耳付き尻尾付き






 
23.耳

「俺、この年でこんな目に合わされるとは思いもし無かったよ、兄さん。人生って過酷だね」
「ライルは可愛いからまだ良いじゃんか!俺の方が似合わな過ぎて、土竜の穴にでも入り込みたいよ」
「同い年、同じ顔で可愛いの可愛くないの、おかしくね?」
虚ろな瞳で語り合うディランディ兄弟の頭には立派な獣耳が、後ろには尻尾が出現していた。これは未
知の生命体と会う時に相手にリラックスしてもらうために生やしてもらった、とはこの現象を生み出し
た頼もしいが遊び心がありすぎるスメラギ・李・ノリエガの有難いお言葉である。大体最初に接触した
相手が獣耳&尻尾装備だったら、他の地球人に対しても同じ装備が付いていると思われても不思議では
ない。それは地球の人々にしてみれば凄い迷惑な話ではないかと兄弟は思う。

ニールはコリーの様な耳と尻尾。
ライルはこれといって特徴の無い猫耳と猫尻尾。

どちらも髪の色とお揃いだった。
何故生やされた種族が違うのか分からないが、おそらくスメラギの意志なのだろう。真面目な意志では
なくて、その方が面白いという・・・・・。


「お前らなんかまだ良い方だろうが!ワシなど・・・・ワシなど・・・っ!」
背後から今回犠牲になった最高齢だろうと思われるイアン・ヴァスティの今にも死にそうな声がした。
確かにイアンは四捨五入すれば立派な60歳。流石に気の毒に思い振り返った兄弟の目に、白い兎耳と
丸い兎尻尾をくっつけて顔面蒼白になっているイアンが映った。瞬間
「「すいませんでしたぁーー!!」」
と兄弟は最上級の土下座をイアンに捧げたのであった。


「あら、こうしてみると壮観ねv」
上機嫌で笑うスメラギにも勿論、耳と尻尾が出現していた。
「因みに私は狐よ!」
何故か胸を張った。耳は犬っぽいが尻尾が成程、犬のそれよりも太くてふさふさしていた。人を化かす
事があるからかとトレミークルーは思ったが、賢明な彼らは沈黙を守った。
「私の独断と偏見とイメージで生やしてもらったんだけど、良い感じ」
その台詞にハーイ、と手を挙げたのはライルだった。
「じゃあ、おやっさんの兎オプションはアンタのイメージだったのか?」
肝心のイアンは部屋の隅っこで壁に向かい、辺りを暗黒にしながら体育座りを敢行していた。
「だってリンダとミレイナが兎オプションなんだもの、仲間はずれは可哀そうよ。家族なんだから」
「この場合は仲間はずれにした方が有難いんじゃ・・・・・」
後で知ったのだが兎オプションを付けられた時に、事もあろうにミレイナが
「パパ、バニーさんみたいですぅ」
と言ってしまい、イアンの父親としてのプライドを木端微塵にしたのだった。
「刹那は黒猫、アレルヤとマリーは犬の垂れ耳バージョン、ティエリアはペルシャ系猫」
「画像なのに律儀に生やしてんだな、ティエリア」
「当然です。イオリア計画の真髄ですから」
感心したように言うニールにティエリアは素直に応じる。元々ニール信者なので当たり前か。
「ラッセは犬に見えるけど実は狼。フェルトはイメージとしてはトイプードルね」
苦笑するラッセの黒髪からはみだした耳は銀色。フェルトは流石に髪と同じ色でくるくると飾り毛が可
愛らしい。
「じゃあ、なんで俺、犬?」
ニールが訊くとスメラギはふふふ、と笑った。
「いっつもライルvライルvって尻尾振ってるじゃない?猫じゃおかしいでしょ?」
「成程」
「いやそこ、感心するとこなのか兄さん」
「ライルはツンデレだから猫よ!」
「誰がツンデレだっ!」
思わず叫ぶが皆、何故か納得した表情をしていて、ライルは口籠った。が、突然
「痛てててて!」
と叫ぶ。
「どうした、ライル!」
「どうもこうもないよ!刹那!尻尾を捻り上げるのは止めてくれ!痛いって!」
見ればいつの間にかライルの横にぴったりと寄り添った刹那が。それだけならまだしも、大変な事は後
ろで起きていた。なんと刹那の黒くて長細い尻尾が、ライルの茶色く長細い尻尾に絡みついていたのだ。
ところが思ったよりも上手く絡まないのか、ぎりぎりとライルの尻尾を引っ張っているのである。これ
ではライルの尻尾の根っこが痛いのは当然だ。
「わーい!俺もライルの尻尾に絡ませよっとv」
ニールが嬉々としてにじり寄って来た。しかし

いぬのしっぽはからめられなかった!

痛い痛いと騒ぐライルから遠く離れた場所で、ニールは暗黒オーラを奏でながらイアンの隣に同じよう
に壁に体育座りをしたのだった。耳は可哀そうなぐらい垂らして。その姿をおろおろと見ているのはア
レルヤとマリーである。

結局、刹那とライルの後ろには絶妙に絡み合った黒と茶色の尻尾が完成した。これによりライルは刹那
の横から離れられなくなる。
(言いだしっぺだけど、大丈夫なのかしらこれ・・・・)
流石にスメラギも不安になる。しかし心身ともに丈夫になった彼女は思考を切り替えて、これで向こう
に腐女子がいれば大好評かも、と思う事にした。
「さ、行くわよ皆!」
スメラギの声が響き渡った。


劇場に続く?

★すみません、耳というより尻尾がテーマになりました。三十路過ぎどころか六十路でうさ耳生やして  落ち込むイアンさんが、実は今回の主役です。その姿に恐怖した敵が大騒ぎになって戦闘シーンにな  ったとかならなかったとか・・・ 戻る