10.環境書籍はどこにある?2001.2.27
環境に関して調べモノをするのは、結構大変ですよね。「環境」分野が学術的にも固まっていない分野だから仕方がないのですが・・・
今回投稿していただいた方は、その道のスペシャリストです。
ペンネームは決まっていませんがとりあえず「ブロッコリー女史」とします。

休日に自宅近くの区立図書館に出かけ、仕事絡みの本を探している最中にふと思い出したことがあります。

どういう巡り合わせか、これまでに何度か「環境に関する書籍を集め、分類し、書棚に並べて一般の人の利用に供する」という仕事をいただく機会がありました。それは、小さな環境NGOの図書室だったり、公益法人の資料室、企業博物館の情報コーナーといった場所の話なのですが、所変われば当然、収集する範囲も、取り扱う冊数も、分類の仕方も違いました。

生来本好きですので、趣味と実益を兼ねたオイシイ仕事ではあったのですが、いっぽうで、この蔵書構成では不十分なのではないか、とても重要な定番本を見落としているのではないか、この分類表でいいのか…と頭の中がグルグルしてくることも少なくありませんでした。ある1冊の本にどの分類コードを振るか、自分で作ったはずの分類表を前に難渋してしまったのも一度や二度の話ではなかったように思います。

私自身の能力不足はさておき、そうした経験を通して実感するのは、「環境」「環境問題」というのは本当にさまざまな領域にまたがり、複雑に絡み合っているということです。どれだけ手を広げても、思いつく限りのカテゴライズをしてみても、決してこれでOKという気にはなれないのです。久しぶりに訪れた図書館で書架の間をうろつきながら、改めてそんなことが思い起されました。

他の方がどうされているかはわかりませんが、私の場合、図書館でとりあえず環境問題についての本を、という時には、まず日本十進分類法(NDC)の5(技術・工学・工業)の棚を目指します(えっと、図書館の本は日本十進分類法(NDC)で分類され、その順番で棚に並んでいる…という話の詳細は省いてもいい、ですよね?)。たいてい519(公害、環境工学)のあたりにまとまった環境本があるはずです。

が。「環境問題になんとなく興味が」とか「環境問題全般について知りたい」という時はそれで事足りるのですが、「地球温暖化」「シックハウス」「文明と環境のかかわり」などと言い始めると、519だけでは思うような本に出会えません。例えば、「地球温暖化」に関する本は4(自然科学)の棚の450(地球科学・地学)のあたり、気象や気候の本と一緒に並んでいますし、「シックハウス」は、5(技術・工学・工業)のなかの建築か化学工業、あるいは490の医学、薬学という可能性もあります。「文明と環境のかかわり」になると2(歴史)の棚を探した方が早いかもしれません。そのほかローマクラブ『成長の限界』は3(社会科学)、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』はもしかすると9(文学)…と、一口に「環境についての本」といっても、大きい図書館なら違う棚どころかそれこそ違う階に散らばっているわけです。
 
これは、図書館の担当者の分類の仕方が悪いとか、日本十進分類法(NDC)は役に立たないということではなく、「環境」や「環境問題」が関わる領域の広さの現れだと私は受け止めています。環境問題に対する捉え方も、知りたいことも人によってさまざまでしょうが、ときには図書館や書店でいつもとは違う棚の前に立ち、そこで環境問題に関係する本を探してみるのも、環境や環境問題全般についての認識を広げ、知識を深める手軽な方法のひとつではないかと考えますが、いかがでしょう?

・・・・・・というわけで、折々に本を糸口に環境や環境問題についての話題提供ができればと思っていますが、さて、どうなることやら。乱文お許しくださいませ。
(2001/02/27)

ブロッコリー女史は、結構冷静に、かつ的確に、そして時に辛らつに環境問題の切り口を提供してくれます。
乞うご期待!
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