事業承継の税務

概要
事業承継とは、被相続人の事業を相続人が承継することをいいます。この場合、被相続人及び相続人の所得税の計算は、以下のように計算します。
被相続人
被相続人の所得税の計算は、その年1月1日から被相続人死亡の日までの期間を基礎に計算します。
相続人
相続人の所得税の計算は、事業承継の日からその年12月31日までの期間を基礎に計算します。
準確定申告
被相続人の死亡年の確定申告は、相続人が相続の開始のあったことを知った日から4月以内に行わなければなりません。これを準確定申告といいます。
相続人の青色申告の承認申請の特例
【相続人が以前から業務を行っている場合】
原則どおり、その年3月15日まで
【被相続人が白色申告であった場合】
原則どおり、業務開始の日から2月以内
【被相続人が青色申告であった場合の特例】
相続人が相続の開始のあったことを知った日から4月以内
資産の移転に伴う取得費等
被相続人の死亡による資産の移転については、相続税により精算されます。なお、相続人が被相続人から承継した資産の取得費等は以下のように取り扱います。
【たな卸資産】
被相続人の選定していた評価方法により計算した金額をもって相続人の取得価額とします。
【固定資産】
原則として、被相続人の取得費、取得時期を承継します。
貸倒引当金
貸倒引当金については、以下の場合にはその繰入れが認められています。
【被相続人の所得計算】
事業を承継する相続人が青色申告者の場合には、被相続人の所得金額の計算上貸倒引当金の繰入ができます。
【相続人の所得計算】
被相続人の所得金額の計算上繰入れられた貸倒引当金の金額がある場合には、相続人の所得金額の計算上、総収入金額に算入します。
単純承認と限定承認
単純承認により財産を相続した場合には、その相続により取得した固定資産については、被相続人の取得費、取得時期を承継しますが、限定承認により財産を相続した場合には、事業承継時の時価により取得したものとみなされます。
青色申告の承認申請の特例
申請期限が相続の開始のあったことを知った日から4月以内とされる青色申告の承認申請の特例は、新規事業開始の場合にのみ認められている特例です。したがって、相続人が小規模な不動産の貸付けを行っているなど以前から業務を行っていた場合には、この特例の適用はありませんので、注意が必要です。