碧岩
西上州のマッターホルン

大岩頂上からの碧岩

帰りが不安・碧岩頂上
誰も登ってこない

鹿岳(左)と四又山
碧岩頂上からの展望

左上付近に浅間山
すでに雪の姿

碧岩下りからの大岩

遺書代わりに撮影

大岩に向かう
無事碧岩から下山

大岩頂上からの展望
トンガリ山が碧岩

下山途中から眺める
碧岩

三段の滝に下山
更に車まで9百M歩く

         11月26日(土) 西上州にある碧岩(ミドリ岩)はワタク氏にとってはちょっと怖〜い山でした。この前、雑誌『山と渓谷』のトンガリ山特集の中で巻頭の特集記事として出ていたコースです。自分にも登れるかなと思い行ってみました。
         この日、5時10分前に起床、本当はもっと早く目をあけたもののまだ良いだろうとぐずぐずしていてこの時間となった。夏ならもうとっくに明るい時間だ。水筒に烏龍茶をいれてカメラとザックを用意し家を出たのが5時過ぎ、コンビニに寄って昼食を買い、柏インタ6時、大泉JCT6時半、高坂インタ6時50分、7時40分下仁田インタから一般道に出て上信電鉄下仁田駅のそばを通過。下仁田駅はすごくローカルで昔も今も変わっていない雰囲気だ。一路、南牧村(なんもくむら)に向かう。みなみまきむらなどと読んでいてとんだ恥かきだ。家と家の間を縫うように細い道が続いたかと思うとまた何も家のないところが続き、いくつかの集落をつなぐように道を登っていく。車は一台も走っていない。休日も早起きの地元のおばあさんが落ち葉の掃除をしている。車でその狭い脇を通り過ぎる。道楽で朝からオサワがして申し訳ありません。観能までがバス通りで小さなバスターミナルがある。さらに少し行けばようやく駐車場、8時10分。いつもの通勤時間と同じだなあ。群馬のここまで通勤したと考えればいいか、などと思いながら準備をはじめるがトイレもあって申し分ないけれども誰もいないのはさびしい。
         いくつかの土橋(丸木橋?)をわたって900mくらい歩けば見事な三段の滝に出会う。小さな子でも何とかここまでは来られそうだ。夏なら絶好の避暑地かもしれない。滝を見ながらしばらく休憩後、左に滝を見て登っていく。滝の上に出るとまた勾配の緩やかな沢沿いの道となりこんな道なら楽勝だ。山の上はすでに陽に当たり明るいが登山道は沢筋にあるのでなかなか陽が差し込まない。碧岩への分岐点、9時半。
         一転して岩、木の枝、木の根などあらゆるものを頼りに急勾配の道を登る。手が汚れるからいやだななどと思うもののどうにもならない。首がとぶというのに髭の心配をしてどうする、というようなことを映画『七人の侍』のなかで村の長老が言っていたのを思い出した。落ちて死ぬというのに手の汚れを心配してどうする、まあ、落ちるよりはましか、などと自分を納得させながら登り続けると左の樹間に朝日の当たる碧岩の岩峰が見えてきて尾根道をしばらく歩けば碧岩、大岩の分岐点。もちろん誰もいない。後ろから男性らしき声がときどき聞こえてくるので同じ道を登っていると思うがなかなか姿を見せないのでそのまま碧岩に出発。
         さっきと同じようにあらゆるものにつかまって登り始めるが今までの坂道よりももっと急坂になり心中穏やかではない。ついに最初のロープ。なれない自分としては一瞬やめようかと思うもののここまで来た以上引き下がるわけにも行かない。とにかく落ちないように必死につかまって登りきった。更にしばらく登れば2番目のロープ。ホールドがあるようなないような、しばらく躊躇し考え込む。なにしろ、崖を一歩踏み外せば奈落の底に落ちるかもしれない。そんなぎりぎりのところを登らなければならない。慣れてる人ならなんでもないだろうがド素人にとっては難関だ。絶対ロープを離さずに腕力も使って登りきった。平らになるとほんの少しで道標のある頂上、10時50分。南牧村の山々が見渡せる。たった一人の頂上を満喫。
         写真を撮ってもらおうと思ってしばらく次の人を待つものの誰も登ってこない。声はすれども姿は見えずだ。休憩時間も過ぎたので。これから登ってくる人に対して落石だけはおこさないようにしようと思いながら下山を開始した。下りのロープは怖い。登るんじゃなかったと思っても後の祭りだ。とにかくこれをくだらなければ人間界に戻れない。覚悟を決めてロープを慎重に下りはじめ、途中、やや足場のあるところで腕を休ませて振り返れば大岩が大きく構えている。こわごわとデジカメを取り出し、(こんな危ないところでデジカメなんてと思いつつも誘惑に勝てず)、左手でロープをつかみ右手でデジカメを持って落ちたらこれが最後の写真となるだろうと思いながら、一枚、遺書代わりに記念撮影。2つ目のロープを下ってなんとか分岐点にもどる。冷や汗ものだ。ロッククライミングをしているような人なら楽勝だろうけれど、いつもデスクワークで鉛筆くらいしか持ったことがない者にとって、こんなところが続けば腕の筋肉が疲れて滑落・・・ナンテこともありうる。そんな不安を抱きつつ、もうロープはいいよ、などと弱気になりながらそれでも大岩に向かってみようという気になった。
         大岩への道はそのまま尾根道を行けばいい。さっきとくらべて簡単コース、と思い、いくつかのピークを上り下りして更に手前のピークを巻いていけばついに最後ののぼりとなる。でもそこは岩山。最後の最後に岩の稜線歩きを強いられる。高いところがあまりなれてないんだよなあ、などと思いながら何とか頂上。さっき登った碧岩が豪快に天に向かってそびえている。あんなところを登って生きててよかったと実感した。碧岩で聞こえていた声は実はこの大岩を登る3人の男性(おそらく60歳以上)の声だったようだ。さえぎる物がなく、静かなので遠くまで声が届いたらしい。その人たちは碧岩に登らず、直接大岩に登ったようだ。それは正解だったろう。そのパーティとすれ違ってまたも一人で頂上に到着。誰も写真を撮ってくれる人がいないのでめんどくさいが三脚をザックから出して撮影した。秋の紅葉の季節、絶好の行楽日和なのに何でこんなに人が少ないんだろう。超人気の妙義山はすぐお隣の町でいまごろ人でごった返しているはずなのに・・・。3人を追って岩場をおっかなびっくりへっぴり腰で下り始めた。
         直接沢に出る近道があり、そのルートを下る。こちらも急坂で左右の木々の枝や根っこがなければとても下る気にはなれないだろう。おまけに結構地面が湿っていて滑りやすい。いい加減にしてくれ、と思うころにようやく沢筋にある分岐点に出て救われた。あとは沢をのんびり下って三段の滝だ。途中で「熊の出没に注意してください」という注意書き。いたらいやだなと思うだけで足早に通り過ぎる。三段の滝に先ほどの3人のパーティが休憩中だったが、こちらが到着する寸前に出発してしまい、またも写真を撮ってもらえなかった。仕方なく自力で記念写真撮影。あと900m歩けば駐車場だし、のんびりお茶を飲んだあとで再び歩き始めた。2時45分、駐車場に戻る。
         自分にとってはつらいコースだったと思う。やはり鎖やロープのない初級程度の山で楽しく行ければそれで十分な気もする。人がたくさん歩いているところで「こんにちは〜。」とハイカーに挨拶するほうが、「こんにちは〜。」と熊さんに言うよりもずっと平和でホッとするし、ダイナミックにロープや鎖を乗り越える業は自分にはなさそうだ。今度はもっと平和なのんびりした山に行きたい。渋滞を突っ切り、なんとか7時前に帰宅。