なにしてんだよ






 
4.カタロン


マリナとサジを託すべくカタロン中東支部に向った刹那達。初顔合わせという事で、CBからは司令官
たるスメラギとリーダーである刹那が赴く事になった。サジは何故か不満そうではあったが、相手のク
ラウス・グラードは快く引き受けてくれた。そんな立ったままの会見が終わりに近づいた時、おもむろ
に刹那が口を開いた。
「この組織の名前はカタロンだな?」
「?ああその通りだ」
唐突なその質問に首を傾げたものの、別に間違ってもいないのでクラウスは肯定する。スメラギはいき
なり何を言い出すのかという表情で、刹那とクラウスを交互に見つめる。
「つまりアロウズに勝った時『アロウズに勝ったロン』と言いたいが為の名前なのか」
「は?」
これには流石のクラウスも目を丸くする。そんな冗談なノリで反政府組織の名前を付ける輩がドコにい
る!?しかし刹那は・・・・・あくまで真顔であった。
(ジーン1、何故君は此処にいないんだ)
CBにスパイとして潜入している友人に心の中で愚痴る。せめてこの場合の対処法を教えて欲しかった。
『CBって変な組織』
一番最初の暗号メールで寄越された本音が、正に正解だったというわけだ。

ゴン

鈍い音がして思考に沈んでいたクラウスは、意識を浮上させた。そして目に飛び込んできたのは、真ん
中に置いてある机に突っ伏している刹那の姿だった。よく見なくてもその後頭部に司令官と思わせる女
性が手を置いていた。この女性によって刹那は強かに机を自らの額で強打したらしい。流石に今度こそ
絶句して、アロウズの幹部メンバーが固まる。
「大変な粗相を致しまして、真に申し訳ありません」
そう言ってスメラギと名乗った彼女は深々と頭を下げた。しかし次の瞬間

メキッ・・・・・メリメリメリ

鈍い音がして、いきなり机が真っ二つに割れた。どんだけ石頭なんだ、マイスター。そのまま床に倒れ
込んだ刹那は、流石におお・・・とか呻きながら額を押さえて痙攣していた。その横でサジは『大丈夫
かい、刹那!』とオロオロしていた。姫様がこの場にいないだけ、まだ良かったかもしれない。スメラ
ギは顔色を悪くして「あの・・・・」とクラウスに呼びかけた。
「備品を壊してしまって、なんと謝罪すれば良いか・・・・」
「あー、なんというか・・・・すごい頭ですね」
と答えたクラウスは、完全に混乱していた。


「おー帰ってきたか・・・ってその額はどーしたんだ刹那!?」
気まずい雰囲気のまま終了した会見から格納庫に帰ってきた2人を、目敏く見つけたライルが声を掛け
る。が、刹那の額に出来たマンガとしか思えないたんこぶを発見したらしい。慌てて近寄ってくる。ラ
イルにしてみれば、何かカタロン側がやったのかと心配なのだ。後ろに一緒に待機していたアレルヤと
ティエリアも寄って来る。
「刹那が変な事言うもんだから・・・・・」
言葉を濁すスメラギを見て、マイスター達はこのたんこぶを作った張本人がスメラギなのだと悟る。
「一体、何があった?」
ティエリアの質問は当たり前だ。が、スメラギはもじもじして言いたくないらしい。刹那の方を見ても
刹那はその視線に気づかないのか何故か一心不乱にライルを見つめている。あまりに凝視されるので、
ライルが居心地が悪そうにしていた。
「ミス・スメラギ。カタロンがなんかしたのか?」
ライルは刹那の凝視に耐え切れなかったらしく、スメラギに話を振ってくる。しかしスメラギは黙って
首を横に振った。ふぅ、とライルから安堵の溜息が聞こえる。
「まあともかく、刹那もちょっとそのたんこぶをどうにかしないと」
アレルヤが珍しく絶妙なタイミングで、声を挟んできた。が、刹那はライルの前にずぃ、と進み出た。
「お前が舐めてくれれば、治る」
「人類の医療の発展と努力を全否定するような発言をかますな」
「大丈夫だ」
「なにが。嫌だぞ俺は」
「俺のたんこぶを治してくれ」
「医療カプセルの中で、無駄に深い眠りに陥っていろ」
そこまで言って、ライルは援護を要請すべく周りを見回すと・・・・・・・
「誰もいねぇ!?」
さっきまでは活気に溢れていた格納庫は、沈黙していた。ぐるりと見回すと少し離れた所に立っている
アリオスの足から、見慣れた面々がこっそりこちらを覗いていた。慌てて更に見回すと、カタロンの面
々もそれぞれ近くにあるMSの足からこちらを覗いていた。

どっと嫌な汗が出る。

「ライル」
死刑宣告のような声がかかる。視線を元に戻せば少し低いところから、ライルをじっと見上げている刹
那の目に合う。ライルは観念した。とりあえず治らんだろーけど、舐めてみっか。諦めと共にライルは
刹那の額に唇を寄せて、ぺろりと舐めた。
周囲から「おお〜」という野太い感嘆の声が上げられた。ライルはさっさと刹那から離れようとしたの
だが、此処で捕まえてしまうのが刹ライの刹那である。
「刹那・・・・?って・・・っ!!」
ぶっちゅう〜とかまされた。再び「おお〜」というさっきよりも大きい感嘆の声が上がる。若干引き気
味ではあったが。ライルがばたばたと暴れるので刹那はがっしとライルの頭を掴みなおして、その抵抗
を封じる。
「ぷはっ、何すんだ、刹那ぁ!!」
顔を真っ赤にして、ライルが叫んだ。
「自己主張はキチンとしておかないとな」
やっぱり刹那は真顔だった。
「お前は俺の嫁なんだという、自己主張を」
真顔で爆弾を落とす、マイスターのリーダー様は偉大だった。カミングアウトも平気。ライルは口をぱ
くぱくさせるだけで、罵声も出ない状況であるらしかった。


『ジーン1、君がホモでも、私は君の友人だからな』
後日、格納庫の事件を知ったクラウスからの妙に温かいメールを見て、ライルは泣きたくなったのだっ
た。


★というわけで、刹ライはカタロンでも公認になりました(笑)沙慈がそれを知って「こんなホモっぽ  い組織にいられるか!僕は国に帰らせてもらう!」と出奔。しかし私の世界では沙慈は誰の毒牙にも  かかりません。自分からもかけません。沙慈vルイスだから。しかし普通の生活を知っているライル  とちょっと意気投合して学生時代の話題で盛り上がれば良い。せっちゃんはそこの話題には入れない  からジェラシー。ライルに向かって八つ当たりをします(アダルト的な意味で)沙慈はせっちゃんに  とっても毒牙にかけてはいけない人なのです。 戻る