約束が違うっ!
19.煙草
「ライル・ディランディ。お前には禁煙をして欲しい」
やっとスメラギのお許しをもらって、何日振りかの煙草を堪能していた時に唐突に刹那から言われたの
が、全ての始まりだった。
「はあ?冗談。良いじゃねーか、滅多に吸わないんだし」
「そういう問題じゃない」
「あのなぁ刹那。自分が吸わないからって、俺に押し付けんなよ」
紫煙を燻らせ、ライルは溜息混じりに言った。これが毎日のように吸っていたりしたら、こう言われて
も仕方がないが、一週間に一度あるかないか(しかも遠慮して速攻吸っている)の嗜好である。
「ただとは言わない」
「ん〜〜?」
「お前に我慢を要求するんだ、俺も我慢する」
「なにを?」
少し興味が湧いて刹那にそう訊ねると、刹那はまっすぐにライルを見詰めあくまでも真顔で・・・そう
真顔で言い放った。
「今迄は、一週間に七日お前とアダルトな事をしているな」
「・・・・・まあ・・・そうだな」
一週間に七日、人はそれを普通「えぶりでー」と呼ぶ。
「それを一週間に六日に減らしてやる」
あんまり減っていないように思うが、ライルにとっては考えもしなかった事らしい。
「ほんとかっ!?」
思わず刹那がのけぞるくらいの勢いで、ライルは目を輝かせた。
「男に二言はない」
きっぱりと言い切る刹那は、無駄に男前だった。
「よし、禁煙する」
こっちの決意は早かった。流石に三十路に突入した身体では、二十を超えたばかりの刹那の体力に追い
つかない。ライル自身も逃げ回ったり、スメラギに恥を忍んで諌めてもらった事もあったが、なーんも
効果がなかった。それが自分が禁煙するだけで減るのである。ライルからしてみれば、願ったり叶った
りであった。
「・・・・・・騙された・・・・・・・」
ライルは肩で息をしながら、うつぶせになって枕を抱え込んだ。
「なにがだ?」
その背中には子亀よろしく、刹那が乗っかっている。当たり前だが、どっちも裸だ。
「禁煙に成功したというのに・・・」
「だからちゃんと週六日にしているだろう?」
思わず顔を上げ背中にへばりつく刹那に向いて、ライルは怒鳴った。
「一日の回数が、一回ずつ増えてるじゃねーか!全体的に回数増えてるっ!!」
確かに週六日にはなった。だが一日の回数が一回増えるという事は、単純に考えても全体的に六回増え
ているのである。確かにライルの言うとおり、えぶりでーの時よりも回数が確実に増えている。
「俺は週七日を六日にする、と言っただけだ」
しれっという刹那。確かに刹那は日は減らすとは言ったが、回数が増える・減るという事には言及しな
かった。つまり分かっていて、条件に出したわけだ。間違った意味での確信犯であった。ライルは表面
上の条件に心奪われて、詳細の確認をしなかったミスでもあるが納得できるものでもない。
「・・・・・・しかしさ、絶倫だよな、お前。体力的についていけねーよ」
男は刹那が初めてではあるが、女性相手でもこんな回数こなした事はないライルであった。今の刹那の
年の頃の自分を思い出しても、こんなにお盛んではなかった。
「お前が相手だからな。他の奴だったら、ここまでしたいとは思わない」
刹那は分かっているのかいないのか、こういう事を真顔で言い切れる御仁であった。思わずライルの頬
が赤くなる。流されるな、ライルー!という今は亡き兄の慟哭が聞こえたような気がした。むくり、と
刹那がライルの背中から離れる。ほっとしたのも束の間、いきなり仰向けにされてライルは目を白黒さ
せた。
「え・・・・刹那?」
刹那は天井を向いて、なにやら指を折り数えている。嫌な予感がした。
「さて、一日のノルマがあと一回あるからな」
そう言って、ライルに覆いかぶさる。ざーっとライルの顔から、血の気が如実に引いた。
「ま・・・待て、刹那!ノルマはこなさなくって結構です!」
「遠慮するな」
慌てふためくライルの姿に、刹那が微笑んだ。
「してねーっ!助けてぇー!」
「心配するな、速攻で終わらせてやる」
「え・・・・・・・速攻・・・て・・・・???」
更に嫌な予感が倍増。
「トランザムバースト!」
「トランザム、しかもバーストモードかよ!?ぎゃーーーーーーっ!!」
「というわけで、今日のノルマは終了だライル」
返事がない。さっぱりとした表情で刹那がライルを見やると、ライルは目を回して失神していた。無体
を強いた刹那ではあったが、ここまで豪快に目を回されるとちょっとだけ悪い気がした。あくまでちょ
っとだけ。
「仕方のない奴だな」
そう呟いて、刹那はライルの髪を撫でた。
★正しい意味の「確信犯」はそれが本当に良い事だと信じて犯罪等を犯す事です。昔あるサイトさんで
確信犯の意味を皆間違えて使ってるーっ!と嘆いているのをみまして「え、ホント?」と調べたら、
本当でした・・・。00で言えばトリニティ兄弟(特に長兄)かな。世界の為に良い事してる、と思
って大虐殺してましたよね。まあ・・・マイスター達も似たり寄ったりですが。
ライルさんはせっちゃんとの、アダルトーな事をするのは別に嫌ではありません。ただせっちゃんの
体力が凄まじい為に、自分の体力が持たないだけです(笑)
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