世界の各大陸には熱帯、温帯、寒帯の各地に農耕を開始する以前の生活を維持している狩猟採集民がいる。

 熱帯では、年間を通じて何らかの食料が得られることや貯蔵がそもそも困難であるため非定住の集団が多い。

 温帯では四季があるため食料を貯蔵し植物も栽培するような「豊かな食料獲得民」も発生し、農耕民の段階へ進んでいった。農耕開始以前に定住的で比較的大人数の狩猟採集民の集団が巨大建造物を作っていた例として、三内丸山の縄文遺跡やトルコのギョベクリ・テペの遺跡が見つかっている。

 北極圏では衣食住すべてを極地動物(クジラ、アザラシ、トナカイなど)に依存し、低温のため食料貯蔵ができるため季節的な定住を行う狩猟採集民が暮らしている。

 尾本恵市(2016)「ヒトと文明: 狩猟採集民から現代を見る」によれば、ここで取り上げた民族の推定人口を合計すると約71万人であり、現在の世界人口約72億人のわずか0.01%に過ぎない。

 尾本(2016)によれば、狩猟採集民の特徴は以下の10点にまとめられている(p.145)。

@ 少数者の集団(子どもの出生間隔が比較的長いため集団の人口はそう増えない)
A 広い地域に展開して居住する(低い人口密度、最も縄文人などは現代の狩猟採集民より人口密度が高かった)
B 土地所有の観念がない(共同利用)。縄張り意識はある
C 主食がない(多様な食物)
D 食物の保存は一般的ではない
E 食物の公平な分配と「共食」。平等主義
F 男女の役割分担(原則として男は狩猟、女は育児や採集、図録1019参照)
G リーダーはいるが、原則として身分・階級制、貧富の差はない
H 正確な自然の知識と畏敬の念にもとづく「アニミズム」(自然信仰)
I 散発的な暴力行為・殺人(とくに男)はあるが、「戦争」はない

 ただし、D〜Iは「豊かな食料獲得民」では例外があるとされる。



世界の主な採集狩猟民と推定人口
主な狩猟採集民 推定人口(人) 備考(人名は日本人研究者)




北米中部大平原のブラックフット等 155,000  
アラスカ西部の鯨漁民イヌピアット 7,000  
カナダのジェームス湾沿岸のクリー 12,000  
カナダ:ラプラドールのインヌ 13,500  
カナダ:ハドソン湾西岸のカリブー・イヌイット 5,000 極北アメリカのイヌイット(本多俊和)
イヌピアット極北鯨漁民 5,000  
その他 2,500  




パラグアイのアチェ 685  
コロンビアのクイヴァ 1,500  
エクアドルのウアオラニ 1,300  
ボリビアのシリオク 2,000  
アルゼンチンのトバ 1,500  
フェゴ島のヤマナ 3,000(1860年)
63(1929年)
3(1965年)
 
アマゾン川流域 不明  





日本・サハリン・千島のアイヌ 24,381? 日本のアイヌ(榎森進、瀬川拓郎)
ロシア:チュクチ半島のチュクチおよびユピク 15,200  
ロシア:エニセイ河のエヴェンキ 29,900  
ロシア:カムチャッカ半島のイテルメン 1,431  
ロシア:サハのユカギール 697  
ロシア:クラスノヤルスク州のケト 1,113  
ロシア:西シベリア平原のハンティ 22,283  
ロシア:タイミール半島のニア(ガナサン) 1,278  
ロシア:サハリンのニヴフ(ギリヤーク) 5,000  
その他 717  



中央アフリカ共和国、コンゴ共和国のアカ・ピグミー 30,000〜40,000  
イツリの森のムブティ 15,000 ムブティ・ピグミー(市川光雄)
タンザニア:エヤシ湖南西のハッザ 1,000 東アフリカのハッザ(口蔵幸雄)
中央ボツアナのグイおよびガナ(コイサン) 3,000 コイおよびサン(ブッシュマン)(田中二郎)
北ナミビア、ボツワナのジュ・ホアンシ(!クン) 15,000  
ミケア(マダガスカル) 1,500  
その他 5,000 西アフリカのバカ・ピグミー(安岡宏和)



インド:アンダマン島のオンゲ 350〜400
3,575(1800年)
インド:ビハールのビロール 5,950  
インド:デカンのチェンチェ データ遺漏  
インド:ニルギリ・ヒルズ、ウィナードのナヤカ 1,400  
インド:ケララおよびタミルナドゥのバリヤン 3,122  
インド:ケララのヒル・パンダラム 2,000  
スリランカのワンニヤラ・エット(ヴェッダ) 2,111  
その他 5,067  




マレー半島のジャハイ 875  
マレー半島のバテク 700〜800  
マレー半島のセマンおよびスマク・ブリ 2,500 マレー半島のスマク・ブリ・ネグリト(口蔵幸雄)
中国雲南省のドゥロン 4,295  
インドネシア:東カリマンタン、マレーシア、サラワクのペナン 3,200  
フィリピン:東・北ルソンのアグタ 2,240 アグタ(尾本恵市)
フィリピン:パラワンのバタク 400  
フィリピン:中部ルソンのアエタ 15,000 アエタ(清水展)
フィリピン:ミンダナオのママヌワ 8,000 ママヌワ(尾本恵市)
その他 740  

オーストラリアン・アボリジニ 238,574 アボリジニ(新保満)
トーレス海峡島民 26,891  
(注)The Cambridge Encyclopedia of Hunters and Gatherers(1999)による。その他は地域計から狩猟採集民の人数の合計を引いた数字
(資料)尾本恵市「ヒトと文明: 狩猟採集民から現代を見る」ちくま新書(2016年)

(2017年4月25日収録)


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