「電子記録管理保存システムの研究」 1997.7.14 川合研B4 伊戸川 暁 (0)本研究の目的 問題意識:「文書館普及への使命感 + 既存の文書管理システムへの懸念」 文書館(archive)の立場から、 情報時代に於ける電子記録(electronic records)の 管理及び保存のあるべき姿を考える //将来の為政者にいいかげんなことをさせない (1)文書館(archives)とは? //「文書館学」とでもいうべき領域の存在のアピール 存在意義:「一次資料から歴史を残す」 古文書などの歴史資料から現代の公文書までをカバー 理由:「現代の公文書もやがては歴史的資料となる」 (但し本研究は、古文書などの歴史資料は対象外とする) 主に国や地方自治体のものをいうが、企業や大学などが持つこともできる `accountability'の基礎 //「ぶんしょかん」或いは「もんじょかん」と読む //これに従事する人を「archivist」という //公文書は公共の財産であって、役人の専有物ではない (2)類似物との相違 図書館は「閲覧」、博物館は「展示」、文書館は「保存」 図書館との違い 文書館は「一次資料」を、図書館は「二次資料」を取り扱う 資料の性質の差に由来する取り扱い技術の違い 司書は古文書を読めるとは限らない 現に、歴史資料を持て余している図書館は多い // そこにたまたまいる人の資質によって状況が左右されるのは、 // まともなprofessionがないことの証拠 原資料は一つしかない→取捨選択の責任の重大さ // 本来郷土資料は文書館が取り扱うべき 博物館との違い 情報公開制度との違い 情報公開制度は「現用」文書を「地域住民に」「開示」するのに対し、 文書館制度は「非現用」文書を「広く一般に」「公開」する 情報公開制度は開示請求を待つが、 文書館の持つ情報は無条件で公開される //本研究のシステムでは情報公開に関係する部分も扱うが、 //両者は峻別されるべきものであることを強調しておく。 //情報公開はrecord center部分で、文書館的公開は //archives部分でやることになろう。 (3)文書の価値とlife cycle lifecycle - 現用(cuurrent)・半現用・非現用 「半現用」は効率性及び慎重を期するために存在 現用時の価値≠非現用時の価値 (実務上の価値≠歴史的価値) 「歴史的価値の正しい鑑定のために、archivistは必要である」 `retension schedule' - 「何を残し、何を捨てるか?」の基準 文書作成前から「現用・半現用・非現用」の年限の大枠を決定 //無論「根本的解決」ではない (4)日本の現実(公文書に関する) 以上の知識の欠如及びそれに起因する文書の消滅の進行 公文書廃棄の恐るべき実態 //天災・人災 //何故そうなってしまったのか?というのも、面白いテーマではあるのだが…。 戦後、主に歴史研究家の地道な運動による文書館設置の推進 成果: 国立史料館(1951) 国立公文書館(1971)//但し干されている。職員は50人に満たない 都道府県レベル(現在26/47)を中心とする文書館の設置 公文書館法(1987) など 問題点: 専門教育の不備 「公文書館法」は決定的な強制力に欠ける 既存の文書関係部署と折り合わないこともしばしば (5)電子的文書管理の先行研究 CALS 「文書の電子化」という意味では、無論本研究上非常に参考になるが、 「効率化」に重点が置かれており、 「現用・半現用・非現用」のような議論は(少なくとも国内には)皆無 (「現用」の視点しかない) DataBase技術 Digital Library (6)目指す研究の方向 問題意識:「文書館普及への使命感 + 既存の文書管理システムへの懸念」 「煩瑣な引き継ぎ作業なしに、自動的に record centerやarchivesが構築され、必要なものは公開される」ようにしたい (特に日本の)archivistは 歴史研究家や地方自治体職員中心のため情報処理に弱く、 一方、CALSとかの人は文化保存の視点に乏しい -> 両者の橋渡しをしたい //「SQL入門」の恐ろしい記述 (7)現在考えているシステムの概略 「3段階モデル」- 「現用・半現用・非現用」の各段階を office・record center・archivesの各DBに対応させる //DBは概念レベルにとどめるべきか? 各級のDBには別々の担当者をおく //管理者の資質は別問題 retension scheduleなどの管理情報をSGMLで記述し、formとして用意 Internetに接続することを前提とする 「公開する・しない」情報もSGMLタグで示す 特にarchives部分は外部につながっている必要があろう 情報の公開・交換の点で利益あり // 既存のツールのつぎはぎになるかもしれないが、実装までもっていきたい //architectureは「採用するpolicy次第でどうにでもなる」という説あり (8)現在考えている仕様(ディテール) 暗号化による機密性・真正性の保持 目録作成機能 pointer機構 文書の有機性の尊重 一貫したversion管理 Emacs Lispによる実装 (9)現在の課題 既存のシステムの更なるsurvey 類似のものは既に結構存在している(商用システムまである) 例:豪州Tower Software社のTRIM // アメリカにはAMC(Archivism and Manuscript Control)なるものがあるらしい 紙文書のもとで考えられてきた枠組は、電子文書にはどれだけ有効なのか? 例:「originalがいくらでもcopyできる」というデジタル情報の 特徴はどのくらい利いてくるのか? 律義にDBを3段階にする必然性はあるのか? system間の記録情報のやりとりをどうするか? interfaceの問題 試験運用をどうするか? // ktyy-ml? (10)将来的課題(今回の卒研で扱う予定のないもの) multimediaの扱い 従来の非電子記録及びその索引も扱えるようにしたい -> 文字コードの問題? 「電子的古文書」問題 //8"fdとか 参考文献 [1]安藤正人・青山英幸編著「記録史料の管理と文書館」北大図書刊行会、1997 [2]Kahle, Brewster, http://www.archive.org/ ↑Internet Archive社の社長。 [3]高野 修「地域文書館論」岩田書院、1995 [4]Benedon, William・作山宗久訳「記録管理システム」頚草書房、1988 [5]全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)関東部会編 「文書館学文献目録」岩田書院, 1995 [6]「SQL教科書」 [7]「PGP」(O'reilly) [8]根岸正光・石塚英弘 共編「SGMLの活用」オーム社, 1994 その他たくさんのWeb pages