大子弁の思い出

最終更新日:平成15年 1月 1日

 のべずり上がってお茶でもずんずりなんしょ

高校の修学旅行の時の話です。
京都の市内観光でガイドさんが京都弁を披露してくれて、お礼にわれわれも大子弁を披露しました。
「たっぺ」や「けけず」や「ことこんぼ」やらが出ましたが、生瀬の級友の「のべずりあがっておちゃでもずんずりなんしょ」には、ガイドさんのみならずこの言葉を知らなかった全員が、目が点になりました。
玄関を入ると直ぐ廊下と言う現代の家のつくりでは、情景が想像できないかもしれませんが、玄関を入ると上がりかまちで、すぐに居間という作りならば、あがりかまちに腰をかけた状態から居間の方へ「のべずりあがって」お茶をよばれられるんです。
標準語ではこの情景を説明するのは大変だと思います。一言で説明してしまう大子弁はなんと便利なんでしょう。
皆さんも「おちゃでもずんずり」ながら、大子弁をお楽しみください。

 おばんかた

元NHKアナウンサーの遠藤先生の講演の時に指摘された言葉に「おばんかた」がありました。
私はそれまでにオハヨウ−コンニチハ−オバンカタ−コンバンハに何の疑問もありませんでした。
しかし、標準語に「オバンカタ」はないそうです。コンニチハの次はコンバンハなのです。
是非全国に広めたい茨城の言葉だとおっしゃってました。
大子では「オバンカタ・オバンデス」などと使うが、お年寄りの中には「オバンカタニナリャーシタ」と言う人もいます。
最近は聞かれなくなりましたが、お年寄りの中には挨拶の後に「アッ」と付け加える人がいました。
神様にお願いした後の「・・・・・・・・しますように。アッ」と同じアレです。
道で挨拶されてこれをやられると拝まれたみたいで面食らってしまします。

 オニムシ

大子ではクワガタムシのことを「オニムシ」と呼んでいます。
オニムシには

   ランケイ-----大型のノコギリクワガタ
   ノコギリ-----小型のノコギリクワガタ
   マンクソ-----ミヤマクワガタ
   ナダッコ-----コクワガタ
   ブーコ-------クワガタのメス

がいました。
ミヤマクワガタにマンクソは申し訳ないネーミングですが、一番多く捕れて色も悪いので「馬の糞」の扱いでした。
近頃はミヤマクワガタがノコギリクワガタより珍重されているようですが、私はどうしてもランケイの赤銅色の優雅な曲線を描いた角に心が惹かれます。
ミヤマクワガタと言われてもどうもマンクソのイメージがあり、頭のところが平らになっていてどうも私にとっては格下です。
しかしケンカさせると強いので大きいのを何匹かはもってはいました。
私の小さい頃はよく捕れて、一度は捕れすぎて、持って行った虫かごでは収まりきれなくて、しょうがないので履いていった長靴を脱いでそれに入れてきたこともありました。
私の頃はオニムシ取りは朝早く起きて山に行って木を蹴飛ばして捕ったものでしたが、今の子供らは夜に車で街灯の下に行って捕っています。
木に砂糖水を塗っておいたり腐った果物をおいておいたり、白い布に電気を当てておいたりといった工夫をしている子供はいません。
挙げ句の果てにはいじっていて足がもげたり死んでしまったら、「壊れたから新しいのを買って!」と言う子供もいるそうで嘆かわしい限りです。

 たっぺ

たっぺはよくアイスバーンというふうに言われてますが、私にとってはそうではありません。
たっぺは車が走るような道路ではなく、人が歩く道に出来ます。(自動車が出来るより以前からたっぺと言う言葉はあったはずです。)
坂道で水がしみ出るような所がモコモコっと鍾乳石のように凍って、足をかけると必ずつるっと滑ってしまう、そういうところがたっぺです。
たっぺになっているところを通過することが予想されるときは、灰を入れた袋を持っていき、パッとふって渡っていきます。
冬に「木の葉さらい」をして、重い木の葉を背負って山道のたっぺの所を通過するのは命がけでした。
ところが僕らはそういうところを見つけてはソリで遊んだものでした。おまけに夕方帰るときには明日のためにバケツで水をまいて、人工のたっぺを作ったりしたので、大人の人たちによく「仕事になんなくなっちゃうべ」と怒られました。

 しが

久慈川の代表的な冬の風物詩で、袋田の滝の氷瀑とともにこれを目当てに訪れる観光客も少なくありません。
今ではシガの発生のメカニズムも解明されていますが、私の中学校の頃はそういう知識もなくて、よく友達と論議をしたものです。
中には観察眼の鋭いのがいて「氷に石のコケが付いているから、シガは水の中で出来んだっぺ」と言っていました。みんなからは「氷は軽いんだから表面から凍るはずだっぺ」と言われていましたが、彼の水の中が正解でした。
私はヘチで凍りかけたのが流れるんだとばっかり思ってました。
12月になって初めてシガが流れ出すと、橋上から眺めて「今年もシガが流れはだったわぁ」といったものでした。
今年(2002年)は暖冬で2〜3度しか流れませんでしたが、私の中学校の頃は冬の間は毎朝流れていました。
陽の射さないような寒い日には、それこそ一日中流れていたものでした。
その頃は寒いのがあたりまえと思ってましたが、今思えば相当寒かったんだなぁーと思います。
今では天然のスケートリンクなんかできっこないもんなぁー!。

 ベーゴマ

ベーゴマについて
  秋風が吹くようになってくると、川遊びもできなくなり誰かの家の庭に集まって、ベーゴマをやります。
  薄暗くなってワッカ(後述)したときに火花が見えるようになって、初めて周りが暗くなったのが分かりました。
  上手下手がはっきりして負けてばかりいると取られてばかりで嫌になってきて、参加できなくなってしまいます。
  負けると悔しいし、今のようにすぐには親に買ってもらえないので、負けないように工夫をしました。
  それでも上手な人がいっぱい取ってしまうので問題となり、学校から禁止されてしまいました。

ベーゴマの種類
  基本は5円のベーゴマと10円のベーゴマだが、いろいろ改良します。

○ペチャベー
  べーごまの裏をすって高さを低くしたもの。シャコタンのベーゴマ。下から突き上げるので強い。

○10円ベー
  普通の5円のベーゴマに対して倍以上大きい。小さい5円べーはガッチャ(後述)で対抗します。
  5円のベーゴマに負けてとられると非常に悔しい。

○ヘソベー
  ペチャベーをさらに低くして、ヘソを出して芯にしたもの。低くて強いが回すのが難しい。

○一寸ベー
  高さが3センチほどの円錐形のベーゴマ。角が丸くなっています。
  三角になっているのを利用して高いところから直接狙ってぶつけて相手のベーゴマをはじき出す。

○高ベー
  背丈が普通のベーゴマより高い。新しいベーゴマ。

○ガーランベー
  ベーゴマの底を少し平らにして、ブルブル震えるようにしたもの。
  威力は絶大だが長くは回っていないので弱ったところを狙われる。

戦法

○山おろし
  床のふちから滑らすようにベーゴマを入れて、勢いをつけて相手のベーゴマをはじき出す。

○引っ掛け
  相手のベーゴマの向こう側にベーゴマを落として、紐で引っ張る様にして相手のベーゴマをはじき出す。

○ガッチャ
  相手のベーゴマに直接ぶっつけてはじき出す。
  威力はあるがコントロールを間違えると相手のベーゴマにかすって出てしまいます。
  一寸べーの場合は、真上から落とすようにすると効果があります。

○向きをかける
  ベーゴマをやや斜めに入れて円を描くように入れる高等戦術。
  間違って角を上げたところに相手のベーゴマがくると、あっさりやられる場合もあります。

○イッセイノセ
  どうしても後から入れるほうが有利のため、みんなで同時に入れる、そのときの掛け声。
  よく見てないとどういう順番で出たか判らなくなってしまいます。

○ワッカ
  同時に両方とも出てしまったとき。引き分けとなります。

道具
  ベーゴマのほかに次の物が必要です。

○床
  ベーゴマの戦う場所。普通はタライに飼料の入っていた袋を広げてかけて、ゴムで縛ります。
  ペチャベーの場合は霧を吹いてピンと張ります。
  ビニールの飼料袋は滑ってよいが、一寸べーを落とすと窪みが出来てしまいます。

○紐
  専用の紐の紐を買って使ってもよいが、手拭いを裂いて堅く撚った物の方が、太さ長さを調節できてよいです。
  紐の端は五円玉を結んでおきます。
  唾で濡らした方がきつく巻けるので、使い込んだ紐は他人が舐めるのはためらわれるほどの色になっています。

○蜜柑箱
  以前は蜜柑は木箱に入っていて、この箱一杯にベーゴマをためるのが子供の夢でした。

○ヤスリ
  ベーゴマをすって改良します。
  一晩かかって仕上げた物が一発でやられてしっまた時は、非常に悔しい。
  敷居に釘を打ってベーゴマを固定して擦ったので、親父に怒られました。

○クレヨン、ボンド
  ベーゴマに色を付ける。クレヨンを削ってベーゴマに載せてあぶると溶けて染み込む。
  仕上げにボンドを塗ると光ります。

 パーぶち

ベーゴマと双璧をなす遊びにパーぶちがあります。メンコのことです。
これもベーゴマと同じで負ければ取られてしまいます。
ガキ大将は段ボールいっぱいのパーを持っていました。
なるべく負けないで、沢山取れるように縁を折リ曲げたり、腕の振り方を日々研究しました。

戦法

あおぎ
パーぶちの標準のスタイルである半纏の袖を利用して、風を起こして相手のパーをひっくり返す方法。
露骨にやりすぎると喧嘩の原因になる。

さかて
普通は右から左に相手のパーをひっくり返すように腕を振るのですが、「さかて」は逆に左から右に振ります。
角度や力の加減が難しいが、テニスのバックハンドと同じでなれると威力があります。
これも半纏のすそを最大限利用すると威力が倍増します。

足かけ
場所によっては禁止のところがありますが、私のところでは低学年に限って使ってよいことになってました。
これにも順手とさかてがあります。
あまり勢いがあると靴の上でくるっと一回転して、元に戻ってしまいます。

てぶち
これはきわものの技ですが相手に気付かれないようにやるのが難しい。
相手のパーをひっくかえすように手を振るのですが、この時に指先が相手のパーにちょっと触れるようにやる。
あたかも風でひっくり返ったように見せます。ズルをする訳ですから見つかるとヤバイ。

ロービキ
これは戦法ではありませんが、簡単にひっくり返らないように工夫をします。
パーの裏にロウソクを垂らして重くします。
ローで厚くなった分は縁を少しずつ下側に折り曲げて、隙間をなくしておきます。
使い込んでペタペタになったロービキパーは、そう簡単にはひっくり返りません。

 ゴム管飛び

男の遊びの代表が「ベーゴマ」と「パーぶち」ならば、女の遊びは「石蹴り」と「ゴム管飛び」でした。
輪ゴムを数十個繋いで、二人がそれを持ち延ばした間を飛ぶのです。
最初膝ぐらいから初めて、腰・胸・首・頭とだんだん高くしていきます。
飛び方は走り高跳びのように飛んでもいいのですが、高くなると無理ですので大阪飛びというのをやります。
これは片足を高く上げてゴムに引っかけて引き下ろしてもう片足も飛ぶというものです。
ゴムの伸縮性を利用するやり方で、いかに足が上がるかで勝負が決まります。
私たちはベーゴマをやりながらも横目でチラチラと見ては、スカートの裾ををブルマにたぐり込んで必ずしも
スラリとは伸びてはいない足ではあるけれど、心ときめかしていたものでした。

 石蹴り

ゴム管飛びともう一方の遊びである石蹴りですが私はルールが良く思い出せません。
9個の升を描いたものと、細長い四角を2つ描いたものと、丸を沢山描いたものとがあったように思いますが
どなたか覚えていたらば教えてください。


注意

こっから先はR15指定になんだけんど、
あんたは15歳以上げ?



んだ       ちがー



おらどーでもいいからトップさもどっぺ


































 not at all              ※注・・・ここからはR15指定です

のったつ 私たちは中学2年の時に not at all という単語を習いました。

 大学を出たての新任のうら若い美人の英語の先生が
 「皆さんッ、私に続いてッ、ハイッ、ノッタットール」
 とたんに、紅顔のあまり美少年ではない私達はいっせいに
 「ゲラゲラ」と笑いだし、少しマセタ女子は頬を赤く染めてうつむく
 のでした。
 先生は、何が何だか分からずに困惑してしまいました。

 「のったつ」という言葉は、あまり知られてはいないと思いますが
 東北のマタギや林業に従事している人たちの間では、のったつ
 とは木が小さいときに雪に「おっちめられて」、根元が曲がって途中
から立ち上がった状態を言います。
大子ではこの様子が、ちょうど男性自身の興奮状態に似ているため同じ言葉で呼んでいました。

新任の美人の先生が大きな声で「ノッタットール」というほどにぼく達はますます笑い出し、女子
達は真っ赤になってうつむくのでした。

先生「皆さんどうしたのですかッ?、ご一緒にッ!  ハイッ、 ノッ、タッ、トールッ!!」
男子「ゲラゲラ・・・・・」
女子「・・・・・(*_*)ポッ」

あのときの先生 ゴメンナサイ。

へのこ

大子では「へのこ」は男性性器の隠語です。
あまり人前で大声では口にはしません。
ところが、国会中継の中で沖縄問題では盛んに「辺野古」を大声で論議しています。
女性議員までが大声で連呼するのです。
男性議員の中には同じ意味の方言を有する議員の方もいると思いますが、たぶん
トーンダウンしている議員は意味が通じているのだろうなと思って見てしまいます。

 大子弁の民話

源じっちさんが畑さいんべと思って、隣の庭を横切って近道していたら
障子の陰でなんだか若夫婦のしゃべり声が聞っこえできた。

嫁「おら,そうだに太いのを入れられたんでは、痛いからやだッ!」
夫「なにゆってんだ?。これっくれえのはみんなやってっから、だいったっぺ。」
嫁「んだって・・・、見ただけでおっかねえべ。」
夫「んだら、こんだ、よーぐさきっぽを唾で濡らしてからやってみっから。
  それよか、指でよーくひろげてくんねえと周りの毛がじゃまで
  うまく入れられねえべ。」
嫁「んだってそうだに太いのが近づいてくんだもの、どうしたって
  塞いじゃうべ。」
夫「んで、何時までたってもできねえべ。 もう一回やってみっから
  よーく指で広げでろッ!。」
嫁「いててて・・・、もっと、そーとやってくっちょッ」
夫「少しは我慢してくんねえと、うまく出来ねえべ。きっとしてろッ!
  それにしてもまわりの毛がじゃまっけだなぁーッ!」

源じっちさんは気が気でなくて、指にキタキ(唾)を付けて障子に穴めどを
開けると、そーっとすき見をしてみました。
そうしたっけ、嫁さんの目に入ったゴミを夫が手拭いの先っぽで、取ろうと
していたところだったんだど。

おまえさんは、何かちがーの想像してなかったげ?


トップさもどっぺ