卒研IIレジュメ

1998年1月21日 伊戸川 暁


「オーガニゼーションズ」(J.G.マーチ/H.A.サイモン、1958)

(前編 − とりあえず3章まで)




1 組織内行動 組織的行動に関する諸命題の仮定の3種類(p10): 組織のメンバーは 1) 受動的な機械である →2章 2) 態度・価値・目的を組織に持ち込むものとする →3〜5章 「組織の目的≠メンバーの目的」とも仮定 3)意志決定者であり問題解決者である →6〜7章 知覚と思考に重点 これらは互いに矛盾するものではない 心理学的な公準(pp15-18) 有機体の行動は、環境と有機体の内部状態で決まる 有機体の内部状態(記憶)は、有機体の全歴史の関数である 記憶は「喚起されているもの」と「喚起されていないもの」とに分かれる 記憶の変化は、いわゆる「学習」を通じてなされる 有機体の行動は、喚起集合を変化させるか、学習をさせることでしか変化させられない # 「喚起」≠「学習」であることに注意 環境も、有機体に影響を及ぼすもの(刺激)とそうでないものとに区別できる 何が刺激になるかを決定するのは、主に喚起集合である もう一つの内部状態の区分法: 1) 価値ないしは目的(選択肢の選択基準) 2) 行為と結果との関係 3) 代替的選択肢 2 「古典的」組織理論 「機械的」モデルに基づいた 「古典的」組織理論の紹介 Taylorの科学的管理法 Gulick, Urwickらの行政管理理論 仕事を各構成員に割り当てる問題 最適な解が一意に存在すると仮定 問題点: 理論が「動機づけ」や「学習行動」の要素を含んでいない モデルに調整の要素が含まれていない 構成員を与件としてしまっている 3 動機的制約 -- 組織内の意志決定 特に、生産への意志決定。 3.1 影響過程 刺激が予期しない行動をもたらす理由 3.2 官僚制の諸理論 ウェーバーの官僚制理論 官僚制組織の合理性・能率性を示そうとした ただの「機械」モデルではないが、人間という有機体の特性については 留意していない 官僚的組織に対する幾つかのモデル(マートン、セルズニック、グルドナー) ----------後日追加 3.3 満足と生産性 メンバーの満足度と生産性は、 相関するというよりはむしろ複雑な関係にある (例えば、図3.5(p.76)に示したような関係) 「3つの枢要な代替的選択肢」(p78): 1) 組織を離れる 2) 組織の生産規範に従う 3) 組織内で、生産を高めることなく満足を得る機会を求める →組織に残るか否かの選択(1と2,3の対立)と 生産をするか否かの選択(2と3の対立) 次の節は後者について論じている 3.4 生産への動機づけ ----------後日追加ここまで 「個人が影響を受ける」とは: a) 所与の事態に結び付いている価値が変わる b) 行為の結果の知覚が変わる c) 喚起される事態の集合が変わる 「生産への動機づけ」は、以下の(1)(2)(3)の関数である (1)代替的選択肢の喚起される集合[の性格] 喚起される集合を決定する要因 監督の性格と生産性 文化的要因(文化が自主性を重んじるか) 褒賞の性格による相違 同僚の仕事ぶり (2)喚起された代替的選択肢の知覚された諸結果 (他の)集団からの圧力 「強さ」と「方向」とがある 集団の圧力の強さを決定する要因: 集団に対する一体化 集団の意見の同一性 環境に対する集団のコントロールの範囲 昇進制度 俸給制度 業績基準の主観的な操作性 ←? (3)[代替的選択肢が喚起される基準となる]個人の諸目的 「人間は、機械とは対象的に、他の人々との価値意識との関係で 自分自身の位置を評価し、そして他の人の目的を自分自身のものとして 受け入れるようになる。」(p.100) 集団 必ずしも≠ 問題としている組織本体 一体化の対象となる集団の分類: 当該組織にとって外在的な組織 当該組織自体 当該組織の課業集団 当該組織の下位集団 ? 定義? 認知的影響((1)(2))/一体化への影響(3) 集団への一体化→集団の目的と成員の目的の合致 一般的な言明/特定の集団のみに当てはまる予測的な言明(p103) 集団の圧力の方向 社会的立場の類似性 文化的中心性 意志決定に関する組織自体からのコントロールの度合い 3.5 結論 「機械」モデル(2章の)は、 参加者が同時に果たしている広範な役割を無視する傾向がある。 生産への動機づけは、以下の3要素の関数であると言える。即ち、 個人にとっての行為の代替的選択肢の喚起作用 喚起された代替的選択肢の 個人によって予期された結果 個人によってその結果に付けられた価値 の3つである。 そしてこれらには組織がコントロールできるものとできないものとがある。 組織によるコントロールの程度は、様々な要因の関数である。

私見


この本は出版地点までの成果の集大成であるようだ。
  命題のみ列記、理由は参考文献を当たれ、という調子。

変数多過ぎ。
# 「出揃っている」という言い方もできるのかもしれないが……。
ひたすら変数とその関係の連続という感じ。
  関係を示した図もあるが、このままではあまり使えなさそう。



結構hierarchicalな組織を前提してしまっている感じがする。


後編予告

4章  参加の意志決定
5章  組織におけるコンフリクト
6章  合理性に対する認知限界
7章  組織におけるプランニングと革新

itogawa6@dolphin.c.u-tokyo.ac.jp