空恐ろしく、すんごい愛
10.教官殿
リヴァイブ・リヴァイバルとの戦闘後、ライルは重傷を負ってカプセル入りを余儀なくされた。比較的
軽い症状だったマリーは、より重傷を負った刹那にカプセルを譲り、アレルヤと共にトレミーを降りた。
それもこれも後になってから知った事で、ライルは少し寂しさを感じていた。そして気がつく。あれだ
けライルにきつく当たっていたティエリアの姿が見えない事に。
実はライルはティエリアと何故かそーいう関係になっていた。
なにがどーなってそういう関係になってしまったのか、ライルには全く覚えがない。というかニール信
者であるティエリアが、いくら外見がそっくりといっても自分に手を伸ばすとは思えなかったし。ライ
ルを見ると一瞬切なげに目を細めるが、あとはもう目を吊り上げて説教を食らわす。そんなティエリア
の心情になんの変化があったのかは知らない。あっさりと・・・・実にあっさりと押し倒され、目を見
張っている間に攻略されてしまっていた。
(兄さんへの思慕が抑えきれなかったのかねぇ?)
兄さんに対して失礼じゃね?とは思う。元々面倒くさがりでもあったライルは、ティエリアから手を伸
ばされればその誘いに乗った。とはいうものの自分が何故受身にならねばならんのか、さっぱり分から
ず一回チェンジを申し上げてみたのだが、ティエリアの猛反発を受けて結局役割は変らなかった。
そんなティエリアの行方は、回復した刹那から聞いた。リボンズに撃たれたものの、その精神はヴェー
ダと融合して眠りについたのだと。いきなりイノベーター達のヴェーダのバックアップが途切れたのは
ティエリアのお陰らしい。そしてアリーのガンダムが動かなくなったのも。
「そっか・・・・・教官殿はもういないんだな・・・・」
自室でベットに腰掛け、ぽつんと呟く。自分の思いに浸っていて、端末の画面がいきなりオンになった
事にも気がつかなかった。
「まったく、どいつもこいつも。勝手に殺すな」
「ぎゃあ!」
いきなりティエリアの声が響いて、ライルは心底驚いて悲鳴を上げた。見ると画面に映っているティエ
リアが不機嫌極まりない顔で、こちらを睨んでいた。
「ティティティティ・・・・ティエリア」
「まったく貴方は仕方のない人だ」
心底呆れたように溜息をつく、ティエリア。ヴェーダと融合しても性格というものは変らないらしい。
「つかいきなり!驚くだろ!?普通は呼び出し音を鳴らすんじゃないのか!」
「面倒くさい」
「あああああああ・・・・・なんかシリアス気分が吹っ飛んだ」
怒りがふつふつと湧いてきて、ライルはぷいと画面から顔を背けた。
「貴方に僕の愛を届けに来た」
ぶはっと吹き出す。嫌な予感がして、ライルはギギギ・・・・と音をさせながらティエリアの方に向き
直った。
「・・・・・・・・・・愛?」
「そうだ。今、データを送るので確認しろ」
「へいへい」
「へい、ではなく、はい、だ。しかも一回」
「はーい」
「伸ばすな」
そんな不毛な会話をしながら、ライルは送られてきたデータを見つめ・・・・・絶句した。
「どうだ、僕の愛は」
えっへん、と言いた気にティエリアが訊いてくる。ライルの身体がぶるぶると震えだす。
「なんだこれ!なんつー凶悪なトレーニング表だよ!過労死させる気か!」
送られてきたのは『ライル・ディランディに送る愛のトレーニング表』だった。かなりヘビーな。
「こんなん、兄さんだってクリアできんぞ!?」
「確かに、死に掛けながらやってたな」
「・・・・・俺、その頃の兄さんと比べて五歳も歳喰ってんだけど」
「問題ない。大体貴方は僕が見てなければ、直にサボるからな。言っとくがそれは毎日のノルマだ」
「ええっ!?」
ライルは顔面蒼白となる。こんなトレーニング、ティエリアが健在だった頃にだって課せられた事は無
かった。今の状態では流石にパイロットだけの仕事をしていれば良いというわけでもない。リーダーと
して忙しく走り回っている刹那や、スメラギ等のフォローをしなければならず、これもまたなかなかの
重労働だった。正直、時間をさける自信が無い。そう訴えたのだが・・・・・・
「もしサボれば、お仕置きを敢行する」
鬼の教官殿は容赦が無かった。
「お仕置き?どうやって?」
そう訊くとガタン、と音がして壁からコードがにゅ、と出てきて揺れていた。丁度、蛇が鎌首もたげて
威嚇しているかのよう。
「・・・・・・・そういうプレイっすか」
たっぷり十秒は見つめて、ライルは呟いた。
「ああ。そういうプレイだ」
やっぱり鬼の教官殿は容赦が無かった。
「言っとくが、アダルト的にだからな」
そんな事、念押しされたくは無かった。
「じゃあ、また」
ティエリアは出てきたコードを元に戻し、あっさりと去って行った。後には硬直したライルだけが残さ
れた。
後日
「ライル・ディランディ!早速さぼったなーーーっ!」
「昨日は無理だって!2/3はやっただろ!?俺はただトレーニングやってりゃいい身分じゃないんだー
ーっ!」
「いいや・・・・一回サボれば癖になる!お仕置き、敢行する!!」
「みぎゃーーーーーーーー!!」
暗転
★・・・・・・痛そうだ(なにが?)というわけで珍しいティエライに挑戦してみました。ライルから
ちょっかいをかける事はないと思うので、心の整理がついたティエリアが手を出したという・・・。
あれですね、ライルがダメな子なので僕がしっかり世話をしなければ!というノリ。だからヴェーダ
と融合しても、ティエリアは心配で仕方が無い。トレーニングは彼なりのすんごい愛情なわけです。
因みにお仕置きの後は起き上がれません。人生って大変ですね(お前な・・・)
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