唐松尾山

唐松尾山から将l監峠に向かって5分くらい下ったところで撮影
気楽な下り道に日が当たっているのでのどかに思える

9:30 民宿「みはらし」駐車場
山奥の奥にある武田落人の村

10:15 水場「ムジナの巣」
将監小屋までは幅広い道だ
 

11:15 広々した将監峠
右は雲取山方面、左は笠取山方面

11:35 牛王院平付近
「ゴインダイラ」と地元の人は言う

11:50 「山の神土」 ここから
本来の山道になっていく

13:00 何とか頂上へ
既に周回コースを行く気力なし

13:50 帰りの下りで大菩薩嶺と富士山を見ながら小休止 

16:00 三ノ瀬からの藤尾山
「てんごだな」と地元の人は言う

8月30日(火)

  仕事のことを忘れたい、この一心で唐松尾山に行った。もちろん、急遽年休にしたのは言うまでもないが、なんと起きたのが朝5時半で予定の4時より1時間半の寝坊をしてため息。今日もむなしく過ぎていくのかと思うと悲しくなる。部屋の障子が明るくなっているのでおそらく家の外は晴れているのだろう。我が家の相棒は出勤のため早朝から準備らしく、今はシャワーを浴びている。こっちだって充実した日を送ってみせるとばかりに飛び起きて相棒がシャワーから出てくる前にもう出発してしまった。ガソリンは半分あるから行きは大丈夫だ。食料は現地近くの奥多摩付近で調達すればいい。5時40分。

  道はわかっている。おそらく山梨県側の塩山から北上するほうが短時間で着くのかもしれないが、奥多摩経由のほうがお好み。これは自動車道料金削減もひとつの理由だが、奥多摩から丹波山を抜け柳沢峠に至る大菩薩ラインは車も少ないし気分よく走りやすいからだ。いくつかのトンネルも完成間近で、目的地に近い一ノ瀬高橋トンネルはすでに開通していた。そこを潜り抜ければすぐに林道の分岐点になる。八王子インタを降りる頃は空が雲ばかりでとても歩く気はしなかったのに、奥多摩に着く頃にはその雲はどこへやらで真っ青な空が広がり、歩かない理由はなくなってしまった。あとはワタク氏の体調しだいだが、疲れるから歩きたくないという気持ちもどこかにあり、天候が悪化しないかなどと考えてしまう。

まったくの好天のなか三ノ瀬についたが、どこに止めてよいかわからず作場平橋まで走ると、さすがに笠取山のほうが人気があるので車は結構止まっている。途中で蛇が道の真ん中にいたので踏まないように最徐行、再び三ノ瀬に戻る途中で鹿と出会う。写真を撮るまえに飛び去っていった。三ノ瀬の民宿の駐車場に止めた。料金500円なり。奥多摩のコンビニに寄ったり、駐車場所を求めてうろうろしたりして予定よりも2時間の遅れの9時半出発。唐松尾山から笠取山をめぐろうとした計画はこの時点で心の中から消え去った。廻れないこともないだろうが夜中に帰宅は避けたいし、今日はのんびり頂上を見てくるかという心境になり、七ツ石尾根を登る計画も没。それとほぼ平行気味に走る将監小屋、将監峠までの道に変更。これなら小屋に行く車もたまに走る道だから急坂もないだろうからのんびり歩ける。結局、将監峠まで誰にも会わずに到着。広々としていて展望も言いし、休憩に最適。道標が合って、右に雲取山・飛龍山方面、左に笠取山・雁坂峠とある。

   山の神土までは楽勝。本当は七ツ石尾根を登れば牛王院平から山の神土への直登だったはず。笠取山方面へ。唐松尾山とフリーハンドで小さく書いてあるのはこの山が余り人気ないのかもしれないと思わせる。天気も曇り気味で光が当たらず、いくつかの場所は土砂崩れでなくなったため、新たなルートが作られていた。なんだか平和に歩けそうもない場所のように思えたのは、天候のせいか、または登りのため心に余裕がないためなのか、とにかく途中で止めようと思うこと多し。でもあと少しがんばればと自分に言い聞かせて西御殿岩分岐を過ぎる。自分の体力から考えてまず頂上だろうと思い、直進。険しいところを過ぎて頂上ちかくなってくると日が当たってきたので心も休まり、元気も回復し、ようやく頂上。樹林の中だけれどもなんともいえない充足感がある。昼食。おにぎりとメロンパン。途中で少し食べてしまったし、後半分食べるのに時間はかからない。山の神土のところで下山する人と出会っただけで誰も登ってこない。やはり周遊しようかなあと思うものの、潔さが肝心。3時に三ノ瀬帰着という予定も大幅に遅れるはずだ。このまま戻っても将監峠まで1時間、そこから三ノ瀬まで1時間半と見積もって4時に戻れればましだ。まして周回コースを選んだら更に遅れると思い、またもと来た道を戻ることにした。

   険しいと思われていた場所も下山の気軽さと陽射しのあるいい天気のせいでなんなく通り過ぎる。気分というものは恐ろしい。のぼりの憂鬱さがうそのようだ。牛王院平を通過したときに道標に三ノ瀬方面とあるので、ここを下ればもっと時間を短縮できると思って右折したのがいけなかった。鹿よけの網のフェンスの横を歩くと、おそらく古い網が下に落ちていてそれに足が引っかかり少なくとも3回以上転倒しそうになった。さらにピンクのリボンを目印に行くのかと思って下山を進めると今度はものすごい登りで、上のほうまでリボンが結ばれているのが見える。そんな馬鹿な!と思いながらまた頂上に行くと今度はくだり、さらにまたかなりの登りで本当にこのコースなのか不安になり、戻ったほうがいいのではないかと思い始めた。それでももう少し進めばと思って足を運ぶと道標が見える。あそこまで行けば、と思ってとうとうその道標にたどり着き、何が書いてあるか覗き込むと、なんとさっきと同じ道標だ。ここから下っていったはずなのに、どういうわけだ、と思うものの、知った場所に出た喜びも大きい。どうやら鹿よけの柵を一周してきたらしい。どうりで上り下りが激しくこんなコースがくだりであるはずはなかったのだ。知った道を戻ろうと思ってなんとか将監峠に到着。ここから歩いて1時間半くらいで着くはずだ。休まずに歩き出した。

  広い道を歩くのは楽しい。車一台分の道でも十分広い。ずいぶん登ってきたなあなどと思いながらそれでも飛ぶように足を運び、4時過ぎに三ノ瀬に到着。すぐ帰ろうと思うものの、お店で何か冷たいものをと思い、民宿でサイダーを買う。120円。民宿の方と話しがはずんだ。「ずいぶん辺鄙なところですね。」と言うと
     「ここは開拓で入ったのではなくて、武田の落人なんですよ。姓も田辺と楠ばっかりで。道路もできてから若い人はみんな下ってしまって年寄りばっかりで。だから引越し道路というんです。」
ということだった。お子さんも千葉に出て行ったらしい。登山をする人しかここにはこないだろうと思われるようなところだ。民宿から大きな山が南に見える。

 「あのやまはなんですか?」
       「あれは藤尾山。地元の人はテンゴダナと呼んでいるよ。」

聞いたときに一瞬わからず、意味もたずねてしまったが、「てんご」とは「いたずら、じゃまなもの」の意味らしく、「たな」は棚のこと。すなわち「テンゴダナ」はいたずら、邪魔して視界をさえぎっている山のこと?と解釈したけれども、インタネットで調べると天狗棚山というらしく、自分の自己流の解釈は間違っていたようだ。三ノ瀬から眺めるこの藤尾山は大きく構えているがその陰に隠れてほかの山々の視界はきかない。確か「牛王院平」も「ゴインダイラ」と発音していたように聞こえた。

   かれこれ20分くらい話していたが、それほど長居することもできず、もう帰りますと言ってそこを後にした。この前柳沢峠に来たときには使えなかった一ノ瀬高橋トンネルを再び通過。この一ノ瀬高橋という地名はかなり広範囲な地域らしく、ほとんどが山林で人の住むところはほとんどなさそうだ。鳩ノ巣まで約1時間かかることを忘れてかけていて、すぐにも奥多摩に着くような気がしたが、走りなれてきたとはいえぜんぜん着かない。一回トイレ休憩しただけで家まで直行だ!

   帰りは8時40分を過ぎていた。仕事のことを忘れようと出かけたのに、歩いているときも、車の運転中にもふと仕事を思い出し、そのつど憂鬱になってしまった。出かけなければそのことでますます憂鬱だったろう。今度行く機会があれば笠取山のほうから登って一人でぐるっと一周できるかもしれない。ファミリーで行くなら笠取山に行きたい。あまりに辺鄙なこの地域も民宿の奥さんと話ができて少しは親しみのわく地域になってきたと思う。

(PS こんなに長文になってしまったのは自宅ではなく、ある場所で書いているからです。書いているときも現実を忘れることができないようです。)