ねじあさいの「ちなみに・・の話」(不定期連載。。) (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
第一話 まずはじめに、どっかで見たような企画ですがご了承ください。。。 さてとりあえずねじの単価の話でも。 うちのような量産物を作ってるねじやは、ねじを大量に作るための機械を使っていますので 何銭なんて単価が出てきます。ただこれもある程度、まあ何万本という数を作ってはじめて出てくる 単価なんですけどね。あるねじを作る時まずヘッダーでねじ山の無い段階の物を作り、その後 ローリングでねじ山をたてるんですが、それの機械を合わせるのにだいたいヘッダー、ローリングとも 10分から20分。その後はヘッダーで1分間に80本から90本、ローリングで200本から 250本位作っちゃいます。1度セットすれば間でチョコチョコ見ますけど基本的にまわしっぱなしですから、 それこそヘッダーなんかは1時間もあれば5000本ぐらいは出来てしまうんです。 100本作るのも10000本作るのもセットにかかる時間は同じですから手間賃は同じ。その工賃を 数で割るんですから必然的に単価はかなり変ってきます。根本的なところになるんですけど、 ようはヘッダーとかローリングは何百本などの物を作るためのじゃないんですよね。少量多品種の 今の時代にはそわないかも知れませんが。。と言う事でうちも色々考えないとね〜。 ↑上へ
第二話 値段の話の続きですが・・・。小ロット対応で一番困るのが焼入れやメッキ。困るって言い方はチョッと 違うかもしれませんがどうしても最低ロットって言うのが決まってるんです。だいたい重さなんですが 何キロ以下は一律いくら。これが量産が大前提になってるんでうちあたりが作る小さなねじだとM3で 5万本ぐらい、M2なんかでは20万本ぐらいまとまらないとまともな単価にならないんです。 少量だと単純に焼入れ代を数で割るんで、たとえば焼入れ代が5000円だとすると1000本だと5円。 5000本だと1円、という風になってくるんです。かなり変りますよね。で、これはうちのもらい分ではなく あくまで焼入れ屋さんに払う金額ですからもうどうしようもないところなんです。1ロットにかからない量を 出して残りを在庫に出来れば一番いいんでしょうが1000本ぐらいしか出ないものを10万本出して さあ、いつなくなるのやらってのもね〜。それでもいろんな所で出る品物はせざるえないんで とりあえず在庫は置いてます。。。 メッキ屋さんも同様に1ロットいくらですし、ちょっと違いますけど材料も同じようなもんです。 ヘッダー用の材料って言うのはコイル状になっている物でして、だいたい50キロから100キロぐらいあります。 これも1キロ2キロの注文なんてのは出来ませんので、通常流れている品物用のは常にとってますから いいんですが、ちょっと特殊な材質や線径のもので作らなければならないねじの時がまた困りもので、 1キロもあれば足りるところ、100キロからしか材料取れないなんて事になってしまうんです。 うちは鉄が主なんでステンレスとか言われるとこういう事がよくあります。これも材料1コイルとって 残しておけばいいんでしょうけどなかなかね〜。結構高いものもありますし・・・。 ↑上へ
第三話 今回はちょっと毛色を変えて・・・。下の写真はうちの外に置いてあるネジのサンプルとチョッとした チラシです。まあ、なんかおもしろい話にでもなればいいかなと置いています。 ネジは一般の人にはあまり縁のなさそうな0番の小さい物や頭の変った形のものを中心に。 チラシは、展示会に使いたいからとうちのネジをサンプルでさし上げた、ネットでたまたま知り合った方が 作ってくれたのでちょうどいいかなと。 小学生とお年を召した方々は良く見てるんですけどね〜。ちなみに一緒に写ってるのは次男の力です。。。 ↑上へ
第四話 案の定チョッと開いてしまいました。。。というのもかなりバタバタしてまして。 実は六角スペーサーというものにタッピンネジを転造する仕事を今やってるんですが、これがやっぱり大変でして。 普通うちでの転造はそれこそ転造機をセットして後は品物を入れるだけなんですが (詳しくは本編の主要設備を参照)今回のは 転造機のダイプレートというねじ山を作る工具の所に1本1本置いて機械をまわすという、ようはず〜っと ついていなきゃいけない仕事なんです。本当はうちみたいな所がやる仕事ではないのかもしれませんが、まあ これも経験かなと。 で、このスペーサーの、ねじを作る前の「ブランク」を作ってるのがいわゆる「ひきものやさん」です。 旋盤等で品物を挽いて作る「ねじやさん」です。うちのようなのはそれに対して「ヘッダーや」 なんて言います。 さて同じねじやでも、ひきものやさんとヘッダーやでは当たり前ですが製作の仕方が全然違ってきます。 例えば頭の大きさが5φでねじ部がM3のねじを作ろうとした時、ヘッダーではM3のねじを作る 2.6φ位の材料をつぶして、頭を膨らませて作ります。逆にひきものやさんは5φの材料から 軸部を削っていきM3のねじにする、全然反対の工程になります。 両方とも長所短所あるんですが、まあ比較的簡単な品物を大量に作るにはヘッダーや。複雑なものやかなりの 精度を要求されるものを作るにはひきものやさん、って所でしょうかね。ただ今はヘッダーも 進化していますので、かなり複雑な形状も対応できるようです。ですが全体に数が細かく なってきていますから、本当なら金型をおこしてヘッダーでやるべき所をそこまでやらずに複雑な部分を ひきものやさん等にお願いするなんてのも増えているようです。。。難しい所ですね。 ↑上へ
第五話 四話で書いた、手もみをしている所です。 ちなみにカメラ付き携帯で撮りました。。。 ↑上へ
第六話 メッキやさんの話です。今頼んでいるメッキやさんで出来ないものの引き合いがきたので色々調べている うちに、またまた勉強になった事があります。 今はうちの場合「亜鉛メッキ」が主流です。いわゆる「クロメート」「ユニクロ」、それぞれ黄色っぽい物 青白っぽいもの、こと耐食性ではほぼ問題ないものです。これに見栄えを要求される所などに黒い色の 「クロアエン」、亜鉛めメッキではありませんが銀色で光沢のある「ニッケル」などが、通常流れている メッキです。 これらは全てメッキやさんにお願いするんですが、このメッキやさんも量産物をやるための設備を整えて いるので、値段設定もキロいくらという風にかなりの安値でやってもらえます。 さて今回、ニッケル系統のメッキの引き合いで他のメッキやさんに問い合わせてみた所、工程が違うのかキロいくらではなく、 一個いくらだと言われました。それも現状のメッキで換算すると4、5倍。ある所は10倍以上。その中の一件では 亜鉛メッキならわかるけど、ニッケルでその値段とは、どうやって出てきたのかわからないとまで言われてしまいました。 ただ少なくとも今お願いしているメッキやさんしかり、その他の近所のメッキやさんしかり、だいたい 同じ値段でやっているはずです。やはり主流の製品や設備が違うと、こうも違ってくるのかと勉強になりました。 でも「亜鉛メッキなんか・・・」はないですよね〜。 ↑上へ
第七話 製造ロットの話です。何度も話題に出しますが、うちのような量産のねじやでは数百本の「極小ロット」では 単価的にはかなり高くなってしまいます。これが数万本ぐらいのロットになればそこそこのふつうの単価に なるわけです。 さてなんでもそうだと思いますが、ある程度まとめて買えば値段が安くなるのと同じように ロットが増えれば単価は下がっていくわけですが、増えれば増えるほどドンドン下がるというわけでもないんです。 ここ最近急激に増えている「精密機器用ネジ」。いわゆる0番ネジですが、これはかなりの量が流通しています。 それこそロット数百万から数千万本。。。24時間稼動で何台も同じ品物をかけられる所では、 例えば500万本をこなすのに、1日中まわして10万本あがる機械を5台かけて10日で終わり。 これならある程度値段も下がってきます。ただうちのような規模のこうばでは、500万本なんて言われたら それこそ2ヶ月位かかってしまう。その間はその機械は他のをかけられないで、逆に段取りが悪くなってしまい それほど単価は下げられないんです。 また、どうみてもやりづらそうなもの等も、多ければ多いほど手間だけかかってしまいそれほど安くは できません。現状の多品種小ロットに対応しようとするとこうなってしまうのです。 かなり手前味噌な話かもしれませんが。。。 ↑上へ
第八話 ある日のうちの稼動状況掲示板。ナベAタイプ2×4、ナベBタイプ2×4、ナベCタイプ2×5。。。 もちろん全部種類は違いますがねじ部の長さ、太さはほぼ同じです。全てタッピンネジでチョッとずつ 公差などが違ってます。Aタイプ(タッピング1種)は先がとがってる一番良く知られているもの。Bタイプ (タッピング2種)は先はとがっては いませんが若干細くなっていてそれがねじ込む時の案内になります。Cタイプ(タッピング3種)はネジピッチが小ねじと 同じ細かさで他の形状はBタイプに近いです。部品の設計上等どうしてもこのサイズでなければいけないのかもしれませんが、 使用上はほとんど変わらないと思うんです。Cタイプはピッチが細かいですからねじ込む時のトルクは かかりますので他のとはわけたほうがいいとは思いますが、AとBとでは???ですね。一応Aタイプはねじの 外径がプラス公差ですからM2だと2〜2.1。長さはプラマイ0.8とかなりゆるい公差です。 Bタイプの外径はマイナス公差で1.9〜2。長さはプラスはゼロ。マイナス0.6。確かに違いは あるんですが、特に外径はもっと太いねじなら違いは出そうですがM2ぐらいではほとんどトルクなど違いは でないはずです。もしこの辺を規格的に厳しいBタイプなんかに統一できれば少しは「多品種」の解消になるかも知れないんですけどね〜。 ちなみにABタイプ(タッピング4種)という先端がとがっていてねじ外径がマイナス公差という AとBを交ぜたようなわけのわからない規格も存在しまして、たまに引き合いもあります。 ただこれはいまだにどういう意味合いでこの種類を使うのか疑問です。。。 ↑上へ
第九話 ネジの規格の話です。先日M3のすりわり付き小ねじの件で問い合わせをいただいたんですが、 「JISの規格品なのにどこにも置いていない、なんでだ」というものでした。色々聞いてみますと 確かにJISのハンドブックに載っている規格のもの。ただこれは業界内で言う「新JIS」の規格の ものでした。 JISとは日本の規格です。これを国際規格「ISO」に準ずるように変更したのが前出の新JISに なります。以前のJIS規格は付属書扱いになり将来廃止するというサイズもあるくらいです。 ただ市場に出回っている物は圧倒的に以前の旧JISの物で、商社さん等が在庫として持つのは やはり市場性のある旧JISという事になります。 このことを知らずに機械等を設計すると、規格書を見てネジを決めるわけでしょうから必然的に 今のJIS規格のネジを使うようにしてしまう。で、いざ探してもどこにも無い。。。 探している方にしてみたら変な話ですけどね。 これがタッピンネジになるともっと変わってまして。。。旧JISでは比較的みなさんなじみのある M2とかM3とかのサイズ、1種や2種のネジ形状になるんですが、これが新になるとST2.2、ST2.9、 十字穴もH型とZ型。ネジ部もC型、F型と何から何まで何だコリャです。。。 ですから市場性はほとんど皆無に等しいですね。 両者を比較してネジ外径やピッチなどちょっとずつ ずれていますから、互換性があるものはほとんどありません。ただタッピンネジの場合、下穴の径を かえるだけで問題なく旧JISのものも使えますから、出来る事ならその方が簡単に済むんではないかと 思います。(海外からの品物で下穴がすでにあいてしまってるなんてのが以前ありましたけど。。。) この間もお客さんにST2.2と言われたので、下穴をこれからあけるのならとM2.3を押し付け・・・ じゃないご提案しました。一応納得はしていただいたようです。
第十話 見積もりの話です。先日ある難加工材での品物の引き合いがありました。うちでやれる物ではぜんぜんなかったので 例のごとく仲間うちに問い合わせてみると、どうも難しいとの事。で、断ろうかとも思ったのですが ものはためしに近所の加工やさんに聞いてみたら、結構何の気無しに見積もりを出してくれました。 その後、引き合いのあったところに直接この加工屋さんを紹介したのですが、すぐに注文になったそうです。 何でも他と比べて半分ぐらいの値段だったそうで。。。 何でこうも違ってしまうのか・・・。うちもそうなんですが実績のない物はやはり高く見積もってしまいます。 正直やりたくないな〜なんて物はもっとです。。。逆に実績があるものはある程度ノウハウがわかっていますから 安く出すことも可能になるのです。 たとえば、ちょっと工具が特殊な物を使わなければいけない時、その工具の持ちが わからない時などはかなり高めに見積もってしまいます。工具代1万円、5万本の注文で30銭ぐらいの品物の時、 工具が1つで済めばいいんですが2つ使わなければならないとぜんぜん割が合わない。そうするとやっぱり30銭じゃなく 40銭ぐらいにしとこうかなとなってしまう訳なんです。 逆にチタンとかは、以前は加工性がどうかとかわかりませんでしたから結構高めでしたが、今は一応実績が出来たので 何とか値段も抑えられています。 そんな感じで見積もりを出した時、あるお客さんから「えーーー。そんな単価じゃ恥ずかしくって言えないよーーー。 半分ぐらいじゃないと。。。」と思いっきり言われた事があります。実際やったことがないサイズ、形状だったので 結果的に高めになってしまったようですが、うちの見積もりはそれなんですからしょうがない。 高いんなら他をあたっていただければいいだけですからね〜。 ↑上へ