○カレンダーは、時間とともに現在の私たちの生活にはなくてはならないものです。この原型は、古代ローマ時代には既に成立していました。その証拠に、カレンダーの中にはローマ史の名残が見られるのです。どのようにして現在の形になったのかたどりながら、このあたりを見ていくことにしましょう。
1 カレンダーの語源
(問1)Calenderの語源は次のうちどれでしょうか?
@「めくる」という動詞から A借金台帳という意味から B12という意味から
(問1の答へ)
2 今日のカレンダーができるまで
・現在のカレンダーの主な特徴をあげてみましょう。
1月(January)31日/2月(February)28日、4年に1度29日/3月(March)31日/4月(April)30日/5月(May)31日/6月(June)30日/7月(July)31日/8月(Augusut)31日/9月(September)30日/10月(October)31日/11月(November)30日/12月(December)31日
(問2)カレンダーは人間が便宜上つくったものですから、規則的につくられたはずです。その点から、上のカレンダーにおいて、不思議だなぁと思われる点が2つあります。それは何と何でしょう?
<ヒント>各月の日数に関してです。不規則なところが2カ所あります。
(問2の答へ)
○1 原始ローマ暦(紀元前8世紀)
1年10ヶ月、304日。1月(Martius、軍神月)31日/2月(Aprilis,開花月)30日/3月(Maius,成長月)31日/4月(Junius)30日とここまでは古代ローマで季節を意味する神の名前を付けました。その後は序数(英語で言えばFirst,Secondのように)で第5の月、第6の月などと付けていきました。
○2 ローマ暦(ヌマ・ポンピリウス王改暦)
1年12ヶ月、355日。ローマ人には奇数を縁起のいい数とする習慣があったので(この辺日本人と似てますね)、ひと月を31日または29日とし、年末の12月を28日としました。
(問3)これで(問2)の疑問点が1つ解決しましたね。わかりましたか?
<ヒント>この暦でも1月がMartiusである点は変わりませんでした。
(問3の答へ)
○3 ユリウス暦(カエサル改暦、紀元前45年)
あの有名なカエサル(シーザー)は、アレクサンドリアの天文学者ソシゲネスの指導で、大幅に狂っていた暦を改め、1年を365日、4年ごとに366日の閏年を設けました。各月の日数は、軍神月から交互に31,30日とし、最後の12番目の月のみ29日とし、この月に閏月を設けることとしました。
(問4)ところが今、軍神月は1月ではなく3月ですよね(Martius→March)。つまりカエサルは2ヶ月さかのぼって、当時の11月を1月にしてしまったのです。これは、当時の11月にある大きな区切りがついたためなのですがそれは何だと思いますか?
<ヒント>お役所の…
(問4の答へ)
(問5)さらにカエサルは、ある月が自分の誕生月だったので、自分にちなんだ名前に変えてしまいました。それは今の何月かわかりますか?
<ヒント>カエサルの名前はユリウスでした。つづりはJuliusです.
(問5の答へ)
○4 ユリウス暦(アウグストゥス改暦)
3のユリウス暦は、後に閏年の置き方に失敗して、紀元前9年までに3日のズレが起きてしまいました。カエサルの子で初代ローマ皇帝となったアウグストゥスはこれを正しました。
(問6)さらに彼は自分が戦勝したある月に、自分の名前をつけてしまいました。それは今の何月でしょう?
<ヒント>アウグストゥスのつづりはAugustusです。
(問6の答へ)
(問7)これで(問2)のもう1つの疑問点も解決です。なぜ彼がそうしたか、○2の暦のところの説明を思い出せばわかりますよね?
(問7の答へ)
◎答と解説
(問1)答はAの借金台帳です。当時のローマでは毎月の第1日(kalend)に借金を返済する習慣がありました。
(次へ)
(問2)「2月という中途半端な月が閏月になっていること」と「7月と8月がともに31日であること」です。
(次へ)
(問3)今の2月は当時の12月にあたるので、調整の月とされたのです。
(次へ)
(問4)当時のお役所始めが当時の11月だったので、これを始め月(Januarius)としたのです。
(次へ)
(問5)Julyはカエサルの名Juliusからきています。つまり今の7月です。
(次へ)
(問6)August、つまり今の8月です。
(次へ)
(問7)つまりアウグストゥスは、自分の名前をつけた8月を縁起のいい月にするため、31日にしたのです。そしてそのため彼はかつての暦で最後の月、つまり現在の2月から1日とってしまいました。これで2月は基本的に28日になってしまったのです。さらに7月、8月と31日が続いたため、それまで31日あった9月を30日とし、以下ずらしていきました。
▲このようにしてできた暦は、その後16世紀後半まで西欧諸国で使われました。
ちなみに現在の暦はグレゴリオ暦といい、1583年から使われています。ユリウス暦は130年で1日という誤差があったために、ニケーアの宗教会議以来3月21日に定められていた春分の日は、16世紀までに10日間ずれていました。キリスト教の重要な儀式イースターはこの春分の日を基準に定められていたので、ローマ教皇グレゴリウス13世は、改暦を断行しました。ここでは閏年を、西暦年数が4の倍数の時に置きますが、ただし100の倍数の年は、100で割った答が4の倍数でないときは、閏年にしない、としたのです。この暦の誤差は3000年で1日です。このグレゴリオ暦は、最初カトリック教国のみで使われていましたが、18世紀には新教国にもひろまり、今日では国際的な共通暦となりました。
それにしても今の暦の基礎の部分は、古代ローマ時代にはできあがっていたのですね。そしてそれをさらに遡ると、古代エジプトの太陽暦にまでたどりつくのです。
※これらの問題と答、解説は平凡社の百科事典をもとに作成しました。
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