国、フランス、スペイン、イタリア、スイス、オランダ、ベルギー、スウェーデン、オーストリア、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、ノルウェー、ポーランド、デンマーク、クロアチア、ハンガリー、チェコ、フィンランド、ルーマニア、ラトビア、ルクセンブルク、スロベニア、エストニア、スロバキア、キプロス、リトアニア、ブルガリア、マルタ、アイスランド、リヒテンシュタインの32カ国である。

(2016年7月3日収録)


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