14.塩ビは環境に悪くない?! 2001.7.16
 
塩化ビニルポリマー、略して「塩ビ」。雨樋、医療器具、農業用シートなど、非常に幅広い用途で使われているプラスチックです。この塩ビの国内消費量が最近少なくなってきているようですが、本当に塩ビは環境に悪いのでしょうか?
以下に、塩ビに関して「反対派」と「賛成派」に分けて情報をまとめてみました。
まとめてみてわかることは、現在分かっている科学データの範囲では、どうやら塩ビはそれほど悪いとの結果は得られていないということです。ただ、「反対派」がもっている漠然とした不安(悪いと分かったときには手遅れになるのではないか?)は理解できますし、情報開示や社会コスト負担などの主張は、塩ビ反対派の意見に賛成できると考えます。みなさんはどのようにお考えでしょうか?
 

最終改定:2002.6.19

目次

●塩ビを燃やすとダイオキシン発生
●塩ビに環境ホルモンが含まれる
●塩ビの有用性とリスク管理
●(各論)塩ビの製造時の問題
●(各論)塩ビの使用時の問題
●(各論)塩ビのリサイクル・廃棄時の問題
●(各論)塩ビに関する情報公開
★出典詳細
色の説明
私が独断で、正しいと判断したもの
反対意見が欲しいもの(1〜19:欠番あり)
私が独断で、解決済みと考えたもの
私が判断しかねるもの(色なし)
   
タイトル 塩ビ反対派の主張 出典 塩ビ賛成派の主張 出典
●塩ビを燃やすとダイオキシン発生(目次に戻る)
メイン争点     ダイオキシンは、物質の製造、ごみの焼却処理、自然環境中での物質の燃焼などさまざまな過程で、塩素成分と炭化水素成分の反応により、非意図的に極く微量に生成する化学物質である。したがって、ダイオキシンは、ごみの焼却だげでなく、ストーブのすす、タバコの煙、炭焼ステーキ、山火事などさまざまな物から検出されている(文献1.2.3.)。 12
ダイオキシン発生の9割を占めるといわれる廃棄物焼却施設への対策として、焼却施設の燃焼管理と排ガス対策とともに取り組むべき課題が、ダイオキシンの発生原因であるごみの質の問題。ごみ質、つまりごみになる製品の材質自体から考える必要がある。 5 都市ごみの中には、塩素成分と炭化水素成分を含む厨芥類(ちゅうかいるい)、紙、木、繊維、プラスチックなどさまざまなものがあり、これらがダイオキシンの発生に何らかの関係をもっている(文献4.)。
ダイオキシンが発生するのには塩素が必要である。塩ビは、焼却時に塩素(塩化水素)が発生してダイオキシン発生の原因になる - ごみの中に塩ビが無くても、塩ビの量を増やしていっても、生成するダイオキシンの量には変化がないという科学的実験結果の報告が、数多く出されている(文献5.6.7.8.)。
ごみ総量100kgのうち、だいたい塩素総量300〜600グラム、 そのうち、塩ビ起源の塩素300〜500グラム、それ以外のゴミ起源の塩素   50〜100グラム。
1kgのゴミの焼却によって発生するダイオキシンに含まれる塩素量は、高々マイクログラムからナノグラムオーダーだから、焼却炉の中の塩素全量に対しては、完全に無視できるぐらい少量。ということは、化学反応としては塩素超大過剰の状態。こんな状態だから、塩ビ
を完全にゼロにしても、確かに発生するダイオキシン量は変わらない。これが事実。
C先生:だから、「塩ビは無罪」というのが金川氏と環境塩ビ協会の主張のように思える。我々の個人的な見解は、「ダイオキシン発生について、塩ビも共犯である。塩素供給源として塩ビの存在はむしろ大きいと見るべきだ。よって共犯」
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    ダイオキシンの発生を無くすために塩ビを使用しないようにするとか、焼却しないようにするといった方法では、何らの解決にもならない。都市ごみ中の塩ビを除去しても、ダイオキシンの生成を無くすことにはならないということが、今日の專門家の結論である(文献9.)。
    ダイオキシン発生の抑制は燃焼コントロールにある:完全燃焼を目指した燃焼改善により、ダイオキシンの発生を抑制する。ダイオキシンは、排ガス温度が300℃程度の時に発生しやすいので、その温度域の通過時間を短かくし、集塵器入口温度を下げる。(厚生省ガイドラインー文献10.)
    塩ビがダイオキシンを生成する原因物質のひとつであることは確かだが、塩素系のプラスチックだけが発生源ではなく、塩ビをなくせばダイオキシン問題がすべて解決するかのような最近の議論は、やはりちょっと行き過ぎ。ダイオキシンを減らすためには、きちんと完全燃焼してダイオキシンを分解すること、さらに排ガス中に残っているものはきれいに除去してやること、この2つ以外に方法はない。燃やす原料を管理することでダイオキシンが減らせると考えるのは過大な期待。 12
焼却炉の改善で問題解決
    焼却炉の整備が進めば、ダイオキシンは大幅に削減される。1997年の法律改正により、焼却炉の整備や焼却条件の改善が進められた結果、ダイオキシンの発生量は既に大幅に削減されている。 1
2
3
杉山氏(日本消費者連盟):焼却炉を完全にすれば、塩ビを大量に生産してよいというが、それは、地球環境と整合しない。 17 回答:燃やすことはなるべく減らす時代になる。大量生産してよいと言ってはいない。 17
大田氏(毛呂山ごみを考える会):焼却設備を整備することが最良としているが、有害な化学物質で土壌や環境を汚染していることを認識していない。 17 回答:焼却炉を立派にしてどんどん燃やすという考え方ではない。
B君:このあたりの市民運動からの質問は、あまり論理的でない。
17
(右の意見に対して)
B君:これも、余りにも業界的だな。その焼却炉の改善にかかったコストの半分ぐらいは、塩ビ工業会が負担すべきだったのではないか。ダイオキシン発生の最大の要因である焼却炉中の塩化水素の発生は、半分ぐらいが塩ビ、半分ぐらいが食塩だろうから。
17 原氏の主張:塩ビは地球環境という面から見ても有益な樹脂である。悪い面も塩化水素がでるというところなど、無い訳ではない。良い面も悪い面も見て欲しい。ダイオキシンの発生を防止するには、焼却炉を改良する方が合理的である。ダイオキシンと塩ビとの科学的研究では、無関係という文献と関係ありとする文献は、やく半々。平成9年から平成10年にかけて、ダイオキシンの発生量は半分になった。一般廃棄物の焼却炉からの発生量について言えば、1/3ぐらいに減っている。この間、塩ビの焼却量が減ったわけではない。自治体の苦労によって、焼却条件の改善が行われたからだ。要するに、焼却炉の改善だ。 17
井上(生活クラブ生協):最適条件で焼却すれば、ダイオキシンは出ないというのは科学的か。バグフィルターなどで発生したものを取り除いているのでは。 17 回答:一次合成とある温度域で再合成されることの問題か。行動基準と運転管理基準がある。両方相まって、良い燃焼条件と管理で問題を回避している。
B君:この回答も多少ずれている。完全燃焼と温度管理をすれば、ダイオキシンは極めて少量しかでない。
17
(8/1追記)海外で規制の緩い焼却炉を使われることを想定する必要がある(某グローバル企業環境担当者の意見) 0 (8/1追記)(19)輸出が多い企業の立場からすれば当然の意見だが、その影響は考えられているのか? 0
食塩の寄与 大阪大学の植村氏は、ダイオキシン生成について、食塩の寄与率は1%にも満たないとの指摘をしている(環境新聞98年7月18日)。 11 塩ビをやめても食塩などによるダイオキシン生成はなくならない 11
植村氏の主張:食塩もダイオキシンの原因であるということは科学的根拠がない。工業会のデータでは、食塩に焼却炉の中に存在しない活性白土というものを加えて実験をしており、極めて特殊な条件である。日本化学工業会は、水俣病が発生した当時、旧日本軍が廃棄した爆薬が原因だといった。塩ビ工業会の食塩もダイオキシンの原因だというのは、かつての水俣と同じ態度である。塩ビとダイオキシンは関係があることを早く認めて、それを前提として議論を進めて欲しい。 17 植村氏の「ダイオキシンは食塩からはでない」という主張は、科学的にみても間違っているし、また、思い込みを訂正させられるなどといった場面もあって、「No!塩ビ」サイドもミスキャストだったと反省しているのではないだろうか。 17
塩(食塩NaCl)も塩素を発生するが、食塩の場合、融点が800度で高温でも安定。一方塩ビは、65度〜85度で軟化、170度で溶融し、190度以上で熱分解をはじめて塩化水素を発生させる。塩ビは、低い温度で塩化水素を発生させるため、ダイオキシン発生原因として大きい。 11 (1)これに反論するにはダイオキシン生成温度が確かもっと高温だから、関係ないとするか?? 0
火災の時の影響 藤原氏の主張:ドイツの工場の大火災で、発生したダイオキシンによって、様々な食品が汚染された。卵については、バックグラウンドが24に対して、53.7という値になっている。1995年のプラスチック貯蔵倉庫の火災において、土壌のサンプルの分析値が680ppt、などといった汚染が認められている。塩化ビニリデンからPCBの発生も出ている。 17 A君: 「ダイオキシンは焼却しなければ出ません。焼却しなければ塩ビはOKなのでしょうか」。
B君:「いいえ。火事があります。火事が起きればダイオキシンがでます」。
A君:「火事のときには、木材からもダイオキシンがでますが、それは考えなくてよいのですか」。
B君:「塩ビが出すダイオキシンが多いから駄目です」。
A君:「火事の際のダイオキシン発生のような、極めて特殊なケースが、社会全体のリスクの増大にどのぐらい影響しているのでしょうか」。
B君:「定量的な議論では無いのです。いくら少なくても、ゼロでないリスクがある訳ですから駄目なのです。リスクがあるものは、ひとつひとつゼロにすれば、全体としてのリスクが下がるのです」。
A君:「代替品が無い場合でも「No!塩ビ」なのですか」。
B君:「代替品が無い場合には、開発すれば良いのです」。
A君:「開発によって新たなリスクが出ることは容認するのですか」。
B君:「リスクは努力次第でいくらでもゼロに近づけることができるのですから、単に努力が足らないだけです」。(独り言:この発言をしたとき、体に発疹が出た)。
16
     佐々木氏の補足:塩ビが火災に際して、特別の死傷、ダメージを与えたとか、浄化に金が掛かったということはない。 17
    (7/17追記)(米国では)火災によって塩ビから発生するダイオキシンは多く見積もっても20g-TEQ/年程度であることがわかる。この値は、EPA(米国環境保護庁)による米国で大気中に放出されているダイオキシンの年間排出量である9,300g-TEQ/年の0.2%にすぎない。火災による塩ビ起因のダイオキシン発生量は極めて少ないことがわかる。 25
●塩ビに環境ホルモンが含まれる(目次に戻る)
フタル酸エステル類 塩ビのおもちゃには10〜40%以上ものフタル酸エステル類(DINP、DEHP)が含まれているとの指摘がある(グリーンピースレポート98.2)。化学物質の影響を受けやすい子どもたちが、直接触れたり、噛んだり、なめたりする、おもちゃや文具に塩ビが安易に使われていることは問題である。デンマークやオランダでは塩ビの歯固めを使うと許容量以上のフタル酸類を摂取していると警告している。フタル酸エステル類は塩ビ樹脂に不安定に結合しているため、浸出・揮発しやすく、環境汚染や食品への移行が懸念される。軟質塩ビは、農業用のビニルとして使われるため、土壌にフタル酸エステル類が移行残留しやすいことも指摘される。 11
5
フタル酸エステルなどの可塑剤は50年前から世界中で広く使用されており、50年余を経た現在でもそれによる人体への事故例は殆どないと言われ、また「人体への影響はない」との研究発表もされている。 2
       '98年厚生省「内分泌撹乱化学物質検討会」中間報告においても「塩ビ樹脂からの溶出レベルのフタル酸エステルにより人の健康に重大な影響を生じる科学的知見は得られない」として現段階では特別措置を講ずる必要のない旨の見解が示されている。
     フタル酸エステルが女性ホルモン様作用があるのではないかという疑い(いわゆる環境ホルモン問題)をかけられているが、下記文献の研究によりDEHP、DINP共に女性ホルモンとしての作用はないと考えている。(文献) 7
    (7/17追記)フタル酸エステルの内分泌かく乱作用に関する試験は海外においていろいろと行われているが、日本においても1997年、ラットによる内分泌かく乱試験が中立機関によって行なわれ、その結果は「少なくとも、主要なフタル酸エステルについて女性ホルモンとしての作用は認められなかった」と報告されている。 24
    (7/18追記)国際化学物質安全性計画(IPCS:WHO等国際機関の共同事業)において、1992年、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)に関し、物性、ヒト・環境の暴露、体内動態、実験動物を用いた試験結果、ヒトへの影響等について、総合的な評価が報告された。 30
     DEHPは環境庁の「環境ホルモンの疑いのある67物質」のリストに記載されいるが、未だ調査研究の段階で結論は出ていない。現在、欧米の専門機関や日本の可塑剤工業会で研究が進められており、現時点では女性ホルモン様作用は無いとの試験報告がでている。 8
       原氏の主張:フタル酸エステルも最近またまたチェックされている。環境ホルモンの被害は出ていない。むしろ影響が無いのではないかという結論が出ている。塩ビとして何か対処すべき状況にあるとは思わない。 17
    DEHPという可塑剤のTDIはEUでは決まっているのに、日本ではTDIが決められていない。(中略)
DEHPのTDIは、どうも体重50kgの人で、1850μg/日のようですね。1.85mgです。体重1kgあたりにすれば、37μg/kg/日。ダイオキシンの4pg/kg/日の約1000万倍。
B君:しかし、毒性は通常の毒性で、新聞に書かれている「環境ホルモン」という作用ではない。
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    (7/17追記)フタル酸エステル類を含む塩ビは、血液バッグへの使用を許可された唯一の徹底的に試験されたプラスチックである。事実、塩ビを使うことによって、1年間に1人当たり0.1gのフタル酸エステル類が摂取されているが、その毒性は、1年間に0.01gのアルコ−ルを飲む場合の毒性と等しい…。 21
幼児の玩具への規制 (7/17追記)アメリカでは、ヒトの生殖への影響評価に関する国立毒性学プログラムセンター(*)が指名した、フタル酸エステル類に関する専門家パネルが、早産の新生児や乳幼児、妊娠した女性のDEHPへの曝露が心配であると結論した。この専門化パネルのサマリーステートメントで、同パネルは、保育器など、医療用器具に使われるDEHPに高レベルに曝された男の乳児の生殖管の発達には悪影響が起こりうる“深刻な懸念がある”と述べている。また、この専門化パネルは、もし男の乳児や幼児が大人よりかなり高いレベルのDEHPに曝されているなら、生殖管の発達に悪影響が起こるかもしれない“懸念がある”とも述べている。最後に、このパネルは妊娠した女性が一般環境中のDEHPに曝露することでその子どもに悪影響が起こるかもしれないことが“懸念される”と述べている。 20 (15)幼児の方が影響を受けやすいというのは理解できるが、そのあたりは検討されているのだろうか??
しかし、医療ならば「塩ビを使わないことのリスク」と「使うことのリスク」が併記されないのは不公平なような気もする。
0
(7/18追記)日本で入手されたサンプルの分析から次のような添加剤が検出された
・塩化ビニル製おしゃぶりからは、ビスフェノールA*が407ppm検出された。これは酸化防止剤として使用されていると考えられる。
・塩化ビニル製のボールからは、フタル酸ジイソノニルが検出されたが、微量であったため可塑剤として意図的に入れられたものではなく、混入と見られる。
・塩化ビニル製のレインハットからは、可塑剤としてフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が267,000ppmとフタル酸ジイソノニル(DINP)が14,800ppmが検出されたほか、ビスフェノールA176ppm、有害重金属のカドミウムが1.18ppm、鉛が179ppmが検出された(安定剤として使用されたものと考えられる)。
29 (7/18追記)(17)たしかに何でも口に入れる幼児を持つ親として、安全だといわれても心配するのは理解できる。幼児用に使う量はたいした量ではないと考えられるので、そこだけでも自主規制(or禁止)したらどうだろうか?
0
(7/18追記)塩化ビニル以外にも、子どもの柔らかい玩具に使える素材はある。添加剤を多種、多量に必要とする塩化ビニルという素材を、子どものおもちゃに使用することはもうやめるべき。 26 (7/30追記)C先生: そろそろ環境ホルモン騒ぎも終演時間が近づいてきているように思える。最終幕の第一場が始まったのではないだろうか。
 今回のこの規制で注目すべきことがいくつかある。まず、DEHP、そして恐らくDINPも、「本当の意味では環境ホルモンではない」ことだ。単に、「環境ホルモンリストに入っている物質」だ。
 といっても、「本当の意味での環境ホルモン」をどう定義するかが問題だが、「その物質についてこれまで知られている通常の毒性を示す用量をはるかに下回る用量でも、体内でホルモン様作用をすることで、望ましくない効果を示す物質」を定義としたいのだが、DEHPの毒性は、まさに通常の毒物としてのものであって、たまたまその作用する細胞が、精子の元となる細胞であるにすぎない。
(中略)
C先生:今回の規制、単に安全サイド、というよりも、「超超安全サイドの議論」で決まったものだ。特に、DEHPの他のおもちゃへの使用禁止など、その効果はほとんど無いに等しいだろう。むしろ、「環境ホルモン騒ぎの膜引きのために行われた規制」、とも読めないこともない。すなわち、もしも環境ホルモンなる騒ぎが起きなければ議論も行われれず、またそれならそれでも充分な種の規制だったのかもしれない。
(中略)
A君:おしゃぶりの規制をよくよく読めば、1日に2時間も普通の塩ビ製品をなめるひとはいないだろうから、通常の塩ビ製品を用いている状況で、ヒトが可塑剤を体内に取り込む最大量のケースを示しているようなもので、むしろ「普通の用途における塩ビ中の可塑剤の安全宣言」に近いものですね。
33
(7/18追記)こどもがおもちゃを口にいれる時間などを総合して考えると、耐容一日摂取量に近い量のフタル酸エステルを、塩ビのおもちゃから摂取してしまう子もでてくるので、とても心配。 27
(7/30追記)厚生労働省の審議会:乳幼児が口にする塩化ビニル製のおしゃぶりやおもちゃに環境ホルモンの疑いがあるフタル酸エステル類の一部物質を使用禁止とする食品衛生法の規格基準改正案に合意した 32
(2002/6/19追記)厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会は11日、フタル酸エステル類の一部物質を塩化ビニール製のおしゃぶりや玩具、食品用のラップや手袋などに使用禁止とする規制案を了承、厚生労働省に答申。同省は近く食品衛生法の規格基準改正を告示。猶予期間の後来年夏から実施予定。同法で塩ビ製品が規制されるのは初めて。規制対象は、乳幼児が口にするおしゃぶりや歯固めではフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)とフタル酸ジイソノニル(DINP)の2種。通常口にしない玩具や調理用具、食品保存容器ではDEHPのみ。これらは内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)の疑いも指摘。 36
(8/1追記)PVC製プラスチックの可塑剤として用いられているフタレート類を含む玩具が乳幼児に与えるリスクについて、欧州議会は、「公衆に懸念が広がっている」と指摘した。議会は、EUが実施中のリスク評価の結果を待つとしながらも、フタレート類が環境ホルモンとして作用しているとの主張に鑑みて、代替物質を探すよう産業界と欧州委員会に促している 34
    (7/18追記)食品用途以外の主な用途は、ビニールシート、農業用ビニールシート、建材等である。また、(社)日本玩具協会によると、おもちゃのうち、歯固め、おしゃぶりには、1社を除き、ポリ塩化ビニルは用いられていない。 30
(7/18追記)(18)たしかに代替品のリストを挙げたほうがいいよね。 0 子供の安全については、優先度は高いと考えるので、DEHPの使用禁止には敢えて反対しない。しかし、「疑わしいものは使わない」は、代替品の安全が証明されていない限り、より安全になったかどうかは不明のままであるため対策になっていないと考える。代替品についてDEHPを使ったものと同等のレベル(広範囲に精度高く)で精査してより安全である事が証明すべき。より安全なものが見つかる事を子供達のために祈る。 13
(7/18追記)厚生(労働)省は3年前から子どもがどれくらい汚染されるか調べていた。(でも、危ないかもしれないから調べてるのなら先に警告して欲しい!!)
Q:子どもは特に口に入れるわけだが、フタル酸エステル類を可塑剤に用いた乳幼児向けのおもちゃについて、厚生省は食品衛生法上どのような対応をしたのか。
A:現在の食品衛生法上の施行規則で定めるおもちゃの基準は、例えばフタル酸エステル類についての基準という形になっていない。1998年当時、今後お子さんのおもちゃによる曝露がどの程度あるのかということを研究していくようにという指摘をもらった。
28 (7/18追記)塩ビに限らず親が注意すればいい問題だともいえるので、あまり過激に反応するのもどうかなと思う・・・ 0
代謝と分解性      フタル酸エステルは、自然界での良分解性や易代謝、排出性も確認されている。(文献) 7
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    フタル酸エステル類の体内の代謝はかなり早いということのようですし、ダイオキシンなどのような体内蓄積性物質と、取扱いを変えるべきだと考えますが 16
塩ビの業界団体である塩ビ食品衛生協議会の自主基準リストには、環境ホルモンとして指摘されているノニルフェノールや分解の過程でノニルフェノールを生成する界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが使用できる添加剤としてリストアップされている。 11 DEHP、DINPは、塩ビの可塑剤として添加されたものだが、ビスフェノールA、及びノニルフェノールは、意図的に添加していない。(文献) 7
(7/18追記)塩ビのおもちゃには、(中略) 塩ビ安定剤としてビスフェノールAを含有するものがある、 添加した酸化防止剤が分解して生成したノニルフェノールを含有するものがある 27   ビスフェノールAとノニルフェノールは添加剤として使用していないが微量検出されたとのことで調査中。ビスフェノールAとノニルフェノールについてもDEHPと同じく環境庁のリストに記載されているが、未だ調査中・研究中の物質で結論は出ていない。(2) 8
(7/30追記)ノニルフェノールは洗浄剤の影響の方が大きい 13
(7/30追記)B君:環境ホルモンの本当の終幕は、ビスフェノールAを規制するかどうかが決まる瞬間だろう。 33
(10/25追記)環境庁の内分泌撹乱化学物質問題検討会がビスフェノールAを含む8物質を今年度からリスク評価する 35
●塩ビの有用性とリスク管理(目次に戻る)
予防原則とリスク管理 化学物質に対する大幅な規制、また、従来の考え方とは異なった、もっと厳しい規制が必要。ホルモンを撹乱すると分かった物質はすべて、製造・使用を禁止すること。また、疑わしいと思われる物質に関しても、「シロ」と確認されるまで製造・使用を禁止する必要がある。「クロ」と分かってから規制したのでは手遅れだから。新しい化学物質の開発にも網をかける必要がある。食品や薬のように直接体内に入るものはもちろん、プラスチックの容器や添加剤などのように間接的に摂取する可能性のあるもの、環境中で使用されめぐりめぐって体内に蓄積される可能性のあるものに関しても、従来の毒性に加えて、内分泌を撹乱する可能性があるかないかのチェックが義務づける必要がある。 10 5.「この世に安全なもの、完全なものは何ひとつない。」と言われるが、食品類でも医薬品でも全てのものが 一面のリスクと有用性とのバランス の上に成り立っている。塩ビ素材製品も他のプラスチック素材製品も共存の上、環境等への負荷を少しでも減じながら社会に役立てて行くことを考えるべきではないかと考える。 2
(3)このあたりは塩ビ反対派の人はどのように反論するんだろうか?? 0  佐々木氏の補足:内分泌撹乱物質は、基本的には野生生物の疫学調査を行い、それからヒトといった順番でよい。予防原則が安易に使われている。予防原則はころばぬ先の杖である。その方法が適切でなかったとしても、そのことによるデメリットが少ない場合適用すべきことである。 17
(4)このあたりは塩ビ反対派の人はどのように反論するんだろうか?? 0  社会にとってある物質が必要か否かを判断する際には、その利便性と経済性、環境性、さらには代替品のメリツト、デメリツトを総合的に判断して、そのモノを排除するか残すべきかを考えるというのが正しい姿勢であるはず。ダイオキシンの発生に寄与しているものはすべて排除しろという諭理は極端であって、冷静な議論を社会に期待する。 12
        B君:フタル酸ジエチルヘキシルのリスクは確かに「ゼロに近いが完全にゼロではない」。しかし、他のプラスチック材料では訳のわからない添加剤が使われている可能性もある。フタル酸ジエチルヘキシルの場合には「知られたリスク」だから、有る程度許容するといった考え方が成立しそうにも思える。
F君:ということは、塩ビそのものが絶対駄目という理由は無いということですか。
C先生:そうとも言える。シナリオ次第。
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用途が広いということ フタル酸エステル類には多数の種類があるが、よく使われているのがDOP(フタル酸ジオクチル)やDBP(フタル酸ジブチル)。軟らかい塩ビをつくるためには、DOPと樹脂を等量使う。このDOPは、塩ビ製品としてはシート、レザー、電線被覆剤、農業用フィルムなどに用いられており、その他にニトロセルロース、メタクリル酸、塩化ゴムなどに添加されている。爪化粧品にも使用が認められている。DBPは、可塑剤以外の用途としては、ラッカー、接着剤、レザー、印刷インク、セロハン、塗料などに用いられている。また、アイライナー、口紅、口臭消し、入浴化粧品以外のすべての化粧品に、使用制限なしで認められている。   塩化ビニル製品は、加工性・強度、安全性、機能性、経済性に優れ、社会インフラから日用品、医療材料に至るまで幅広く使用され、社会生活に大きく寄与している。塩ビ樹脂は50年余の実績があり、世界でも大変広い分野で使用されている。塩化ビニリデン樹脂は空気や水分の遮断性に優れ、家庭用ラップフィルムを始め、魚肉・食肉などガスバリア性を必要とする分野のフィルムとして広く用いられれる。食品の保存に役立つということが生ごみを減らすことにもつながり、ごみの削減にも貢献すると考える。 2
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坪田氏:塩ビでないといけない用途はあるのか。わざわざ塩素を含んだ製品を作る必要があるのか。 17 (7/18追記)塩ビを使っているのはそれなりの理由があって、例えば、通気性が他のプラスチックよりも少ないので、薬液の保存性が高いとか、強度が高いので、使用時・運搬時に破れる可能性が低いとか、さらには、柔軟性が高いので、患者に対する負担も軽減できるとか、そんな塩ビの特性による治療のリスクの低減と、DEHPを使用することのリスクの増大とを総合的に判断すべき。 31
○家電製品、OA機器の電源コードは、現在の「電気製品取締法」では、事実上 「塩ビ」しか使用できない。
○現在、通産省では、家電業界にも「ノンハロゲン化コード」の使用が可能になる ための改訂作業を進めている。
○コストが高く、性能が悪い、ノンハロゲンコードは、家電業界では誰も使いたく ない。(最近の試験によれば、現在の各社の社内基準ではほとんど使用出来ない。)
○機器内部の配線には、「電取法」が適用されないので、一部の家電メーカーは 「脱塩ビ配線」を「大衆迎合」セールスポイントにしている。(内部配線には、可動部がないので、少々堅くても使える)
○耐捻回性(ねじれ特性)や、難燃性、など塩ビに勝る製品はないが、家電業界は「善良な?消費者が好まない物」は使わないのが、原則だから法律が改正されれば、即塩ビ追放になるだろう。
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A君:でも、家庭用のゴミに混じるような塩ビ類は、止めたほうが市民社会の化学全体に対するイメージの向上に有効だと思います。
B君:家庭向け包装材料としての塩ビ類の量は、実際知れている。塩ビ問題を考えるときにいつでも出てくる塩素バランスの話だが、塩ビ全体の製造を止めると、それは大変なことになるだろう。しかし、包装材料ぐらいの塩ビを止めることで、かえって丁度良くなるのではないだろうか。包装材料としての塩ビをやめたときの業界としての損失が、中小企業に偏って出る可能性、これが否定できないところが残る問題だろうか。実際、金川社長の信越化学にとっても、そんなに実害がでる訳ではない。
C先生:化学工業関係の人々に、そろそろ家庭向け包装材料としての塩ビ類は、止めた方が良いのだと思うが、どういう個人的な見解なのかと聞くと、大多数は「その方が良い。それでそれでなくても評判の悪い化学企業の少々のイメージ向上にはなる」との意見なんだ。
19 (5)大変よいアイディアだと考えるがどうだろうか?? 0
使用頻度 日本のプラスチック生産量は、アメリカについで第二位だが、その特徴は、塩ビの比率の高さにある。樹脂の原材料の消費量を見ると、全体の26.4%を占め、断トツ。世界が塩ビから撤退している時期に、なお生産力を増やしている。 10 年を追う毎に塩ビバッシングは厳しくなるが、塩化ビニル樹脂の需要は、日本を除き、伸び続けている。年率の伸びで、米国は7%、EUは2〜3%。日本は減少しています。環境問題の影響もありますが、不景気のインパクトが大きいと判断している。 13
塩ビバッシング     塩ビ製品パッシング によって、塩ビ樹脂原料段階から各種の素材加工、各種の部品加工、各種の製品加工、下請加工、製品販売段階に至るまで、どれだけ多くの就労者や家族がその影響を受け、経営基盤や生活基盤を脅かされる可能性がある。雇用不安も高まり、そしてそのツケは日本全体及び国民に回ってくる。 2
LCA的には
塩素は岩塩から多大なエネルギーをかけて電気分解してつくっている。岩塩を電気分解すると塩素と苛性ソーダができる。塩素は、苛性ソーダの副産物でもある。このソーダ工業の年間電力消費量は100億kWhを超えており、化学工業全体の18%にあたります。決して省資源とはいえない。 11 塩ビは、石油40%、塩60%でできているため、限りある石油資源の節約になる 23
現在、全国の焼却施設では塩ビから発生する塩化水素を中和させるため、大量の苛性ソーダを投入している。もともと、苛性ソーダと塩素は、岩塩を電気分解することでつくられており、エネルギーの無駄ではないか。 11
柿沼氏(筒中プラスチック):塩ビを削減すると、どういった方向に向かうのか。代替物のリスクを含めて。
回答:採血バックも塩ビ以外の素材が出ている。代替素材がアプリオリに良いと思っている訳ではない。リスク評価をした上で、どちらを選択するのかという立場である。可塑剤、安定剤を必要とする塩ビよりも、別のものが良いかもしれない。LCAで塩ビが良いといっても、その評価はまだ確立していない。電解エネルギーがどのぐらい計算されているのか。大気汚染、水質汚濁、埋め立て影響なども評価できていない。海外のものを含めて、データが必要。
17 (6)CO2とエネルギのデータだけだと、確かにこういった反論がでることになる。おそらく、大気汚染、水質汚濁、固形廃棄物はほとんど影響ないと予想されるがちょっと取り組んでみても良いのではないか?? 0
(右の質問に対する)回答:市民団体ゆえにできない。行政と学者がやるべき。アスベストの場合に、ロックウールとの比較を行った。発ガン性の比較を行った。ゼロではないが、ロックウールの方が良いということで選択された。代替品のリスクアセスもアメリカ並にやって欲しい。 17 新井氏:環境対策はトータルで考えなければならないが、塩ビを代替品に変えた場合の悪影響について調査しているのか。 17
塩素の有効利用 塩ビは、苛性ソーダと同時に生産される塩素の有効利用であると業界では主張しているが、1965年以来カセイソーダと塩素の需要バランスは逆転し、年間100万トンの塩素が不足している。そのため、海外から塩素を輸入している。塩素輸入量の8割強がEDC(二塩化エチレン)という塩ビの原料。塩ビ用の塩素需要は96年度で195万トンだから、もし、塩ビ生産量が半減したとしても、国内の塩素が余ってしまうことにはならない。 11 右のような主張は昔のものだと思われる。現在は聞かないと思うが・・・ 0
村田氏(循環資源研究所):塩ビをリサイクルすると塩素が不要になる。食塩製造時の塩素をどのように処理するか 17 回答:塩ビが価格が安いのは、苛性ソーダが主製品で塩素がタダだからというのは全く間違い。むしろ、塩ビを作るために塩素を作っている。 17
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製造関係者や地域住民の健康被害 関根(グリーンピース):塩ビ工場からもダイオキシンが発生している。その発生メカニズムを教えて欲しい。すべてのモノマーの工場がそのようなプロセスを持っているか。マテリアルリサイクルの際にどのぐらいの新品を入れるか。
 
17 回答:塩ビ工場、塩ビモノマー工場からである。一部触媒工程があって、そこでごくわずかなダイオキシンが発生すると言われている。高沸点不純物廃液として出てくる。これを焼却処理をしている。極一部のダイオキシンは廃水中にも出る。これが規制対象になった。これに対しても、廃水処理をしているので、排出量は0.2g/年/日本全国程度である。 17
製造時に、塩ビモノマーやダイオキシンなどの有害物質が発生するため塩ビは製造時から、労働災害や環境汚染など、さまざまな被害を生む。塩ビモノマーとダイオシン(2,3,7,8-四塩化ダイオシン)はいずれもIARC(国際がん研究機関)で、人に対して発がん性がある物質としてリストアップされている化学物質。塩ビモノマーは、その製造過程で一部が環境中に放出される。塩ビ工場からは、ダイオキシンも発生する。通産省は、98年7月に、塩ビ製造業からのダイオキシン排出量を排ガスや排水をあわせても年間1g以下であるという予測値を発表した。しかし、グリーンピースUSAの報告書によれば、塩ビ10万トン当たりのダイオキシン発生量は最低でも5〜10g、イギリスの化学メーカーICIのデータでも13.5gとしている。ここから国内の塩ビ生産量を考えると、262〜354gものダイオキシンが発生していることになる。国内外で、塩ビの製造関係者や地域住民の健康被害が考えられる。(ダイオキシンはすべてTEQ換算:2,3,7,8-四塩化ダイオシンに毒性換算したもの) 11
藤原氏の主張:製造段階における塩ビモノマーの発ガン性の評価ではグループ1である。すなわち、発ガン性がある。かつて塩ビ病が発病した。最近でも、漏れないように管理されているはずなのに、PRTRの排出実態では、1937トン/年ものモノマーが出ている。アメリカの4倍もの量である。 17 (16)これは塩ビに限った話ではないが、気になることは気になる・・・ 0
環境汚染の輸出 塩ビ産業は、貧困層の多いアジアの国々やアメリカでもアフリカ系アメリカ人の多い地域に建設され、労働災害や環境汚染をひきおこしている。日本の塩ビ企業、信越化学の子会社シンテックは、米ルイジアナ州コンベルトに、日本の生産量の4割にのぼるような大型の塩ビ工場を計画している。計画予定地は、住民のほとんどが貧困層のアフリカ系アメリカ人。グリーンピースUSAや地域住民は、これに対し強い反対運動を展開した。その結果、シンテックは計画を縮小して同州のイバビル郡の、すでにダウ・ケミカル社が操業している塩ビ工場の隣接地に塩ビ樹脂工場を建設する計画に変更した。しかし、同州で、すでに塩ビ工場のあるモスビルの住民は「大気汚染の警報器が週に5〜7回も鳴って、住民はその度にシェルターに避難する生活を強いられている。引っ越しもままならない貧困の中で、ガンや子どもたちの精神障害が多発していると訴えている。 11 (8)どうしてそんな所へ工場を輸出するのか? 0
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昔の事故 昔米軍兵士が輸血用の塩ビ管で死亡した事件もあったが? 14 ベトナムで米軍兵士に起こったトラブルは、過度に輸血、輸液したため、限度以上のDEHPが体内に入ったから。その後、溶出低減の措置がとられており、この種の事はもう起こらないはず。
13
以前から危険性が指摘されていたのが、可塑剤などによく用いられているフタル酸エステル類、血しょうに溶け込み静脈をふさいだりすることが報告されていた。 9
(7/30追加)塩ビ製点滴チューブが規制になるかもしれない。しかし、この製品については、以前にも一時期塩ビ製を排除したことがあるが、どうやら、塩ビ製の優秀性が認められたのだろうか、再び塩ビ製に戻ったという状況がある。どうなるやら。医療現場というのは、いつでも緊急状態であって、しかも、明確な病気のリスクが存在している。だから、通常の価値観が通用しない場所なんだ。 33
発ガン性 有機リン系のTCEPは難燃性の可塑剤として塩ビ製壁紙などに使われるが、TCEPはアメリカの動物実験で発がん性が指摘されている。94年には、TCEPが壁紙から高い濃度で室内に蒸発することが、大阪大学の植村振作氏によって確かめられている。 11 発癌性に関しても最近IARC(国際癌研究機関)において、ランク2B「人に対して発癌性がある可能性がある」からランク3「人に対する発癌性について分類出来ない」へ変更された。 8
(7/17追記)2000年2月、WHO(世界保健機構)の内部機関である国際がん研究機関(IARC)は代表的なフタル酸エステル(DEHP)についての発ガ性評価を、従来の「グループ2B」(人に対して発ガン性があるかもしれない)から「グループ3」(人に対する発ガン物質として分類できない)に変更し、安全との見解を明確に示しました。この「グループ3」は、われわれが日常生活で摂取している「お茶」や「水道水」などと同じです。 24
催奇形性 フタル酸エステル類は、催奇形性を引き起こすことが報告されていた 9 (7/18変更) 国際化学物質安全性計画(IPCS:WHO等国際機関の共同事業)において、1992年、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)に関し、物性、ヒト・環境の暴露、体内動態、実験動物を用いた試験結果、ヒトへの影響等について、総合的な評価が報告された。主な内容は次のとおり。
(1) 環境中に広く存在し、空気、水、沈積物、生物相といったサンプリング対象のほとんどに見いだされるが、300ng/m3にも及ぶ濃度のDEHPが大気中で測定されており、一方、飲料水・食品による暴露量は少ないこと、
(2) 混餌(10-20g/kg)投与した複数の試験では、精巣萎縮が試験開始2、3日以内にみられたこと、この萎縮は可逆性であること、
(3) 混餌(0.5-2g/kg)投与でマウスに奇形がみられること、
(注:かなり大量投与でしか影響がないと読み取れる
30
他の問題物質 (7/18追記)ビスフェノールAはホルモンかく乱作用を持つ(人工エストロゲン)ことが指摘されている物質。ビスフェノールAを原料にしているポリカーボネートの学校給食用食器や哺乳ビンについては、教育委員会がその食器の使用を止めたり、メーカーが哺乳ビンの素材を変更したりしてきた。 26 (7/18追記)米国立衛生研究所の専門家委員会(第一章の最後の方、1-11ページ)
「低用量のビスフェノールAが特定の作用点に影響するという信頼できる証拠が存在する。しかし、いくつかの異なる研究室においてビスフェノールAの低用量作用は再現できなかったという信頼できる研究も存在する。また、このようなネガティブな結果は一貫している。従って当サブパネルは、ビスフェノールAの低用量作用が普遍的で再現性のある発見であると最終的に確立されたとは確信していない。さらに、低用量作用が観察された研究においては、メカニズムが不明であり(ホルモンに関係しているのか、それ以外か)、生物的なrelevance(関連、妥当性)も不確かである。」
31
プラスチック添加剤で、内分泌撹乱物質作用があるものとしてリストアップされているものに、アジピン酸エステル類がある。脂肪酸エステルともいうこの添加剤は、塩ビや合成ゴムなどによく用いられる耐寒性可塑剤。このアジペート類の代表格が、アジピン酸ジオクチル(DOA)で、塩ビ、スチロール、ニトロセルロースなどに添加されるが、とくに塩ビで耐寒性可塑剤として利用される。耐光性・耐熱性にもすぐれていることから、寒いところで用いるレザー、フィルム、シートなどによく使われる。アジピン酸ジイソデシル(DINA)もまた、塩ビによく用いられるが、フタル酸エステルと併用されるケースが多くなっている。アジピン酸ジアルキル610(D610A)は、食品包装用の塩ビフィルム、耐寒性のレザー、フィルムなどに用いられている。そのほか、内分泌撹乱物質としてリストアップされている添加剤には、難燃剤としてよく用いられるポリ臭化ビフェニール類(PBBs)、紫外線防止剤としてよく用いられるベンゾフェノン、安定剤や着色料などに用いられる水銀カドミウムといった重金属化合物がある。 9 (7/18変更)(11)重箱の隅のような気もするが、これらは大丈夫なのだろうか? 0
(8/1追記)欧州議会は2001年4月3日、PVC(ポリ塩化ビニル)製プラスチックに安定剤として鉛およびカドミウムを添加することを段階的に禁止するEU(欧州連合)法を求める決議を採択した。この中で欧州議会は、欧州委員会に対して危険物質の販売・使用に関する現行EU指令(76/769/EEC)を改正してPVCにこれらの重金属を加えるのを禁止することや、これらの重金属を含むPVCのEU域内への輸入を禁止する法案を策定することを求めている。 34
    (7/17追記)塩ビは、子どもの突然死の原因だと非難されていたが、それも正反対であると判明している。考えられる多くの原因のひとつは、多量の埃を吸着するマットレスを使う事である。塩ビや別のプラスチックフィルムを使えば埃の吸着が防げるのである。
塩ビは、炎症やアレルギ−反応を引き起こすとの非難を受けたが、それも正反対であると判明している。多くの病院、特にアレルギ−の患者を専門としている病院が、建材として塩ビを今では使っている。特定の種類の木材や良く処理されていない天然ゴム(ラテックス)のような多くの天然素材が、激しいアレルギ−反応を引き起こす可能性があると判明したからである。
21
●(各論)塩ビのリサイクル・廃棄時の問題(目次に戻る)
塩ビのリサイクル 質の安定した産業廃棄物の廃プラスチックとちがって、生活ゴミのプラスチックは素材ごとに分別することが困難。そのため、PETやトレーの例外を除いて、いっしょにまとめてリサイクルされている。そのとき、塩ビは、リサイクルの障害になる。マテリアルリサイクル(再生利用)の障害に多種類のプラスチックをマテリアルリサイクルするには、そのまま溶融固化して製品に成型する複合固化の方法がある。ところが、塩ビは溶融温度が他のプラスチックとちがうのでうまく溶け合わず、単独でリサイクルする必要がある。油化にもう一工程必要です油化はプラスチックを溶融・熱分解して発生したガスを分溜して生成油を取り出すシステム。塩ビの塩素やPETの酸素がネックになるため、分別や脱塩素の工程が必要になる。高炉(溶鉱炉)では鉄鉱石を還元させるためにコークスが使用されるが廃プラスチックを還元剤として代用する方法がある。この方法でも、製品の腐蝕防止のため塩素分を嫌う。塩ビを除去するか脱塩素処理を行なう必要がある。塩ビ業界は、NKK京浜製鉄所に脱塩素設備を設置して、塩ビの高炉還元技術を宣伝している。しかし、逆にそれだけコストが他のプラスチックよりもかかる。セメント原料プラスチックをセメントキルンに投入してセメントの原料や燃料として利用する技術もある。普通セメントはJIS規格で塩素濃度が決められているため、生活ごみのプラスチックを受け入れる際は、塩素バイパスを設置して塩素分を除去するか、塩素分の多いエコセメントを製造するしかない。 11 電線被覆材、パイプ、農業用ビニルフィルムなどの塩化ビニル製品のリサイクルを進めている。また新たなリサイクル・システムの構築を行っている。塩ビは単独であるなら他のプラスチックよりリサイクルに適している。 1
2
3
    塩ビは、マテリアルレベルでリサイクルしやすい特性があるから、農業用ビニルについては、金川氏の主張の通りリサイクル率も50%にそのうちいくだろう。家庭から出るプラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレ
ン(PP)、ポリスチレン(PS)、PET、塩ビなどの混合物で、これが分別されてマテリアルリサイクルされるとは考えられない。
19
    原氏の主張:リサイクル技術の開発を進める。ダイオキシン問題と直接関係無いが、資源循環型社会の実現を目指す。通常のプラスチックのマテリアルリサイクル率は12%。それに対して、塩ビのリサイクル率は19%。 17
伊藤氏(ノリタケカンパニー):リサイクルはどの分野で行われていますか、身の回りで見たことがない。 17 回答:パイプなど硬質塩ビの分野で行われている。一般の日用品からのリサイクルシステムは出来上がっていない。政府も循環社会基本法を作る。リサイクル審議会における審議が基本になっている。 17
多田氏(久米設計):品質が落ちるダウンリサイクルなのではないか。 17 回答:ダウンリサイクルという言葉は聞きなれないが、ほとんどケースで、元の品質のプラスチックには戻りにくい。パイプは水平に近い。農業用ビニルはサンダルになったり、自動車の敷物になったりしている。色々な添加物を加えるから具合が悪いというが、それを含めて環境に悪影響を与えないようにしている。 17
      (7/17追記)塩ビは実際に使用されたプラスチックのマテリアル・リサイクル量としてはプラスチックの中で最も進んでいます。 22
リサイクルの問題 有害物質を含む製品をリサイクルすれば、(1)リサイクル品に有害物質が含まれる可能性がある、(2)リサイクル時の環境汚染を招く恐れがある。農業用ビニルのような軟質塩ビには、可塑剤として使用されるフタル酸エステル類などの添加剤が使用されるが、塩ビ製の農業用ビニルのリサイクル工場を見学した際、添加剤等が破砕工程の摩擦熱や乾燥機の熱により工場内空気へ揮散しているのではないか、洗浄水に溶出しているのではないかとの強い疑念を抱かせた。リサイクル施設には排ガス処理装置はなく、排水も泥を沈殿させる以外、未処理のまま下水に流されていた。私どもは、分析機関に依頼し、農ビフイルム2種と農ビ再生原料の「グラッシュ」中の添加剤調査を実施したところ、農ビ「ロジトン」(アキレス社製)からフタル酸ジイソノニル(DINP)が28%、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)が2.3%、「ノービエース」(三菱ノービ社製)からはDEHPが25%検出された。一方、再生原料中のフタル酸類の濃度はDEHP16%、DINP0.31%で、再生原料中のフタル酸類は農ビ製品中より14%〜8.7%も低くなっていた。また、ビスフェノールAとノニルフェノールも農ビ、再生原料の双方から検出された。 6    
塩ビは社会費用を払っていない 現在、一般ごみの処理費はすべて税金でまかなわれるため、塩素系樹脂など処理費の高い製品の場合でも製造企業は何の負担も強いられないシステムになっている。ダイオキシン対策の焼却技術や排ガス対策に必要以上の莫大な社会的コストを費やすことになる。 5 (12)これは一理ある。少しは自主的に行動をおこしたほうが良いかもしれない。 0
C先生:そうなんだ。塩ビは、単にコストが低いことで勝負している部分がある。それ以外にも勿論、塩ビでなければできないような製品もある。例えばビニールホースがその例だ。ビニールホースは、柔らかさと耐久性・耐候性の両立が要求されるので、結構高機能製品なんだ。また、電線の絶縁被覆も塩ビが一番。もしもそれをポリエチレンでやろうとしたら、なんか難燃剤を入れたり、たわみやすくするために添加剤を加えたり、訳のわからないことを色々とやらなければならない。しかも、エコ電線で得られる消費者のベネフィットは全く無い。
 その低コストだけが武器という塩ビの場合には、その存在のために、社会的にコストを押し付けていることになる。もしも、塩ビが無ければ、高炉燃料化プラントも上手く動くだろうし、油化も楽かもしれない。もっとも油化にはペットも禁物なので、どうか分からんが。焼却灰の完全なセメント化をやるには、食塩を含む生ゴミを別途処理すべきなので、塩ビが家庭ごみから無くなってもすぐに問題解決とはならないが。
15
どうも、材料のリサイクルが21世紀社会にとって必須としたら、塩ビの存在によって生ずる各種コストを誰が負担するか、これが問題。そのコストを塩ビ業界が負担し、製品価格に転化するのであれば、われわれは文句は言わない。これは、塩ビに限らず、すべての材料・製品に言えることだ。塩ビの有る部分が環境適合性であることも、否定はしない 19
鉛放出 塩ビに含まれる(安定剤の)鉛が燃焼時に大気放出されることについてどのように考えるか 14 鉛汚染の件は、塩ビ製品の形の間は溶出は無いか極めてわずかですので問題は少ないと考えているが、焼却された場合、塩化鉛の蒸気圧は大きいので排ガス側に出て、問題。なるべく使わない方が良いと考えるが理解有る学者から、塩ビの安定剤に限って特例扱いにしようとの提案もあると聞いている。(止めにくい用途もある) 13
●(各論)塩ビに関する情報公開(目次に戻る)
塩ビに関する情報公開 塩ビ業界は自分の作る製品がダイオキシンの発生源のひとつであるという責任は今後も持ち続けてほしい。ごみは消費者が出すもので我々は関係ないといった態度は通用しないし、具体的にはダイオキシン対策を考えた完全燃焼の方法を業界全体として研究していくこと、また、処理費用や再生コストの面でも世界の業界が連携して共通の方法で分担していくといった地球的な取り組みが望まれる。世界のすべての塩ビ製品にそういう費用が含まれていて、国際競争力も平等という形を協力して作り上げていくことが大切。また、時には市民運動の言い分にも耳を傾け、認めるべき点は認め、反論すべき点はきっちりと反論していく。そうした情報を一般に向かって分かりやすく着実に発信し続けていく努力がなければ一般の人々の不安を払拭することはとうていできないと思われる。その意味で、広報活動は非常に大きな意味と必要性を持っている。実質的なリスクと市民が持っている概念上のリスクのギャップをどう埋めていくか、リスク情報をどうやって正しく伝えていくのかといった、いわゆるリスクコミュニケーションのための広報は、これからますます重要になってくるはず。 12 (13)右の意見にどのように回答するのだろうか? 0
すべての化学物質の製造・販売・使用に関して、情報が公開されるべき。また、表示を義務づける必要があり、とくにプラスチックの場合はどのような材料を用いているのか、どんな添加剤が使われているのか、表示をさせる必要がある。 10 材質表示については、必要と認めた場合には表示する。 3
萩原(塩ビとダイオキシンを考える会):プラスチック容器の中の化学物質の調査したが、塩ビ中に79種類もの物質が含まれていると知って驚いた。その情報を開示せよ。 17 回答:意図して性能を向上させるために入れるもの以外にも関連する物質に加工工程で変わった、あるいは、不純物が混じったということもある。できるだけ開示をする姿勢には賛成。加工業者の協力を求めたい。 17
添加剤の公表 環境ホルモンを含めて、プラスチックの安全性を考えていくときに、欠かせないのが添加剤の存在である。業界はその添加剤のリストを公表していない。 9 (14)確かに気になる情報だが、企業機密の問題から難しいのだろうか? 0
添加剤などの情報開示については、私どもは消費者の知る権利に基づき、食品に直に接する製品の成分の公開を求めるのは当然の事だと考える。成分による差別化がより激しいと思われる化粧品についても2001年よりこれから成分全面表示に切り替わった。PRTR制度が施行されれば営業秘密が認められた場合以外は一定量以上の対象物質については登録が義務づけられる。 5

★出展詳細
0 伊藤の考えでは・・・
1 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/066.htm
2 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/069.htm
3 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/071.htm
4 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/073.htm
5 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/058.htm
6 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/ta20501.htm
7 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/tar502.htm
8 http://www.jca.apc.org/noenbi/letter/tmr503.htm
9 http://www.jca.apc.org/noenbi/info/Q6.htm
10 http://www.jca.apc.org/noenbi/info/Q7.htm
11 http://www.jca.apc.org/noenbi/info/QX.htm
12 http://sankyo.cup.com/culture/PCDD.html#文献4
13 塩ビメーカの方からの私信
14 伊藤から塩ビメーカの方への質問
15 http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/EcoMarkPVC.htm
16 http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/NoPVCcpgn.htm
17 http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/NoPVCSymp.htm
18 http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/DEHP.htm
19 http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/PVCKanakawa.htm
20 ピコ通信第35号 2.【脱塩ビのページ】:http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/tsuushin/pico_master.html
21 http://step.sopia.or.jp/kotoku/no25chlo.htm
22 http://www.vec.gr.jp/index.html
23 http://www.vec.gr.jp/kankyo/kankyo.htm
24 http://www.vec.gr.jp/endocrin/endocrin.htm
25 http://www.vec.gr.jp/Kasaijino-anzensei/info-anzensei.htm
26 http://www.greenpeace.or.jp/press/01/release/20010615.html
27 http://www.greenpeace.or.jp/press/01/release/20010511.html
28 http://www.greenpeace.or.jp/press/01/release/20010411_3.html
29 http://www.greenpeace.or.jp/press/01/release/20010607.html
30 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0313-1.html#4-3
31 http://plaza13.mbn.or.jp/~yasui_it/Week210701.htm
32 日本経済新聞2001.7.28、P38
33 http://plaza13.mbn.or.jp/~yasui_it/Week210722.htmの7/28分
34 http://eco.goo.ne.jp/world_ekokisei/index.htmlのEUの2001年7月号
35 化学工業日報 2001/10/4
36 日本経済新聞 2002/6/12 「厚労省、塩ビ玩具を来夏から規制」

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塩ビの問題は身近であることから、環境問題を考える上で良い(?悪い?)題材提供になっていたのではないかと思います。ただ、本当のところは、塩ビに限らず、全ての材料、いや全ての生活を見直して規模を縮小していくことが必要になっています。それを無視して塩ビだけを「魔女裁判」にかけることは意味がないのかもしれません。皆さんの忌憚のないご意見をお待ちしています。
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